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2018/09/08~2018/12/18のつぶやき

2018/12/24

学習の転移(2018/12/23参照)その1 とりあえず算数の問題ができるようになる方法 その1 

 

「一番単純な問題と一番複雑な問題を解く」

 

 

Reed & Bolstad(1991)は、「仕事算」(どのテキストにも載っています)の最も単純な問題と、最も複雑な問題(※1)を学習した後では、すべての仕事算ができるようになる(転移が起こる)ことを実験で示しました。

 

これは、どの仕事算にも、上記2種類のどれかの式が含まれているので、その式を利用すればよいからです。※2 

 

参考書や学習塾のテキストには例題から発展問題まで載っているので、原則的にこの考え方が利用できます。※3 

 

※1 ゼロから2人が同時に仕事を始めるのが「最も単純な問題」で、仕事の一部が完成しているところから、1人が仕事を始め、もう1人が遅れて仕事を始めるのが「最も複雑な問題」です。

※2 例えば、「仕事の一部が完成しているところから、2人が同時に仕事を始める」問題なら、仕事の一部が完成しているところについては、最も複雑な問題の解き方を使い、2人が同時に仕事を始めるところは、最も単純な問題の解き方を使えば良いということです。

※3 テキストの作成者が、Reed & Bolstad(1991)のような分析をしているかどうかは別問題です(入試問題を切り貼りしているだけのテキストもあります)。

2018/12/17

 

難しい漢字・パズル対策

 

「『人間字』を使った『一般語』を覚える」

 

「動員・育児・国家・配役・接客・電子」などは思いつきにくいことがわかっています。意味が人間を表していない(一般語な)のに、人間を表す字(人間字)が一字使われているからです(水野,松田,2018)※。

 

難しい漢字を出す学校や、漢字しりとりなどのパズルを出す学校(灘中、洛南中など)では、このような熟語(人間字を一字使った一般語)をリストアップして覚えておくと有利になります。

 

研究の材料にされた他の熟語としては、

 

①「人間字」を一字使った「人間語」(先生・市長・本屋など)

②「一般字」だけを使った「人間語」(横綱・強盗など)

③「一般字」だけを使った「一般語」(温室・火災など)

 

以上ですが、同程度に易しいことが分かっています。

 

※人間字、一般字、人間語、一般語は、上記研究者の造語です。

2018/12/11

 

保護者が読解を教える時その8

 

「正解した問題について質問してあげる」

 

「どうしてこの答えにしたの?」と聞いてあげましょう。間違った問題について、「どうして?」と聞かれるのはいやなものですが、正解した問題なら喜んで答えてくれます。これは、子どもから自分の思考過程について話してくれるようにするための基本的なテクニックです。子どもが話してくれるようになったら、間違えた問題について質問していけばよいのです。

 

 

 

また、たった一問からでも、子どもの思考過程がわかれば教えることができます。

 

 

 

例えば、傍線の「前にこう書いてあるから」と答えたとします。(それで充分正解を出せる場合も多いですが、)その時には後ろも読んだかを聞いてみます。もし読んでいなかったら、今後、前だけ読んで早とちりの誤答を出す可能性があります。

 

 

 

こんな時には、「傍線の前と後ろをしっかり読む」という公式を教えてあげることができます。

 

前だけ読んで、後ろを読まないと不正解になる問題を出してあげると、ベストです。

 

22018/12/10

 

塾に入る前にやっておくこと

 

「読むこと」

 

 

塾では読むことより解くことを教えるので、文章が解答を見つけるための場所になってしまいます。

 

そうすると全体が読めなくなり、面白さもわからなくなります。

 

 

 

国語が苦手という子どもにそういう生徒が多いですね。

 

 

 

文章とはまず読んで楽しむもの、筆者の意見を聞くものです。

 

 

 

読み聞かせ、読書の習慣をつけておいてあげましょう。これは将来のためにもなることです。

 

2018/12/09

 

受験生がこの時期にやっておくべきこと

 

「リハーサル」

 

入試問題演習を10回、100回行っておいて、当日にかなりの確率でおこる事態に対処するリハーサルを一度も行わないのは考えてみれば不思議です。

 

その事態とは、一科目目が難しいときです。毎年同じ程度の難易度にならないことは過去のデータを見れば明らかです。去年より難しくなることは普通にあります。難しいと感じるとあせりにつながり、その科目だけでなく後の科目にも影響します。そういうときの気持ちの持ち方は昨日述べておきました。

 

とはいえ、いくら気持ちの持ち方を言い聞かせても、その事態になれば、子どものことなのでどうしてもあせってしまいます。そこで、そういう事態を一度経験しておく(リハーサルをしておく)方がよいでしょう。

 

一科目目を故意に手を抜いて、あせりを感じながら模試を受けることが一番いいですが、なかなかそうもいかないでしょう。半日の時間を取って、志望校の科目順で、一科目は大問一つか二つを故意に解かないようにして、テストを最後まで行います。志望校の問題でなくても構いません。

2018/12/08

 

入試当日の気持ちの持ち方

 

「最初の科目が重要」

 

 

他の多くの受験生を目にするとどうしてもナーバスになります。ただ、だれにもでもある心理(Garcia, Tor,2009)だと知っておくことが大切で、自分だけ緊張するとおもわないことです。

 

 

 

最初の科目が難しかった時が最も重要です。自分だけができなかったと思い込むと焦りが生じます。合格するレベルに達したから受験しているのだから、自分が難しいと感じた時は問題が難しいのです。「平均点が下がる」と考えて、その中でベストを尽くすようにするべきです。

 

2018/12/07

 

そもそも教師が生徒に読解力を付けられるのか?

 

「新しい発想で」

 

NRP(National Reading Panel,U.S.読解力を科学的に分析する調査)は「教師が生徒に読解力を付けられるのか?」というテーマに一章を割いています。結論は、「信頼に値する研究が少なすぎて不明」です。 もちろん様々な研究を分析していますので読み応えはありますが(NRP5-1)。

 

 教師に教わらなくても読解力がある子どもがいるし、いくら教わっても読解力がつかない子どももいるという現実を見ると、 上記はもっともなテーマです。この問いに「イエス」と答えるためには、少なくとも「いくら教わっても読解力がつかない子ども」に読解力をつける方法論がなければなりません。

 

 私自身は認知カウンセリング※に基づいた手法を使用しています。今までは、教師が一方的に何かを教え、生徒がそれを受動的に吸収するものとされてきました。しかし、読解力が未熟ということは、そもそも吸収の仕方が未熟ということです(読解では文字から情報を吸収するが、講義では音声から情報を吸収するかの違いがあるだけです)。だから、いくら教師が教えても、充分に吸収できないということがごく普通にあり得ます。むしろ吸収の仕方を導く方に視点をあてるという考え方に基づいています。

 

※認知カウンセリングとは、認知心理学者の市川伸一氏が研究の一環として実践している方法です。NRPは、認知カウンセリングに対する分析は行っておりません。

2018/12/06

 

自制心が強いタイプの感じ方

 

「誘惑に対して違う見方をする」

 

最も成績に影響する自制心(2018/12/0 参照)ですが、自制心の強いタイプは、誘惑に対してどのような感じ方をしているかを調べた研究があります。

4歳の子ども達一人一人の前に一個の菓子を置き、「お菓子を食べてもいいが、長い間我慢するともう一個もらえる」と言います。我慢した時間を自制心の強さと見ます。

 

その後の調査により、我慢できずに食べてしまった子は、菓子の甘さやおいしさのことを考えており、我慢強かった子ほど、菓子の色や形に注目していたことがわかりました。

 

菓子本来の性質(甘さ、おいしさ)でなく二次的な性質(色、形)に注目する方が我慢できるという仮説に基づき、

 

新たに実験を行い、A(何も指示しない)グループ、B(菓子本来の特徴に注目するように指示した)グループ、C(菓子の二次的な特徴に注目するように指示した)グループに分けて、自制心テストをすると、Cの成績が断然良く、A、Bはほとんど変わらず、Aの結果が一番悪かったという結果が出ています(Mischel,Shoda & Rodrigues,1989)。

 

昨日(2018/12/05)の結果と合わせて、自制心を鍛える上での参考になります。

2018/12/05

 

自制心は鍛えられる

 

「例:食事のメニューをつける」

 

最も成績に影響する自制心(2018/12/04参照)は鍛えることができるという実験があります(Muraven,Baumeister & Tice、1999)。

 

この研究では、「姿勢をよくする」「明るい気持ちを持つようにする」「食事の詳しい日記をつける」という三つの訓練を行い、どの訓練でも自制心が強まるという結果がでました。効果の順番は「食事の詳しい日記をつける」が一番で、それに近い効果が「姿勢をよくする」、最も弱い効果が「明るい気持ちを持つようにする」でした。

 

この実験以外にも自制心の訓練はいくつも考えられます。重要なのは、自制心は後天的に鍛えられるということで、それを鍛えることによって成績が上がるということです。

2018/12/04

 

成績に一番影響するのは?

 

「自制心」

 

一番影響するのは「IQ(知能指数)」のような気がしますが、実は「自制心」です。

 

研究(Duchworth & Seligman,2005)によると、定期テストの平均や進学する高校のレベルに最も影響したのは「自制心」で「IQ」の2倍以上(相関係数)です。「IQ」の影響が大きいのは実力テストですが、それも「自制心」の影響の方が上でした。

また、同じ調査や関連した調査で、4歳のときに「自制心」が高かった子どもの方が、大学入学試験の成績よかったこと、40歳で脳活動を測定したときにも前頭葉(感情や意思を制御する、脳の一部)の働きがよかったこともわかっています。

 

「自制心」の影響は大きいことがわかります。では、「自制心」を高めるには?

2018/12/03

 

思い込みの重要さ

 

「良い思い込みが成績を上げる」

 

 

「女子は数学が苦手」とよく言われますが、実際にはそうでないことが調査でわかっています。

 

しかし、そのような社会的な鋳型(ステレオタイプ)が吹聴されると、女子は本当に数学が苦手になってしまいます。

 

逆に、いい思い込みはいい方向に作用します。

 

 

 

アメリカでも「女子は数学が苦手」という社会的な鋳型があります。また、「アジア系は数学が得意」という社会的な鋳型もあり、世間ではそのように思い込んでいます。もちろん実際はそうではありませんが。

 

 

 

ハーバード大学のアジア系女子学生を三つのグループに分け、数学のテストをしました。テストの前に質問をします。Aグループには、人種に関する質問(何世代前からアメリカに住んでいますか、など)、Bグループには特に関係のない質問(ケーブルテレビに申し込みたいですか、など)、Cグループには性別に関する質問(大学の寮は男女別々がいいと思いますか、など)をします。

 

 

 

ハーバードに合格するぐらいですから皆優秀なはずですが、テスト結果は、Cグループが最低で、Aグループが最高(Cの5倍の正答率)、Bグループがその中間でした。

 

 

 

Aグループは、「アジア系は数学が得意」という思い込みを刺激されたため成績が良く、Cグループは「女性は数学が苦手」という思い込みを刺激されたため成績が悪かったと考えられます(Shih,Pittinsky & Ambady, 1999)。思い込みの効果は5歳から確認されています(Ambady,Shih,Kim & Pittinsky,2001)。

 

 

 

子どもに接するときにはよい思い込みを持たせたいものです。これは「ほめ育て」と深く関連しています。

 

2018/12/02

 

テストのプレッシャーに勝つ方法 その2

 

それでも緊張するが…

 

「それでよい」

 

2018/12/01のように、不安を取り除くには書き出すのがいいですが、それでも緊張はします。ただ、適度の緊張はむしろ良い結果につながることもわかっています。Elzinga & Roelofs,2005の実験では、何もしないときよりも、緊張課題(人前での簡単なスピーチや暗算)を行った後の方が、ワーキングメモリ(数秒の間記憶を保持する能力。2018/08/07,2018/12/01参照)がほぼ2倍の働きをすることが示されています。また、別の研究でも緊張課題(3分間冷たい水に手をつける)の後の方が成績がよいことが示されています。適度の緊張は体を臨戦態勢にするのです。

 

もちろん、頭が真っ白になるほどの緊張は成績を下げるので、まずは「書き出す」ことによって、不安やプレッシャーを和らげ、適度な緊張があれば、これでよし、と試験に臨むのがいいでしょう。

2018/12/01

 

テストのプレッシャーに勝つ方法 その1

 

「不安を書き出す」

 

 

プレッシャーで点数が悪くなるのは、緊張や不安からワーキングメモリ(数秒の間記憶を保持する能力。2018/08/07参照)の働きが悪くなるからで、ワーキングメモリ能力が高い人ほど点数が悪くなることがわかっています(Beilock & Carr,2005)。

 

 

 

ワーキングメモリから緊張や不安を解き放つためには、テストを受けるに当たって感じている不安を書き出すとよいという研究があります(Ramirez & Beilock,2011)。

 

 

 

プレッシャーのないときにテストをして、同等の実力である生徒達を選びます。次にその生徒達にプレッシャーを与えます(「できたらすばらしい景品がもらえるが、できなかったら、自分もペアを組んだ相手ももらえない」、「テストは先生が見張っている」など)。

 

 

 

その生徒達を三つのグループに分け、①「何もしない」、②「テスト直前の10分間で、テストに関係のない日常生活のことを書き出す」、③「テスト直前の10分間で、テストに関する不安を書き出す」の三つのグループに分けて、テストを受けてもらいました。

 

 

 

①と②のグループだけ、成績が下がったのです。

 

 

 

このことから、「書き出す」しかも、ただ書き出すのでなく、「テストに関する不安を書き出す」ことがプレッシャーを軽減することがわかります。書き出すことによって、主観的であった不安な気持ちが、人の話を聞くような客観的なものに作り替えられ、ワーキングメモリの負担を軽減するからだろうと考えられています。

 

 

 

ストレス解消法にもなります。

 

2018/11/29

 

系列位置効果

 

「苦手なものは初めか後に」

 

沢山の事柄を覚えようとするとき、初めと終わりが覚えやすく、真ん中ほど忘れやすいという効果です(Maylor,2002)。

 

50の漢字なりことばなりを覚えるとしたら、カードにしておけば、なかなか覚えられないものを最初か最後に持ってくることで覚えるのが楽になります。小ワザですが、どの科目にも応用できます。

 

また、一日の勉強スケジュール内で、苦手科目を初めか終わりかするという利用のしかたもあります。

 

すべての科目や項目を漏らさず頭に入れたい場合は、毎回やる順番を変えることによって、記憶のムラをなくすという利用の仕方もありますね。

2018年11月28日

 

テスト効果 その2

 

「関係のないテストをはさむだけで成績が上がる」

 

これは国語に限りません。例えば算数で、あることを習って数日後にテストをするとします。その間に全く関係のない社会のテストをはさむだけで、数日後の算数のテストの成績がほぼ二倍になります(Wissman et al,2011)。

 

理由はまだわかっていません。間にテストをはさむことにより脳の中で習ったことを思い出す仕組みが強化されるのではないかと言われています。

 

大手の塾では一週間の中にいろんな科目のテストがあります。この点では大手塾有利と言えそうですね。

2018/11/27

 

やったことをその日のうちに復習するのは正しいか? 

 

「受験勉強では間違い」

 

例えば塾で居残って今日やったところの宿題や復習をすることを、専門用語で「集中学習」と言います。「集中学習」の効果があるのは、一週間後までで、二週間後には効果が半減、三週間後にはまったく復習をしない生徒と同じ成績になります(Rohrer et al,2005)。

 

だから、小テストのように、一週間以内に習った範囲のテストがあるものは、習った後すぐ「集中学習」するといいでしょう。

 

受験勉強のように、数ヶ月、数年後にテストがあるものは、少し間を空けてから復習する方が記憶に残ります。35日後にテストがある場合は学習した後の10日後に復習すると一番成績がよくなり、その日に復習すると一番成績が悪いという研究があります(Cepeda et al,2008)。

 

従って、受験勉強では復習をする計画の立て方がとても大切になります。

2018/11/26

 

今の教え方は50年以上前のもの!?

 

「ほんとうにこれでよいか、子どもと向き合って考えよう」

 

兎跳びで足腰を鍛えるとか、運動中は水を飲んではいけないなどと昔は言われていました。今ではそうでないことがわかっています。

 

最先端の知見が一般に広まるには何十年とかかるのが原則です(インターネットの普及で今はもう少し短くなっています)。ある知見が専門家の間に広まるのに5年、知識人に広まるのに10~15年、一般に広まるのに20年と言ったところでしょうか。

 

教育で言えば、20世紀前半までは行動主義心理学が優勢であったので、その後数十年、今でも、その影響を強く受けた教え方が残っています。

 

パブロフのイヌをご存じかも知れません。ベルを鳴らすたびに餌をやっているうちに、ベルの音が聞こえただけでよだれが出てくるという実験です。教育もこの影響を強く受けて、「何度もくり返し、できたら褒美を、失敗したら罰を」という考え方が出て来ました。

 

この考え方は極端に推し進めていくと体罰にもつながります。今でも体罰を肯定する人が少なからずいることからも、この考え方の影響の大きさがわかります。「何回も書くことによって覚えよ」という考え方もこの影響です。

 

今は、20世紀後半から研究が盛んになった認知心理学によって、暗記に関しては、反復よりも「処理水準(2018/11/20参照)」の深さが重要であることがわかっています。しかし、教育現場にはまだ充分に広まっているとは言えません。

 

余談ですが、教材でも、「日本では蝶と蛾を区別するが、フランスではどちらもパピヨンと呼ぶ」とか、「日本では虹は七色だが、ヨーロッパでは五色」などと言う話題が扱われていますが、これはソシュールという人の言語学で、100年前のものです。

 

子どもが行き詰まるときは、その子だけに原因があるのでなく、教え方に原因がある場合もあります。子どもの声をよく聞いて、子どもにとって最もよい方法を一緒に考えて上げるのがよいと思います。

2018/11/25

 

子どものここを見て成績アップ その1―4

 

「結果主義に陥っていないか」

 

  無料カウンセリングを行っていますが、その時に私が質問などをしながら気をつけているところを、例を挙げながら書きます。

 

 

次のような質問にあてはまる度合いが高いなら、「結果主義」に陥っている可能性があります。

            

            ○ 少しでも正解と違っていれば、まったくの間違いだと思う。

            ○ テストでは、途中の考え方よりも、答があっていたかが気になる。

            ○ なぜそうなるのかわからなくても、答があっているいいと思う。

            ○ クイズを出されたとき、自分で考えるより、はやく答えを言ってほ

      しくなる。

                (堀野,1993より抜粋)

            

結果を気にしすぎると、たまたまよかった時は安心して振り返りをしませんし、悪かった時にも「自分は駄目だ」と思い込み、努力しなくなる場合があります。

            

受験勉強は結果を求められますが、入試で結果を出せばいいのであって、それまでは解き方や考え方を育てることが重要です。「結果主義」の個人差は非常に大きいとされており(市川,1993)、それが学習結果に大きな影響を与えます。子どもや保護者自身が「結果主義」に陥っていないか振り返ることが大切です。

2018/11/22

 

国語に限らず、保護者が家で教える時

 

「問題の意味を、『年下の子に教えてあげるつもりで』説明させる」

 

どの科目であれ、成績が上がらないと心配される生徒で、私が最も多く目にするのは、「問題の意味がわかっていない」ケースです。保護者は、問題の意味などわかっているだろうと思いがちですが、案外そうでもありません。

 

問題の意味がわかっているかを確認する方法(※)としては、市川,2010が、「仮想的教示」として、生徒に「先生が説明するように」問題の意味を説明させるという方略を提案しています(2018/10/03参照)。

 

ただ、「先生が説明するように」と言われると、「先生のように」という言葉にプレッシャーを感じて説明しにくい生徒もいます。また、先生だから、難しい言葉を使わなくてはならないと思い、問題文の言葉(つまり、本人が感じている難しい言葉)をそのまま、少し並べ替えて「説明」だという生徒もでてきます。

 

そこで、「年下の子に(弟妹がいたら、その弟妹に)説明してあげるように、説明してくれるかな?」と言う方がよい時があります。年下に説明するためには、難しい言葉を易しい言葉に言い換えたり、易しい構造の文に言い換えたり、長い一文を短い二文(以上)に言い換えたりしなければなりません。それは、「問題の意味がわかっていて」初めてできることです。

 

一度お試し下さい。

 

※市川は、「仮想的教示」の意味として、上記に述べたことよりも、むしろ「メタ認知(自分で自分を振り返ること、自分を客観的に見ることなど)」を育てるための方略として提案しています。

2018/11/21

 

家庭教師奮戦記 その1 

 

「計算が苦手な子」

 

学生の頃から現在まで家庭教師もやっていますが、その中で参考になるかもしれない経験を書きます(採りあげるのはすべて10年以上前のものです)。最後に今の私から見て、付け加えることを書きます。

 

進学塾に通わせているのだが、なかなか算数が伸びない。計算問題を沢山間違っているし、応用問題でも計算間違いがある。応用問題は出来るものも出来ないものもある。まずは計算の間違いがないように教えてほしいと保護者からは言われた。

 

間違った計算問題を見せてもらった。

 

12×24+18×24=

 

例えばこういう問題を、12×24=288と計算し、次に18×24を計算する途中で間違えている。

(12+18)×24と、結合法則を使った方が間違いもなく速いはずだ。

 

私「(12+18)×24とできることは、習ってないの?」

子「習った。」

私「そうした方が速いよ。やってごらん。」と計算してもらい、実際に速いことをわかってもらった上で、

私「どうしてこうしなかったのかな?」

子「・・・?」

私「今度からは、何か工夫ができないかを考えてからやってみようか。」

 

今の私から見て。

 

1 実際に計算して速いことをわかってもらったのは良い方法だった。

 

できれば両方の方法を時間を計ってやった方が良かったかも知れない。こうしなさいと言うだけでは子どもは実行しない。実際に計算して比べて見れば、速いことがわかるから、次からの工夫につながる

 

 教師は、「こうしなさい」と言えば、子どもは実行すると思い込んでいる。その思い込みの底には、子どもは「教え導くもの」という「上位意識」が潜んでいる。しかし、子どもも一人の人格なのである。一人の人格にやり方を変えてもらうためには納得してもらわなければならない。

 

2「今度からは~考えてからやってみようか。」で終わったところは、もっと工夫ができた。

 

もう一度、最初にどうして間違ったのかを聞き、次にどうすればできたかを聞くようにした後、「始めに工夫を考えた方ができる」ということを子どもにわかってもらう「教訓的帰納(市川,1933)」をすればよかった。

 

3 子どもが「・・・?」となっているところは、自分で自分のやり方をチェックできない、つまりメタ認知がまだ充分に発達していないというところだから、メタ認知を伸ばす方略を考えるべきだった。

2018/11/20

 

保護者が読解を教える時その7

 

こんな時に怒ってはいけないその3

 

「教えたことをすぐに忘れてしまう時」その2

 

また、覚え方の問題もあります。

 

覚えるためには、何度もやってできたらほめる、あるいは、できなかったらしかる(反復と賞罰)によって記憶を定着させるというやり方を採るケースが多いですが、これは二十世紀前半に優勢であったの行動主義心理学の影響を強く受けています。

 

現代の心理学(認知心理学)では、「処理水準」が重要とされています。「処理水準」とは、覚えようとするときのやり方の深さです(Craik & Lockhart,1972)。「見た目(文字の形や色)」→「音(読み方)」→「意味(内容の理解、連想など)」の順に「処理水準」が深くなります。

 

例えば、覚えようとして同じ深さの処理をくり返すだけ(何回も書くとか何回も読む、など)では記憶は向上しません。逆に、特に覚えようとしなくても、深い処理(「意味」)が必要な課題を出された時には自然に覚えていることが、多くの実験によって示されています。

 

覚えることを習ったことと関連づけたり、イメージ化したりすると覚えやすいことも、「処理水準」の深さに関係しています。

 

しかし、こうした研究家結果はほとんど教育現場には浸透していません。だから、いくらやっても「すぐに忘れてしまう」ということが多いのです。

2018/11/19

 

子どものここを見て成績アップ その1―3

 

「たくさんやればよいと考えていないか?」

 

無料カウンセリングを行っていますが、その時に私が質問などをしながら気をつけているところを、例を挙げながら書きます。

 

1 学力の達成度(当たり前ですが、どれぐらいの学力があるのかを見ます。一般の入塾テストをみたいなものですが、入室を希望される方を学力の達成度でお断りしないところが相違点です)

 

2 勉強に対する考え方

 

勉強をどのように考えているかは重要な要素です。例えば、「勉強とは、何回もやる(反復する)ことによって、習熟するものだ」という考え方にとらわれている場合があります。

 

どちらかというと、まじめに努力する子どもに多いかも知れません。漢字なら、手で何回も書きながら覚えるだけだったりします。算数なら、問題を沢山と居ているけれど、やりっぱなしになっている場合もそうです。

 

量を無視することはできないけれど、やはり、効果的な勉強法とそうでない勉強法とがあります。例えば上記のような漢字の覚え方をしていると、意味も覚えないし、その漢字を使った別の熟語も知らないから応用が聞かず、結局は損です。学校や塾でたくさんの漢字の宿題が出されるとこのケースに陥りがちです。このケースでは、効率的な暗記の仕方を教え、子どもに合いそうなやり方を奨めるようにしています。

 

効率的な暗記の仕方については、今まで断片的にも書いてきましたが、明日に視点を少し変えてまとめる予定です。

2018/11/18

 

こどもの戦略に乗らない

 

「じゃ、引くの?」

 

どの科目でも言えることですが、

算数を例にとれば、□×1/3=2(「四角×3分の1 イコール 2」という式)という問題を保護者が教えるとします。

 

保護者:「□という数があるけど、その3分の1しか、今はわかってないの。ここでは、□という数一つ分が、いくつになるか知りたいんだよね。どうしたらいい?」

子ども:「3分の2を足せばいい。」

保護者:「足す? かけ算の式で足したりしないでしょ。」

子ども:「じゃ、引くの?」

保護者:「だからあ~、かけ算の式で足したり引いたり普通はしないでしょぉ!」

子ども:「じゃ、かけるのぉ?」

保護者:「そうよ。」

 

子どもの最初のセリフ(「3分の2を足せばいい」)は、子どもなりに考えており、理解できなくもない発言です。しかし、保護者がその考えを正面から受けとめなかったので、子どもは戦略を変えます。

 

2番目以降のセリフがそれで、「答え出し屋方略」※と言われます。保護者はこの方略に乗ってしまい、子どもは自分で考えることなく、答えを保護者から引き出しています。

 

「答出し屋方略」は、時間が限られている中でたくさんの問題を解かなければならない状況(学校や塾など)で、子どもが自然と学習した(子どもにとっては)合理的な適応反応((Holt,1964)です。

 

「引いた方がいいのかなあ」とか、国語なら、「前の方からさがそうかなあ」とひとりごとのようにつぶやくという「洗練された」答え出し屋方略を使う子もいます。思わず「そうだよ」とか「そうかなあ?」と言ってしまう人は、子どもの戦略に引っかかっています。

 

どう対応すればいいかは、子どもによって違うので一概には言えませんが、少なくともこの方略を自然と身に付けている子どもが多いと言うことはわかっておいて、その方略を子どもが使った時には、一旦仕切り直して自分で考えるように水を向ける必要があります。

 

※答出し屋方略…学校の授業中に、先生に上記のような質問をしきりにする生徒が複数おり、Holtは「答出し屋」と呼んでいる。他の生徒もその答出し屋方略に乗り、自分で考えなくなるという。

2018/11/17

 

保護者が読解を教える時 その7

 

こんな時に怒ってはいけない その2

 

「教えたことをすぐに忘れてしまう時」その1

 

「この前教えたばかりでしょ!」などと怒ってしまうと、子どもは「自分には能力がない」と思ってしまいます。さらに、「能力がないからわからない」「わからないから勉強しない」「勉強しないからますますわからない」という悪循環(市川,1933)に陥る可能性が高くなります。

 

すぐにわすれてしまうのは理解が十分でないからです。似たような問題を宿題として出すだけでは十分ではありません。教えたことを忘れていると、宿題ができないか、あいまいなやり方で解いてしまうからです。

 

こういうケースはは、教えた後などに、どの程度理解しているかをチェックする質問をするようにするとよいでしょう。その質問に答えられなければ、もう一度、やり方を変えたり、子どもと話し合ったりしながら教えて上げるのです。

2018/11/16

 

「次はもっといい点をとろう」と言った時の、二つの落とし穴。

 

1 これは、国語だけの話ですが、問題ができるかどうかは、その時の文章によって左右されます。親しみのある文章ならよくできるし、そうでない文章なら逆の結果になります(スキーマ Bartllett 1932、2018/07/30参照)。それは子どものせいではありません。

 

2 これはすべての科目に言えることですが、良い成績を取って他者(そう言った教師や保護者)に評価されることを、動機付けにしている可能性が高い発言です。この動機付けだと、失敗したときに自分の能力の低さにして、この後自分を守るために努力しなくなります(2018/06/14参照)。また、1に挙げた理由でたまたま結果がよかった場合でも、それに満足して子ども自身が自分を振り返ることが少なくなり(メタ認知,2018/08/05参照)、子どもも大人も問題を先送りしがちです。

 

「点数」は目に見えやすいので、つい目標にしがちですが、「どれだけ成長したか」を目標にしたいものです。そのためには目に見えにくい子どもの成長を見ていく覚悟が大人にも必要とされます。「もっといい点をとること」と、「もっとわかるようになること」は、似ているようで大きく異なります。

 

それでも、国語の成長度合いをテストで見たいときは、一回一回のテストを見るのでなく(それだと主に1の理由で上がったり下がったりするので、本人も周囲も一喜一憂するだけです)、長い期間(半年から1年)の間で一回一回の振れ幅の違いを見るのがよいでしょう。例えば、春から夏の成績は、偏差値 48, 52, 47, 50だったのが、秋から冬にかけては、55, 53, 50, 54 であれば、成長したと言っていい場合が多いと思います。

2018/11/15

 

保護者が読解を教える時 その6

 

 「声に出して考えさせる」

 

小学2年生の生徒に、難しめの文章を読ませ、途中で止めて(計4回)、その時考えていることや、その時使っている方略を説明させるという方法で、一年後に著しく読解テストの成績が上がったという報告があります(Brown, Pressley, et al. 1996)。

 

「その時使っている方略を説明させる」というのは、例えば、「それ」の含まれる文を読んだところで止めて、「『それ』の指しているものは、前の方にある」ということを説明させたり、(日本語なら)習った漢字の意味から熟語の意味を類推させたりすることでしょう。

 

確かに、私自身も、自分にとって難しい文章(例えば英語)を読んでいるとき、調子がいいときにふと気がつくと、声に出していることに気づくことがあります。

 

特に低学年で、難しく感じる文章に対しては試してみる価値があります。これはモニタリングの効果(2018/10/11参照)とも関連しています。

2018/11/14

 

塾講師を辞めて個別指導を始めた理由 その1

 

「創意工夫の必要性」

 

以前大手塾で働いていました(アクセス・地図・教師紹介のページ参照)。その大手塾では、常時カメラで授業を観察されます。授業後に「あれは講義ではない」と言われた時が一番ショックでした。やり方を教えるだけでは身につかないので実際に問題をやらせて見て回った(十二人程度の上級特別講義)ことを指摘されたのです。

 

教室長(講師でなく、教室全体の運営者)は、「上級特別講義(仮名)」と銘打っているのだから、問題を解かせるのでなく、必要な事を「講義」しなくてはいけない、私のやっているのは「演習」なのだとのことでした。

 

私は「講義」「演習」の区別よりも「力をつけること」の方が重要だと考えていたので、その旨は一応伝えましたが、組織である以上、その区別が大切なことも理解しました。しかし、このことが個別指導をやろうと考え始めたきっかけになりました。

もっと教え方がうまくなるためには創意工夫ができる環境が必要だと考えたのです。

 

Sternberg,2005は、知恵、知能、創造性が統合して、才能あるリーダーの不可欠な要素となると言っています(松村,2013)。講師や教師にリーダー的要素が含まれる以上、創造性(創意工夫)は良い教え方の鍵になるのです。 更に言えば、創造性は子ども自身の賢さにとって必要なことでもあります。その意味で、生徒に合わせて創意工夫しながら個別に指導することは自分にとって必然的な事なのだと、(後からですが)考えるようになりました。

2018/11/13

 

子どものここを見て成績アップ その1―2

 

「宿題を手早く済ませていないか」

 

            無料カウンセリングを行っていますが、その時に私が質問などをしながら気をつけているところを、例を挙げながら書きます。

 

2 勉強に対する考え方

 

勉強をどのように考えているかは重要な要素で、「宿題のやり方」からもそれがわかります。例えば、漢字の宿題を、とにかく何回か書くことのみを目的として「手早く済ませ」、覚えることを目的としていないようなら、勉強を「与えられたからやるもの」「こなさなければならないもの」と考えているふしもあります。

 

もちろん、宿題の出し方が良くない場合もあります。例えばトータルで多すぎる宿題が出ていれば、むしろ「手早く済ませる」ことは、本人にとって(ある意味で)合理的な方略です。しかし、ここでは宿題の出し方についてはひとまず後に回します。

 

「手早く済ませる」うちは、一つ一つから学ぶことが少ないわけであり、最終的に非効率です。さらに課題に対する消極性は、このあとの影響を考えてもよくありません。

 

したがって、「宿題のやり方」を見て、勉強が「与えられたからやるもの」ではなく、「自分のためにするもの」になるようにアドバイスをするようにしています。

2018/11/12

 

受験指導書との付き合い方 

 

「うのみにしないで、子どもに合うものを」

 

色々な立場の人が書いており、方法も様々です。しかし、共通していえるのは、個人的な経験に基づいた方法を、こうしなさい、とすべての人に奨めていることです。その中には科学的に(心理学的・脳科学的に)正しいと考えられるものもあれば、そうでないものもあります。そもそも、その学習方法が生徒個人に合わなければどうしようもありません。

 

例えば「数学は暗記」や「国語は論理」とうたう本もあります。前者は、筆者が、一度暗記したことを他の問題にも応用できる能力を持っているから言える(自分の経験としてそのように本の中に書かれている)ことです。後者についても、国語が論理だけでないのは、次期の文科省指導要綱で、高校後半が「論理国語」と「文学国語」に分かれることを考えても、明らかです。

 

従って、宣伝されているほど誰にでも有効であるとは限らないので、うのみにせずに、まず子ども自身の状態を知り、子どもに合うか合わないか、子どもが将来的にも活かせるかどうかを考えてからそのやり方を採用する方がいいでしょう。

2018/11/11

 

子どものここを見て成績アップその1

 

「覚えることが勉強と考えていないか?」

 

無料カウンセリングを行っていますが、その時に私が質問などをしながら気をつけているところです。例を挙げながらいくつか書いてみます。

 

1 学力の達成度(当たり前ですが、どれぐらいの学力があるのかを見ます。一般の入塾テストをみたいなものですが、入室を希望される方を学力の達成度でお断りしないところが相違点です)

 

2 勉強に対する考え方

 

勉強をどのように考えているかは重要な要素です。例えば、「やり方を習っていないからできない」「教えてもらっていない」と言うようなら、勉強を「やり方を覚えるもの」と考えているかも知れません。

 

もちろん、国語であれば、漢字やことわざなど覚えなければならないものもあります。それにしても、部首や語源の理解、関連熟語などの知識と関連づけがないとすぐに忘れてしまうし、読解に役立ちません。

 

さらに、工夫したり考えたりすることが少ないわけですから、応用が利きにくいので、入試を受ける場合にも不利です。

 

そもそも社会に出れば「やりかたを教えてもらう」ようなこと自体が少ないわけですから、将来的にも良くなく、勉強が役に立たないことになります。

 

これは保護者の影響を受ける場合もありますから、保護者の方にもお聞きしています。

 

どの科目でも、まずは「暗記主義?」になっていないかを知ることが、根本的な解決につながり、結局は成績もあがることになります。 

2018/11/10

 

「子どもは『義理』で動かない」 その2

 

自分もですが、教師や保護者は、子どもを「教え導く」ものだと思いすぎている気がします。確かにそうしなければならない場合も多いですが、いつでもそうしようとすると、2018/11/09のような嘆きが出てくるのではないでしょうか。

 

「こうしなさい」と言われて、そのまま無条件でするということを大人はしないでしょう。子どもならすると思い込むのは、教師や保護者が、自分たちは「権威」であり、子どもを「教え導く」ものだと無意識のうちに思っているからです。

 

子どもも一人の人格です。まだ一人前ではないかもしれないが、自律性への欲求(人間の三大欲求の一つ Deci & Ryan 2002,  2018/09/15参照)を、大人と同じように持っていることを忘れないようにする必要があります。

2018/11/09

 

「子どもは『義理』で動かない」 その1

 

「効率的な方法を教えても、元からやっている自分のやり方でやろうとする」という嘆きを算数教師から聞いたことがあります。

 

国語でも、文章に線を引けといっても引こうとしない、などということがあります。

 

教師に教えられたその場では「義理」でやるでしょう。しかし、誰でも自分のやり方を変えることには精神的な「コスト」を感じます。頭の中でやったほうがよいだろうと理解しても、めんどうくさくなるのです。だから、いくら教師や親に勧められ、やろうと思えばできることでも自発的にやろうとしません(市川,1993)。それが「人情」です。

 

一見めんどうだけど、大きな効果があるということを理解するためには、その方法を使うことによってどれだけ自分の「コスト」が減るか、どれだけ大きな効果があるかを、実感として体験するような状況設定、教え方(二つの方法を比較してみる等)が必要です

2018/11/08

 

保護者が「読解」を教えるとき。その5

 

こんな時に怒ってはいけない その1

 

「きちんと教えているはずなのに、わかってくれない時」

 

プロではないのだから、上手に教えられなくてもしかたがありません。それよりも、

「わからないときは、自分よりも子どもの方がつらいはず」

 

です。そう考えるとあまり腹がたたないのではないでしょうか。

 

このようなケースは、教える立場の人間にもよくあることですが、「こんな簡単なことがわからない」とか、「自分で考えようとしない」などと言って、生徒のせいにしてしまうのは、教育者の防衛機制と言って、自分の欲求が満たされないときに心の平静を保つための心理です(市川,1993)。

 

もちろん、それが事実の場合もありますが、いずれにせよ怒ってしまっては、気の強い子は反発するし、気の弱い子は過度に自罰的になり、劣等感を持ちます。よいことはありません。

 

さらに、教える立場の者なら、生徒のせいにしている限り、力量は向上しません。

 

「わからないときは、生徒の方がつらい」

「わかりやすく説明できないのは、自分が充分に理解していないからではないかと反省する」

「わからない責任の半分以上は教え方にある」

「これは、自分に与えられた課題であり、乗り越えることによって教え方が向上する」

 

教師にとってはこのように考えることが必要です。

2018/11/07

 

なぜ国語は、なんとなくわからない、のか

 

「アルゴリズムがないから」

 

手順を知っていれば必ず問題が解けるものをアルゴリズムといいます。二桁以上の引き算の筆算や最大公約数の求め方などはアルゴリズムです。算数はアルゴリズムを土台にしています。

 

ところが国語にアルゴリズムはない(日常生活にもない)ので、ある程度正解に近づけそうな方法でやるしかありません。これをヒューリスティック(Polya 1962)といいます。いわゆる経験則ですね。

 

例えば、文章の最後の方に筆者のいいたいことが書いてある(だろう)というのは、ヒューリスティックです。いつでもそうだとは限りません。

だから、算数に比べて「なんとなくわからない」と感じます。

 

精度の高いヒューリスティックの引き出しが多いのは、よい教師である条件の一つです。

2018/11/06

 

保護者が「読解」を教えるとき。その4

 

「メンタルプロセスを明言する」

(NRP report 4-156)

 

「『○○は、それを拾いました』とありますが、『それ』とは何を指していますか?」

 

この問題に正答するためには、

「『それ』は(普通)前の方の何かを指している」 →(本文の前の方をさがす)

「『それ』は名詞を指している」         →(名詞をさがす)

「『それ』は、続く文と整合性がなければならない」(『それ』の代わりに見つけた答え【□□】を置き換えて、□□を拾いましたと読んで見る)→(答えを解答らんに書く)

 

上記のように、少なくとも三つの「 」内のメンタルプロセスを経る必要があります。もちろん( )内のアクションも必要です。問題が解けない場合は、このうちのどれかが欠けていると考えられます。

 

以上は一例ですが、解き方が明示しにくい国語だからこそ、逆に当たり前のように思って見過ごしてしまいがちなメンタルプロセスを、教える人が明言してあげる必要があります。それによって、生徒は、どのように考えるかという手順を学び、応用することができるようになります。(NRPについては、2018/10/01など参照)

2018/11/05

 

どうしたら本を読むようになりますか その1

 

「まず櫂より始めよ」

 

作家の曾野綾子さんは、子どもが小学生の時に「どうして家にはテレビがないの? 他の家にはあるのに。」と言ったので、「ウチはウチ。どうしても見たかったら稼いでから二台でも三台でも買って一度に見なさい。」と言ったところ、することがない息子は本を読むようになったそうです。

 

まさかそれを真似するわけにはいきません。私も毎週のように一冊ずつ見つくろって渡し、読まないときは家で読み聞かせをしてもらったことがありますが、それでも読書の習慣はつきませんでした(国語の成績は上がりました)。強制的に週一冊読ませれば(そして読んでいるかのチェックテストをすれば)読解力は上がると思います。

 

でも、読書の王道ではありません。やはり、面白いと思わないと読まないものだし、面白くないのに無理に読んでも効率はよくありません。そして、本人にとって何が面白いかは、出会ってみるまでわかりません。

 

結局、そういう環境を作るしかないのでしょう。保護者が読書を楽しめば子どもも楽しみます。スポーツなんかそうですね。

後は、リビングなどのあちこちに子どもが読みそうな本を置いておいて、ときどき取り替えていくといいです(もちろん、読書感想文は厳禁です 2018/07/17参照)。

2018/11/04

 

保護者が「読解」を教えるとき。 その3

 

「漢字から意味を類推させる」

 

文脈から意味を類推せよとはよく言われますが、漢字の重要性はあまり言われません。生徒にとっては、むしろ漢字から意味を類推する方が楽なのです。しかし、驚くほど実行されていません。私の所に来た生徒もほとんど実行していませんでした。

 

例えば「現世」という語に初めて出会っても、「『現』在」の「『世』の中」と考えれば意味はわかります。「建設」の「設」がわからなくても「何かを建てること」ぐらいはわかります。後はそれこそ文脈で推理すればいいのです。

 

おそらく、例えばアルファベットの「C」を覚えるように、漢字を覚えるときに意味を深く考えず形だけを覚えることが多いからなのでしょう。表意文字である漢字の特徴を理解し、もっとうまく使うべきです。

 

漢字を覚えるときに同じ部首の漢字を「体制化」したり(2018/08/09参照)、同じ漢字を使った熟語を覚えたり(2018/10/20参照)方が覚えられるということをつぶやきましたが、その手法は、漢字を覚えるだけでなく、読解にも役立つのです。

2018/11/03

 

保護者が「読解」を教えるとき。 その2

 

「考えていることを声に出す」

 

会話しているときには考えていることの全てを声に出したりしません(そんなことをしたら、場合によってはとんでもないことになってしまいます)。でも、教える時には、自分がどのようにして解いているかを声に出すべきです。(NRP report 4-138,150他。NRPについては、2018/10/01など参照)。

 

特に、鉛筆を持っていっしょに文章を読みながら、「これは、さっきのこの言葉と同じ意味だ」と言いながら、二つを線で結んだり、「『要するに』って書いてあるから、」と言って○をつけたり、「ここからがまとめになるのか…。この段落から」と印をつけたり、「ここまでのまとめかな?」(印をつける)、「『要するに」の後のまとめは大切だから、しっかり読まなきゃ」などと、まさに自分の頭の中で考えていることを話していくと、有効です。

 

読んでいく時にどのような手順、方略を採っているかということが子どもにわかりますし、それを真似することができます。モニタリング(2018/10/11参照)と合わせると、家庭での教え方として、優れているです。もちろん、子どもにわかる言葉で話すように注意は必要です。 

 

 

2018/11/02

 

宿題で、問題を解く時間を計るべきか?

 

「計らなくてよい」

 

学習塾によって違いますが、週一回から月一回にかけて時間制限のあるテストをしているので、そこで慣れればよいのです。また、六年の秋冬ごろには時間制限のある問題演習が始まりますから、どの生徒もそこで時間配分には慣れることができます。

 

文章題の宿題をするときに時間を計ると、むしろ深く考えなくなる弊害さえあります。まずは考える力をつけ、その後時間に対応するようにするのが正しい手順です(昔、東京大学には、試験時間一日で、出来た人から帰ってよいという試験がありました。午前中に帰る生徒もいれば、夜までかかる生徒もいたそうです)。

 

 

計る場合は、目安の時間を決めておいてその時間になったらアラームなどで知らせるようにしておくことです。ただ、時間が来ても、そのまま続けます。こうすれば、時間感覚も身につき、深く考えたり調べたりすることもできます。文章題一問で15分~20分が目安になります。  

2018/11/01

 

漢字を教えるときその2 

 

「例文を工夫する」

 

○ 単語優位効果  …漢字一字でなく、言葉、例文で。    (Reicher, 1969)  (2018/09/11参照)

 

○ 自己関連づけ効果…本人に関係する例文で。            (Rogers et al.,1977)(2018/09/08参照)

 

○ 二つ以上の例文 …異なった文脈の例文で。      (NRP report)(2018/10/02参照)

 

○ 意味的限定性  …強い結びつきがある修飾語を付けて。(Toyota,2000)(2018/09/03参照)

 

○ 奇異性効果   …変わっていて面白い例文で。       (Toyota,2002)(2018/08/28参照)

 

○ 意味的関連づけ …「理由」などを結びつける(Bransford et al., 1982; Stein et al., 1982)(2018/07/24参照)

 

以上の効果をできるだけ使うといいでしょう。特に「自己関連づけ効果」は家庭ならではの勉強法です。

さらに、イラストも効果的です。手書きのイラストもいいですね。

 

上の図(1年生のテキスト「見る」の例)は、上記の効果と「体制化(2018/10/30参照)を使っています(個人名は変えてあります)。

2018/10/31

 

記述問題は指定字数の何割まで書けばよいか。

 

「5割」

 

8割と教えられており、それでよいと思いますが、入試は5割あれば採点してくれます。

 

8割と教えられているのは、できるだけ模範解答に近い解答を書いてもらうための配慮です。

 

今のは中~大学入試の話です。きちんとした採点をする大学は、一応解答を作っておいた上で、生徒の答案を見て解答を変えていきます。「作成者や採点者より賢い受験生」がいることを知っているからです。そこまでしなくても、どの中~大学でも、5割書いていれば採点してくれます。

 

生徒には8割と教えてもいいですが、苦手な生徒や困っている生徒には、場合に応じて「5割」という真実を教えて上げて、一旦ハードルを下げて書きやすくし、その後で8割に近づけるようにするのもいいでしょう。

2018/10/30

 

漢字を教える時 その1

 

「一つの漢字につき、(その年齢で知っておいてほしい)全ての『熟語』やことばを教える。」

 

 

漢字を覚えるというのは、漢字を読み書きできるように「形」を覚えることだけではありません。それ以上に大事なのが、漢字の「意味」を理解し、その意味により作られている「熟語」を覚えることによって、今だけでなく将来的にも使えるようにすることです。

 

ここでは「形」だけでなく「意味」と「熟語」の覚え方をご紹介します。一年生を例にとります。まず「形」ですが、下の図(縦長図)は『字統』(白川靜)の「学」の説明です。この図を見せてどのようにこの字ができたかを簡単に説明します。アップした写真は小さくて見えにくいですが、建物の中に子どもの絵が描かれており、それが語源であることがわかります(「子」については、これより前に覚えてもらいます)。 小学生向けに『白川靜式小学校漢字辞典』(小寺誠)というのが出ています。それを利用するのもいいでしょう。

 

漢字は象形文字なので、「イメージ」(建物の中の子ども)を使うことによって、「形」と「意味」を同時に覚えてもらいます。

 

「意味」を覚えたら、それを利用して「熟語」も覚えた方が効果的です。そうすると、(「体制化」(8/9,8/10参照))によってその漢字自体が覚えやすくなるだけでなく、他の漢字も覚えることができ(習っていない漢字にはルビをふっておく)、さらに「熟語」を覚えることによって「語彙力」が身につくという効果まであります。一石二鳥ならぬ一石三鳥です。

 

下の図(横長図)が、一年生で知っておいてほしい全ての「学(ガク)」を使った言葉を教える時の教材例です(「小学校」「通学」「学年」「学期」「大学」「学生」「修学旅行」「学生」「学力」「学用品」)。

2018/10/29

 

保護者が子どもに対して避けるべきこと。

 

1 勉強とは、やり方を覚えることだと教える。

 

2 行き過ぎた結果主義

 

3 教えすぎる

 

4 干渉しすぎる

 

1は、初めて出会う問題に対処しにくくなります。やり方を教えるにしても、できるだけ考えさせるようにして、考えた事実をほめましょう。

 

2は、結果がでなかった時に、自分に能力がないと思い込みがちで、いいわけのためにわざと努力をしないこともあり得ます。結果よりも努力したことをほめましょう。

 

3は、教えすぎると自分で調べたり考えたりしにくくなります。子どもが自律性をもてるように、本当に困っているときにヒントだけを出すつもりぐらいの方がよいでしょう。

 

4は、2,3とも関係があります。、やはり自律性を持つ妨げになりやすいでしょう。自律性を持つことは、勉強ができるようになるだけでなく、大人への第一歩です。

2018/10/28

 

選択肢の選び方 その3 

 

「答えを考えてから選択肢を読む」

 

その1、その2とつぶやきましたが、どちらも先に選択肢を読むことを前提としています。ただし一番正解にたどり着きやすい方法は、自分なりに答えを考えてから(正確でない、何となくの答えでも可)、その答えに近い選択肢をさがすことです。

 

実は、文章を読んでいる段階で、ある程度の内容は頭の中に入り、すでに持っている知識と合わせて再構成されています。この再構成されたものを使わなければ損です。

 

選択肢を先に読むのは、どちらかと言うと情報を吸い上げるやり方(ボトムアップ処理)であるのに対して、答えを先に考えるのは、すでに頭の中にある知識を利用して情報の意味を判断するやり方(トップダウン処理)です。人間の理解は両方の処理で成り立っています(Neisser,1976)。スキーマ(2018/07/30参照)などはトップダウン処理ですね。

 

 じっくり考えるタイプの子や、6年生以上に向いていますが、その1,その2と併用したり使い分けたりするのもいいでしょう。

2018/10/27

 

選択肢の選び方 その2

 

「0・1・全 を消す」

 

「ぼくは小学五年生だ。」という文を、「ぼくだけが小学五年生だ。」とすると間違っていることになります。選択肢を作る立場からすれば、本文中にある正しい文をぬきだして、そこに「だけ」の類の言葉を一つ入れると、間違いの選択肢が作れることにになります。安易な作り方ですが、今でも結構お目にかかります。そこで、次のように考えればよいことになります。

 

「0」…「まったく(~ない)・一度も(~ない)など」のように、「0%」を表す言葉が入っている選択肢は間違いと考えてよい。

「1」…「ただ~だけ・のみ」のように、「only」を表す言葉が入っている選択肢は間違いと考えてよい。上記の例に当たります。

「全」…「全て・必ず・いつでも」のように、「all,allways」を表す言葉が入っている選択肢は間違いと考えてよい。※

 

 

※本文中に上記の表現があるのなら、話はべつですが、そういうケースはほとんどありません。

2018/10/26

 

確実に成長するためには

 

「一回の学習を大切に」

 

先日(2018/10/24)述べた「教訓的機能」(市川1993)が有効です。一度の学習後に、「何が分かったのか、なぜ間違えたのかなどを言語化させ、一般化して教訓を抽出しておくこと」です。

 

具体的には、まず解いた後に、「なぜ最初は解けなかったのか」ということを聞きます。これに対して、「問題をよく読んでいなかったから」とか、「文章を全部探さなかったから」とか、「選択肢の前半だけで正解と思ってしまったから」などというように、言語化させます。言語化することが大切です。

 

次に言語化したことを、この場合だけでなく今後も役立てられるように「一般化」して教訓を抽出します。教訓の抽出も本人ができることが望ましいですが、難しい場合は手伝って上げてもいいでしょう。上記の例であれば、「問題を読み落とさないように気を付ける」などという教訓になります。このようなミスの他、問題そのものの難しさ、やり方の工夫(算数・数学・理科などに多い)、自分の思い違いなどを教訓として抽出することができます。

 

後は先日のようにその教訓を記録し、目につくところに配置します。

 

大切なことは、沢山やるよりも、一問解くごとに「自分はどういう点で賢くなったか」ということが明らかになることです。

 

また、正解を出すよりも、「教訓を引き出せたかどうか」が学習の成果であると考えられるようになることも大事です。そう考えられれば、一喜一憂せずに、確実に前進していくことができます。

2018/10/25

 

選択肢の選び方 その1

 

「分割して ○×? をつける」

 

問題を作る立場から見ると、不正解の選択肢を作る最も多い作り方は、「正しい文の中に、正しくないものを一部分入れる」という方法です。

 

そこで、選択肢の文を二つに分けて記号をつけていきます。例えば四つの選択肢があるなら(・・・・は文字を表す)、

 

                ○                            ×

ア ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・。

  

                ×                            ○

イ  ・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・・。

 

                ○                            ?

ウ ・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・・。

 

                ○                            ○

エ ・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・・。

 

このように、その部分が合っていれば○、違っていれば×、よくわからなければ?を、その横につけます。こうすれば、自動的にエが正解ということがわかります。選択肢の長い学校(洛星など)であれば、三つに分けますが、ほとんどの場合、二つで充分です。これが最も利用できる選択肢の選び方の一つです。

2018/10/24

 

いつも同じ間違いをする子には?

 

「コツをカード、グラフ化する」

 

例えば、いつも文末の「から。」を書き忘れる子には、「文末に『から。』を書き忘れない」とカードに書かせ、いつでも見直せるように筆箱の中などに入れておきます。さらに、実行したかどうかをグラフやカレンダーなどにつけさせていきます。

 

確かにやったという実感がわくので、子どもはこういうやり方が好きです。これは教訓的機能(市川1993)という方法の一部で、また紹介していきたいと思います。

 

前段階として、子どもに成績を上げたいというモチベーションを無理なく持たせてあげること、ここに気をつければ成績があがるということを理解してもらうことが大切ですね。カードに自分で書くこともポイントです。

 

何をしてよいかわからないと思いがちな国語に対して特に有効な面がありますが、すべての科目で使えますので、試してみて下さい。

2018/10/23

 

短期間で成績を上げるには?

 

「質問しまくる」

 

生徒列伝2

 

十年と少し前にご両親から依頼があったとき、Sさんは高校1年生の終わり。数学はできるのですが、本を読まず辞書も引かない国語は正直言って小学校5,6年生レベルでした。

 

まず、知らない言葉は全部辞書を引かせました。けれど、それだけで読解力がつくわけではありません。例えば、「辞書持ち込み可」の外国語試験でも満点がとれるわけではないでしょう。読解には、様々なレベルの知識が必要になってきます。

 

まずは、文法のレベル。次は意味論のレベル。例えば「透明な悲しみが空中で立ちすくんだ」という文は、文法的に正しいけれど、どこか変です。さらに語用論のレベル。「私はカレーライスです」という文の意味が状況によって違うことが理解できる必要があります。そしてスキーマ(2018 /07/30参照)のレベル(ここまで森 『感情と思考の科学事典』2013)。さらに文章構成のレベル。

 

こうしたことを短期間で教えるのは困難なので、一通り文章を一緒に読んだ後、わからないことがあったらとにかく質問しろと言いました。すると彼女は最初の文から一つずつ質問を始めたのです。時間に限りがあるので、もう一度言葉を変えて説明した後、「後は自分で考えて」と言って帰しました。

 

翌日の夜に電話でまた同じ文章でわからなくなったところを質問してきます。一時間半かかりました。その後ももう一度電話がありました。そういうことをくり返した結果、この根性?のおかげで次の定期テストでは一番をとりました。彼女にはこの後大学入試という難関がひかえており、また苦労するのですが、その話はまたの機会に。

 

彼女の成績が上がったのはひとえに「とにかく質問する」という努力のたまもので、普通はここまで質問しません。でも、こちらが質問しやすい雰囲気を作るようにすれば、誰でももっと質問するのではないかと私自身思い始め、以後はそれを心がけるようにしています。

 

お家でもできるだけ答えてあげてるいいかと思います。専門ではないのだから、正解でなくても、私はこう思うと答えてあげて、気軽に質問されるようになるといいですね。

2018/10/22

 

書かないで漢字を覚えるには?

 

そんな方法はありませんと言えばそれまでですが、ひたすら何回も書くより、回数を減らしてでも下のようにした方がよいでしょう。

 

1 自分の経験に結びつける(自己関連づけ効果Rogers et al.,1977)。「集まる」というであれば、そう言えば、火曜日はグラウンドに集まる(集合する)日だなどと結びつけます。

 

2 意味を考える(Craik & Lockhart,1972)。「魅力」という漢字であれば、「鬼」のように(引きつける)力が強いということかな、などと考えます。

 

3 1、2と関連しますが、イメージ(映像)を思い浮かべる。グラウンドに集合するみんなの顔を思い浮かべるとか、鬼の姿を思い浮かべるなど。

2018/10/21

 

良い教師とは?

 

「準備をしている教師」

 

NRP(2018/10/01など参照)の報告を読んでいると、方略のリストの中に、「要約」「図示」などと並んで「教師の準備」が出てきました。一瞬とまどいましたが、生徒の読解力を上げるための方法という意味では確かにこれも方略です。

 

教師が準備することは、テキストを読んで理解することだけでなく、それをどのように教えるかの方略を考えておくことです。さらに、教え方方略の引き出しを多くしておいて、その場に合わせて臨機応変に方略を変える必要があります。その、引き出しを多くすることまでが準備だというのです。

 

確かに、教師が行う準備の量と質が生徒の成績につながることは理解できます。どんな生徒に対しても十年一日のように同じ教え方をしていては、生徒の読解力はつかないということですね。耳の痛い話ですが、真実を突いています。

 

特に読解力の低い生徒にとっては、その影響は大きいですね。読解力の高い生徒は教え方に関わらず自力で何とかできますが、そうでない生徒は教え方の影響をまともに受けますから。

2018/10/20

 

難関校を狙おうと思ったら

 

「要約の練習をする」

 

私が最上位のクラスを教えていたときは要約ばかりしていました。そうでないクラスでも簡単な要約は取り入れていました。また、中、高校生には(あるいは大人にも)必要な勉強です。

 

NRP(2018/10/01など参照)も要約は重要な方略としています。ここでは報告にある要約のルール(4-93)を紹介します。

 

1 些細なことを述べている部分(細かい数字など)を取り除く。

2 繰り返しや同じようなことを述べている部分を取り除く。

3 複数の具体例を上位概念に置き換える。

4 主張が書かれている文を発見する。

5 主張が明示されていない場合、自分で主張文を考える。

 

一つの文章についてこの手順で行うのですが、慣れていない場合や複雑な文章の場合などは、段落ごとにこの手順を行った後で、各段落の要約を(順番を考えて)つなぎ合わせます。

 

要約は、一つの方略としてはかなり重要なものですが、フィードバック(添削)に時間がかかるためにあまり行われていません。家庭でやってあげると力がつきます。

2018/10/19

 

主語と述語の教え方

 

「先に述語を見つける」

 

 

述語は文の最後にあるのですぐに見つけられます。主語の教え方は、低学年は「物語の主人公」と教えるとよいでしょう。

 

「学校におくれそうになったので、ちひろはバス停まで走った。」

 

述語は「走った」で、「物語の主人公」は「ちひろ(ちひろは)」です。

 

こうしておくと、主語に「も」がついているような、引っかけ問題にも対応できるようになります。また、主語が無生物であっても、擬人的表現は子どもが好むものですから、わかります。

 

慣れてきたら、主語は「誰が」「何が」に当たるもの、と教えます。これも引っかけ問題に対応するためです。

 

主語と述語は、理解しておくと高学年になっても読解問題に応用することができます。必ず出題される接続詞の問題をはじめとして、主語と述語の考え方だけで、かなりの問題が解けるほどです。

2018/10/18

 

音読の使い方(リーディング・スパン・テストから言えること)

 

「国語が苦手な子は音読と黙読の併用、あるいは黙読とモニタリング」

 

読解するときに頭の中で音韻(音の読み方)を使っていることが知られています(Binder & Boreci 2008 ; Chace, Rayner & Well 2005 ; Unsworth & Pexman 2008 ; 森田2006)。これを利用して、短時間で読解力を測定する方法がRST(Reading Span Test)です。

 

例えば、「ポストの向こうからランドセルを背負ってにこにこ笑っている友達が現れた。」という文を音読させながら「ランドセル」ということば(下線が引かれている)を暗記させます。音読と暗記を同時にさせるのですね。これをいくつかの文についてやって、暗記項目ををテストします。その成績が読解力というわけです(正確には、読解力と非常に高い相関を示しています)(詳しくは芋阪(京都大学))。たくさん覚えているほど読解力が高いとされています。

 

ここから言えることは、家で勉強させるとき、「読解力が低いと思われる子どもに、音読させてすぐに問題を解かせてはいけない」ということです。「読解に苦労する子は、音読と同時に内容を覚えることが苦手」だからです。むしろ漢字の読み方などに気をとられて内容を忘れてしまいがちです。黙読から始めた方がよいでしょう。内容がわかっているか気になるときはモニタリング(2018/10/11参照)をしてやればいいのです。

 

どうしても音読を取り入れるのであれば、「一度音読させてから、もう一度黙読させる」ことをおすすめします。この方が着実な練習になります。

2018/10/17

 

辞書の引き方

 

「一つの項目の中のどの意味かを考える」

 

言葉を引いて一つの意味を書いて終わる生徒が結構います。すべての意味を書き出してもまだ不十分です。複数の意味があれば、その中のどの意味かを考えることによって、記憶が確かになり(長期記憶の容量は無限であり、関連事項が多いほど記憶の深さが増すことを思い出すべきです)、文脈を推理する読解力もつきます。

2018/10/16

 

授業をどう受けるか

 

「他生徒の発言の良いところや、少しおかしいところを考えながら聞く」

 

 

モニタリングが読解力のアップに効果的であることはすでに述べました(2018/10/10など)。ふと思い出したのが生徒列伝1(2018/09/16)の他の生徒達です。彼らはしばしばI君がひたすら質問と反論をして私が答えるのをじっと聞いていたのですが、聞いていることが案外「モニタリング」になっていたのではないか。

 

モニタリングとはその時点出自分がわかっているかどうかを言語化することですが、I君や私の発言を聞きながら、「あそこはまちがっている」「そこはあってる」というふうに考えながら聞いていたのであれば、まさに自分のモニタリングにつながるわけです。人の発言を聞いて反論なり賛成意見を持つなりするには、自分の思考を言語化する必要がありますから。

 

また、これ自体が一種の「共同学習」だともいえるわけです。共同学習については、NRPも効果的と報告しています(National Reading Panel report 4-6)し、数々の実例があります(2018/06/25など)。ただ、機会が少ない。だからこそ、普通の授業を「共同学習的」に利用するのがコツになるでしょう。    

2018/10/15

 

説明文が苦手な子どものための方略

 

「具体例を消去する」

 

高学年向けです。

説明的文章(論説文・説明文)の構造は、「話題」「主張(言いたいこと)」「具体例」「理由」です。このうち重要なのは、「主張」ですが、これ自体は一文で表せるものです。文章を長くするのは、主に「具体例」の存在です。

 

NRP(2018/10/01など参照)の報告中にも要約手順の一つとして「具体例を消去する」とあります(4-93)が、長い文章も「具体例」を消去することによって、「主張」が目に見える形で現れてきます。「主張」が何度もくり返されていることにも気がつくでしょう。

 

『論理エンジン』や『実況中継シリーズ』で有名な出口汪さんもカリスマ予備校講師でしたが、「具体例を消去する」ことだけを徹底して教え、わかりやすいと評判を呼び、人気講師となったのです。余談でした。

2018/10/14

 

物語が苦手な子どものための方略

 

「物語の構成を教える」

 

「主人公」(「場所・時」)「問題・困難」「行動」「主人公が得たもの」

 

中学入試に出題される物語はほとんどがこの構成になっています。特に大事なのが「問題・困難」と「主人公が得たもの」で、「どのような困難を乗り越えて最後に何を得たか」という視点が重要です。先にこの物語地図の構成を教えて、そこにあてはまることを考えさせることによって読解力が上がります。

 

例えば、文章の最後の方に関係する問題なら、「主人公が何かを得る」と分かっていれば、それにふさわしい解答を選んだり書いたりするようになります。(おそらく読書によって)読解力を身につけている子どもは、すでにこのことを知っているので正答率が高くなるのです。

 

NRP(2018/10/01など参照)によると、物語地図を教えることは、読解力の上昇につながるが、特に苦手な子どもの読解力の上昇につながると報告しています(4-92)。

2018/10/13

 

お説教の回数

 

「間を置いて」

 

回数が多いほど肯定的に受けとめる「単純接触効果」(Zajonc,1968)はあります。CMなどですね。ただ、継続的に反復すると逆に、「倦怠効果」(Cacioppo & Petty, 1979)が生まれて逆効果になります。選挙の連呼などでしょうか。

 

従って、間を置いて説教する方が効果があります。広告研究でも、同一ブランドを集中的に提示するよりも間を空けて提示する方がよりよい効果が得られています。

2018/10/12

 

読解力への方略

 

「学習対象、目的、学習者に合わせる」

 

 

読解力をつけるための方略は無数といっていいほどです。

 

学校では、「音読」「語句の意味調べ」「文法」「細部の解説」「主題の要約」「共同学習」「関連事項を調べる学習」などが主なものでしょう。塾では「語句の暗記」「文法」「問題演習」などでしょう。それぞれが読解力をつけるための一方法です。

 

ただ、読解力をつける方法は無数といっていいほどあります。上に挙げたもの以外では、「質問生成」「モニタリング」「自力学習」「再読」「読んだ内容を話す」「漢字から語句の意味を推測する」「物語の構成を学ぶ」「聞き取り」「質問作成」「図示」「声に出して考える」「文章を思い出す」「文章を覚える」「次におこることを推測する」「既得知識の利用」 「結論を提示する」「要約を組み合わせる」「自力学習」「予習」「復習」「段落ごとにまとめる」「言語心理学的方法」「文章パターンの学習」「多読」「単語を覚える」「文章を書く」などです。

 

例えば、入試「問題」のために「問題演習」をするというのはシンプルな考え方ですが、NRP((2018/10/01など参照))は「問題演習」の効果は少ないとしています(4-85)。一方、短編小説を一つ暗記しただけで外国語の読解力が大幅に上がることもありますし、利用資源の少ない昔は「再読」が主な勉強法でした。

 

最も適切な方略は、学習対象、目的、学習者のタイプなどの諸条件を考慮した上で決まります。 

2018/10/11

 

苦手な子には

 

「より簡単なモニタリングをする」

 

いきなり問題を解かせるのでなく、おおよそ一段落ごとにわからないところを聞いてあげます。わからないところがあれば、それを易しい言葉に言い換えて上げたり、漢字の意味から推理できることを教えてあげたり、前後の文脈から推理できることを教えてあげたりして、どのようにしてわからないところを克服していくかを見せます。

 

これによって、自分が理解しているかどうかを意識することと、難しさを克服していくことを学ばせます(NRP(2018/10/01など参照)4-70)。

 

苦手な子は、わからないままに読んでいることがあります。試してみて下さい。

2018/10/10

 

できる子になるには

 

「モニタリングをする」

 

「熟達者の優れている点」を紹介しました(2018/10/09の写真参照)が、初心者はちょうどこの正反対と考えていいでしょう。すこしでもできるようになるために、見習うべき点をいくつか挙げてみます。

 

⑶の「問題の分析に比較的多くの時間をかける」については、2018/09/30のつぶやきなどで触れた、「問いに線を引く」を実行することによってできると思います。

 

⑷の「自己モニタリング」は、自分がどこまでわかっているかを自分に問いかけることです。NRP(2018/10/01など参照)も、読解の重要な方略としてモニタリングを挙げています。「自己」モニタリングは難しいので、初めは指導者が質問をしてあげるのがいいでしょう。物語であれば、「誰が・何が・いつ・どこで・なぜ・どのようにして・このあと何が起こるか」などを聞くのが初歩的な質問です。説明的文章であれば、「何について書かれているか(話題)・筆者の言いたいこと」などを聞きます。生徒が自分自身で自分に問いかけられるようになることが望ましいですね。初めはある程度まとまった段落ごとにモニタリングするのがいいでしょう。

 

⑸の「より的確な方略を選択する」ためには、まず方略を複数知っていなければなりません。初心者は方略を覚えることがスタートです。方略についてはいくつか書いてきましたが、また少しずつ書いていきたいと思います。

 

2018/10/09

 

教える人が気をつけること

 

「自分ができることと教えることは別」

 

名選手必ずしも名監督ならずといいます。自分が熟達しているということと、教えるということは別です。

 

ここに、熟達者(expert)の研究があります(Chi,2006)。「熟達者が優れている点」も挙げてあります(写真)が、ここでは「熟達者が制約される点」を見て、「できる」人が陥りがちな罠に触れてみましょう。

 

「熟達者は領域固有である」とあります。これは、その領域は熟達していても別の領域に熟達しているわけではないということです。名選手が必ずしも名監督になれるとはかぎらないし、「自分がすること」と「自分ができることを教えること」は別の領域だと考えてもいいでしょう。

 

「熟達者は自身の能力を過大評価する」ともあります。自分はできるのだから、教えるのも上手なはず、と、なりがちです。

 

「熟達者は問題の表面的な特徴や細部を見落とすことがある」。これは、例えば、初心者(生徒)が、問題の言葉の意味にとまどっているのに、それに気がつかないという過ちにつながりがちです。

 

「熟達者は柔軟性に欠けることがある」とあります。自分の方法が一番いいはずと考えて、他の方法を考えないことがあります。本来、方法、方略というのはケースバイケースのはずです。

 

「熟達者は初心者の技能やパフォーマンスを見誤ることがある」。初心者(生徒)がどこまでできるか(できないか)を見誤り、教えすぎたり、教えなさすぎたりすることがあります。

 

「熟達者は偏見や機能的固着を示すことがある」ともあります。先入観を持ちすぎて教えてしまうということです。

 

「できる(できた)」人ほど、初心者を教える時には注意すべきことがわかります。これは、教師だけでなく、保護者でも言えることですね。

 

あるトップ講師が、「優秀な子を教える方が楽しい」と言いましたが、彼自身が「できる(できた)人」なので、自分と同じようなレベルの子を教えるのが楽なのは当たり前です。その意味で彼は知ってか知らずか「熟達者(彼自身)が制約される点」 を感じていたのでしょう。

 

2018/10/08

 

読解問題をすみやかに解く工夫

 

「記号を文章の上(下)に写す」

 

ある有名塾の講師は、文章中の記号を写真のように下に写せと教えています。写すのは上でも上と下にわけてでも構いませんが、目につきやすくするのがコツです。こうしておけば、問いを読んでから文章に戻って記号を探すまでの「記憶負荷(認知負荷2018/10/07参照)」を減らすことができます。

 

この文章はある難関中学校の入試問題ですが、文章中に4種類の記号が使われています(ア~エ、1~4、A~D、ⅰとⅱ)。これをいちいち探すのは負担ですし、時間がかかると問いの条件を忘れてしまいます(問いには覚えなければならない条件がいくつかあることはお話ししましたね(2018/0930参照))。このようにして記憶の認知負荷を減らすことによってミスが少なくなります。

 

これと似た理屈になりますが、解答の書き間違いが多い生徒であれば、答えを問題の下に書き込んでから写す方がミスが少なくなります。後で答合わせもできます。また、算数であれば、解答らんに単位を先に書き込んだ方がミスが少なくなります(最近は、単位が既に印刷されていることが多くなりました)。

2018/10/07

 

問題が解けないときは?

 

「問題用紙を文章に近づける。」

 

低学年の間は文章と問題を同時に見ることができます(写真)。これは、文章か問題を記憶する負担をなくしているという意味もあります。高学年になると、文章と問題が離れており、少なくとも一定の時間はどちらかを記憶する負担が生まれます。高学年はその負担に堪えられる場合がほとんどですが、3,4年だと、問題と文章が離れていると記憶の負担が多すぎる場合もあります。

 

従って、3、4年生は、問題用紙を文章に近づけるなど、この負担を減らす工夫をすると効果が生まれることがあります。3、4年生だけでなく高学年でも様々な工夫により記憶の負担(「認知負荷(cognitive load)」)を減らし、効率よく問題を解くことができます。工夫の仕方については、また別の項で書きたいと思います。

 

(以下学術的根拠)

 

Zhang et al. 1994は、問題を、見て確かめられる部分(外的問題空間)と記憶やイメージ化に頼る部分(内的問題空間)とに分けました。そして、本質的に同じ問題でも、内的問題空間が多い問題は、それだけ認知的負荷が大きく、解くのが難しいとしています。

2018/10/06

 

保護者が読解を教える時 その2

 

「レベルを一段階落として」

 

NRP(2018/10/01など参照)も科学的な根拠のある読解方略の一つとして、「教師がした質問に答え、正解かどうかのフィードバックをもらうこと」としています。保護者がテキストがわかっているかどうかを質問して確かめるのは理にかなったことなのです。

 

ただし内容は一段階易しめにした方がいいですね。大人が望むような理解の仕方を子どもはしていないことの方が多いからです。心理的引き離し(2018/07/09参照)にかなった、ちょうどいい質問をすることはかなり難しいことで、教師が最も力量を問われるところです。

 

いちがいには言えませんが、お家では、こんな易しい質問をしていいのかと思われるぐらいの方がよいことが多いですね。

2018/10/05

 

無意識のうちにモチベーションを高めるには

 

「声かけや手紙が有効」

 

必勝と書いたはちまきをしたり、机の前に合格という貼り紙をしたりするのはよく見る光景ですが、決して意味の無い事ではありません。Barge,1997,2001は、目標に関わる概念(この場合、「必勝」や「合格」)を活性化させることは、モチベーションを高めることを見いだしただけでなく、(はちまきや貼り紙の場合はある程度意識的ですが、)無意識のうちにも目標に関係する言葉に触れるとモチベーションが高まることを実験で確かめています。


【実験】

目標達成に関連する言葉を示されたグループと、援助に関連する言葉を示されたグループとに、パズルを解いてもらいました。目標達成に関連する言葉を示されたグループは、同じグループ内の他の人が手間取っていても、自分のパズルをどんどん 解いていきましたが、援助に関連する言葉を示されたグループは、手間取っている人のスピードに合わせました。どちらも本人は自分の行動を全く自覚していませんでした。

 

また、モチベーションは持続力があるので、一度モチベーションを持てば、目標に向かった継続的な行動をとることができます。

 

従って、学習を応援する立場であれば、学習者が目標を立てた場合、その目標達成に関連する言葉にできるだけ触れるように工夫(声かけ・手紙など)することがよいのです。

 

以上の無意識的なモチベーションは、言葉によって活性化されるだけでなく、ステレオタイプ(典型的な職業、人物)に触れることによって高まることも確認されています。例えば、看護師の写真を見た人たちは、同じ課題をしても、見ない人たちにくらべて援助的な行動をします(Aarts et al. 2005)。サッカー少年が部屋の壁にサッカーのスーパースターのポスターを貼っているのはこの点でもっともなことです。5年生の時に、6年生達の受験を見に行くことは意味のないことではないのですね。

 

ただしこのような活性化は、状況に依存しており、まったく目標を持っていない人よりも、目標を立てたという「状況」にある人の方に効果が高くなります(Fergunson & Bargh, 2004)。

2018/10/03

 

わかっているつもりの子には

 

「教えさせる。」

 

「仮想的教示」という手法(市川2010)を使い、「先生になって、生徒に教えるつもりで」説明させます。説明できないときには、「本当はよくわかっていない」ことに自分で気づくように水を向けます。こうして「なんとなくわかった」という状態から「明確にわかった」状態へと成長させます。自分を客観的に見る力や表現力も養われます。中学年以上におすすめです。

2018/10/02

 

ことばを覚えるコツ

 

「二つ以上の例文を。」

 

前述のNaltional Reading Panel(以下NRP)は、反復が大切とするとともに、「たくさんの文脈で」反復した方がよいとしています。

 

同じ例文を二回以上読むよりも、同じ言葉を使った「違う例文」を二つ以上読む方が定着すると言うことです。

 

これは複数の文脈で学ぶ方が定義をイメージしやすくなるからでしょう。実際我々は日常生活の複数の経験から言葉を学んできたはずです。

 

例えば、言葉の意味を教える時に二つ以上の例を挙げて説明して上げるとよいでしょう。自分で勉強するときは辞書を二冊引くのもよいことです。

2018/09/30 

 

問いに線を引く その4(まとめ)

 

1 何を聞かれているか(問題内容)((2018/9/26参照)

2 どのように答えるか(解答形式)(2018/9/13、26参照)

3 ヒントになるところ(2018/9/18参照)

 

この三箇所に線を引きます。できるだけ四箇所を超えないようににしましょう。四箇所を超えると一度には考えられなくなります。(2018/8/07参照)

2018/10/01

 

保護者が「読解」を教えるとき。 その1

 

「先に言葉の意味を教える。」

 

科学的証拠のある読解方略を示したNational Reading Panel(U.S.)は、20年間の研究に基づいて、「読む前に単語の意味を教えておくと、語彙獲得と理解を助ける」と言っています(4-4)。

 

読みながら言葉の意味を調べるのが普通だと思いがちですが、発想を切り替え、保護者が一手間手伝えるのであれば、先に言葉の意味を教えておいた方がいいです。その言葉を覚えやすくなるし、文章理解もしやすくなります。これは「タイトルをつけた文章は、付けない文章の2倍覚えられる」(2018/106/19参照)という事実とつながっています。

2018/09/29

 

算数(数学)が得意で国語が苦手な子どもには

 

「『式(記号)』と『文章(ことば)』の違いを教える。」

 

「1+2=」という式は、「1と2を足した合計を求めよ」ということを意味しています。他の意味はありません。

 

「ぼくはスパゲティーだ」という文は、様々な意味を表します。「嫌いな食べ物は何ですか?」と聞かれたときの答えなら、「ぼくはスパゲティーが嫌いだ」という意味になりますし、「注文は何にしようか」と水を向けられたときの答えなら、「ぼくはスパティーを注文する」という意味になります。つまり、ある文(ことば)の意味は、前後の文(ことば)によって決定される面があるのです。これはどの文章にも多かれ少なかれ言えます。

 

したがって、文章を読むときは前後の文との関係も読まなければならないのですが、文章を「式」と同じように考える子は、一つの文しか読まないためにそこでつまづいてしまうことがあります。

 

式と文章の違いをはっきりと教えてあげたうえで、たとえば、ことばの意味などを説明するときは、一続きの二文以上の例文を使って説明したり、意味調べをするときにも二文以上で書かせたりして、文と文との関係を意識させるとよいでしょう。このことは、2018/07/24の「言葉の覚え方」にも深く関係しています。

 

生徒列伝2で、このタイプの生徒を教えた経験を書くつもりです。 

2018/09/28

 

子どもにどこまで教えるか?

 

「自分でできなくなる直前まで。」

 

教えなければ「できないまま」だし、教えすぎると自分でやる力がつきません。

 

「できるだけ自分でやらせて、行き詰まりそうな時に少しだけヒントを与える」のがよいと思います。これは「間隔伸張学習法(覚えている時間内でテストをし、その時間間隔を少しずつ延ばしていく)」や、「エラーレスラーニング(学習させてから、確実に正答できる範囲で、易しいテストから、ぎりぎりの難しいテストまで実施する)」などの効果的な学習法と深いつながりがあります。

 

根気が要ることですが、それよりも大切なのは、「どこまでが出来る範囲か」ということを見極めることです。これは、個性や年齢、気分や環境などによって違います。「ライオンの子を千尋の谷に突き落とす」ように突き放す場合もあれば、少しずつ確認しながら進めた方がよいケースもあります。

 

結局このテーマは「どこまで相手を知るか」に還元できるのかも知れません。

2018/09/27

 

教えるコツ

 

「子どもを演じる。」

 

問題の解き方を先生が生徒に教えることを認知心理学ではモデリング(Schunk,1981)と言います。

個別教室など、個別にモデリングをすることもあります。指導者が言語化しながら解く様子を観察させるという点では同じですね。

 

モデリングは有効な方法ですが、これを応用した手法として相互モデリング(植木,2001)があります。

子どもの間違った解き方を、指導者が話しながら演じてみせるのです。

 

生徒の間違った思考過程を教師が言語化して演じることで、誤りに気づかせ、正しい思考過程に導けることがあります。教えられたのでなく、自ら気づくことによって定着度が上がり、自信につながります。

 

もちろん生徒の思考過程を把握する必要はありますが、その試み自体が意義のあることです。

お家で教える機会のある方は試してみてはいかがでしょうか?

2018/09/26 

 

問いに線を引く その3(どこに引くか)

 

「問題内容」と「解答形式」に引く。

 

問い 「『他の人から見れば飼い犬が死んだだけだが、私には学ぶことがあった』とありますが、どのようなことを飼い犬から学んだのですか。本文中の言葉を用いて四十字以内で答えなさい。」

 

以上の文であれば、まず、「どのようなことを飼い犬から学んだのですか」に線を引きます。これは「何を聞かれているか」をつかむためです。次に、「本文中の言葉を用いて」と「こと」(「こと」は二回線をひくことになります)とに線を引きます。これは、「答え方」を知るためです。これによって、本文中の言葉を利用し、最後が「~こと。」で締めればよいことがわかります。

 

「何を聞かれているか(問題内容)」と「答え方(解答形式」を表す言葉に線を引くことが大切です。子どもが、わかっていなかったり、忘れていたり、勘違いしていたりするのがこの二つです。この作業によって、「問題を理解し、解答を作成する作業」(2018/09/26参照)へと間違いなく進むことができます。

 

 

 

※「四十字以内」は引かなくても意識できます。解答らんもありますしね。

2018/09/25

 

やる気、意欲をもってもらうためのアプローチ その3

 

「人間の能力は成長すると」と伝える。

 

このような考え方を「拡大理論」といいますが、この考え方を子どもに伝えて上げるようにしましょう。

 

「拡大理論」を持っている人は、自分の能力を高めることを目指す「課題目標」の達成を求めるようになるので、たとえ失敗しても、それを新たな努力目標の発見と弱点の克服につながるいい経験としてとらえます。

 

「人間の能力は生まれながらにほとんど変わらない」と考える「固定理論」を持っていると、失敗したときには自分に能力がないからだと思い、無力感に襲われ、努力を放棄しやすくなります。

(Dweck,1986 : Duda & Nihcholls,1992 )(「今日のつぶやき」6/14)

 

 

2018/09/24

 

寝る前に覚えよう。

 

上図の、左が朝に暗記した成績です。12時間後の成績が一番悪く、睡眠を取った次の日に少し回復しますが、十分ではありません。

 

右は学習の直後に睡眠を取った場合です。12時間後にも24時間後にも、朝に暗記した場合には決して到達できないレベルの点数に達しています。

 

それだけでなく、覚えた直後よりも睡眠を取った方が成績がよくなっています。

 

このような現象の理由は、寝ている間に脳内(海馬)で情報が有効に活用できるように整理できるからと考えられています。

(以上:池谷『受験脳の作り方』)

 9/23

 

朝は暗記するな。

 

図の縦軸は「記憶の成績」、横軸は「ストレスの強弱」を表します。ストレスが弱くても強くても記憶成績は下がり、ストレスが最適レベルの時に成績があがることを示しています。

 

ストレスが強いときとは、例えば喧嘩をした時などです。

代表的なストレスの弱い時が、朝、目覚めたばかりの時です。

 

では、いつ暗記をすればいいのか?

 

それは寝る前です(画面の都合で、説明は次回に回します)。

2018/09/22 

 

教えるコツ

 

「二段階に分ける。」

 

問い 「だれも主人公の言うことに耳をかたむけたりしませんでした」とありますが、なぜですか。二十字以内で答えなさい。

 

この問題ができない生徒がいたとします。その理由を考えてみて下さい。

 

「文章がよく理解できていないから(読解力不足)。」? 「二十字以内で書くのが難しいから(記述力不足)。」? 

 

いずれもあり得ることです。ただ、もう一つのケースがあるのです。それは、「『耳をかたむける』の意味がわからなかったから。」です。

 

なんだ、と思われるかも知れません。しかし、問題解決のプロセスを、「与えられた問題文を解く」という一つのプロセスだと単純に考えるのは誤りで、実際には、

 

①「問題を理解する」段階

②「理解した問題を解く」段階

 

の二段階がある(村山『感情と思考の科学事典』)のです。

 

この生徒は「問題を理解する」段階でつまずいていたのですね。これは案外気がつきにくいことですが、よくあることです。

 

何でこの問題が分からないのだろうと思われる保護者の方、「問題を理解していないのではないか」と思って子どもさんに接してみることも時には必要かも知れません。

 

※参考

「ケンタくんはアメをいくつかもっていました。カナちゃんにアメを3こあげました。ケンタくんは、いま、アメを4こもっています。ケンタくんは、はじめにアメをいくつもっていたでしょうか。」

 

「理解した問題を解く」段階(②)は、3+4の計算をすることです。しかし、「問題を理解する」こと(①)ができないと、たとえ3+4の足し算ができる子でも、この問題を解くことができない場合もあるのです。(Riley et al. 1983)

2018/09/21

 

やる気、意欲をもってもらうためのアプローチ その2

 

まず自分でやらせ、ヒントを小出しに。

 

Deci & Ryan 2002の自己決定理論によると、人間の三つの心理的欲求は、有能さへの欲求(9/15参照)、自律性への欲求、関係性への欲求※です。

 

特に自律性への欲求は、発達学者のEriksonが唱えたライフサイクル理論においても非常に重要視されています。幼児期初期(4歳ぐらい)に、自律性(自分のことを自分で決め、行動する)を身に付けることによって、困難な状況に立ち向かえたり我慢強くなったりするというように、何事に対しても積極的に関わっていこうとする意欲が生まれます。これは勉強をしていく上でも大きな力になります。逆に失敗してしまうと、何事に対しても自信が持てず、疑う心や自分を偽る心が育まれる場合もあります。

 

したがって、勉強を見て上げるときには、たとえできなくても最初は自分でやらせてあげることが重要になります。自分でやってみて、少しでも進歩が見られたときに、生徒は自律性への欲求が満たされ、やる気と意欲を持ち始めます。保護者には見まもる辛抱が必要な時もあるのです。

 

どうしてもヒントが必要な時は最低限のヒントを少し出して様子を見ることをくり返すのがいいですね。

 

※関係性への欲求とは、平たく言えば、誰かと仲良くなりたいという欲求です。

2018/09/20

 

算数応用問題の教え方

 

 

1 二回(以上)学習させる(教える)。

2 図や絵を使って学習させる(教える)。

3 学習したことをヒントにして例題を解くように伝える。

4 学習した後、時間を置かずに例題を解く。

5 意味が近い※例題を解く。

 

応用問題の本質は「類推analogy」です。ここでの「類推」とは、「目前の問題が、以前に学習したことと本質的に同じだとわかること」です。

 

 

ところが、「個人にある特定の類推を生じさせること」(この場合算数の応用問題を解くこと)は、決して簡単ではないことが研究によって指摘されています。

 

「類推」をより容易にするために研究された方法が上記の1~5です。

 

1については、複数の事例を学習させた方が、単一の事例を学習させた場合よりも「類推」が促進されることが確認されています(Gick & Honlyoak 1983)。

 

だから、なかなか応用問題が解けない生徒に対しては、最初に教えた内容を、もう一度違う数字を使って教えることをおすすめします。

 

また、2(視覚的な表示)、3(ヒントの明示)、4(時間的近接)、5(意味的近接※)も「類推」を促進することが確認されています。

 

これらは当たり前のようですが、案外出来ていないことが多いようです。1はまず出来ていないと思われます。4や5も余り意識されていないでしょう。子どもの勉強を助けて上げるとき、以上のことを守るだけでずいぶん違ってくる場合もあるでしょう。

 

※「意味が近い」、「意味的近接」とは、例えば、リンゴとミカン(果物)を使って学習したら、ブドウとモモ(果物)を使った例題の方が、鉛筆と消しゴム(文房具)を使った例題よりも、意味的に近接しており、解きやすいということです。もちろん、リンゴとミカンを使った学習(具体的なモノ)をした後でも、鉛筆と消しゴムを使った例題(具体的なモノ)の方が、動物園に行く回数と水族館に行く回数を使った例題(抽象的なコト)よりも意味的に近接しており、解きやすいということになります。

 

だから、できるだけ同じカテゴリー(範囲、分野、領域)か、似たカテゴリーを使った例題、練習問題を解いた方がいいですね。

 

ちなみに、「意味が近い」(「意味的近接」)問題が解きやすいのは、人間の学習や思考が、抽象的な論理に基づいているのでなく、学習や思考する具体的な内容(領域)の影響を受けるという事実に基づいています(「領域固有性」)。

 

「領域固有性」は、あまり知られていませんが、算数だけでなく、子どもの学習指導の上で非常に重要で、これを意識して教えるのとそうでないのとでは大きな差がでます。このことについては、また別の機会に取り上げたいと思います。 

2018/09/19

 

小学校の英語 

 

「効果は未知数」

 

 

2020年から小学校で英語教育が始まります。小学生から英語を始めることがよいのか悪いのかは、学術上の結論が出ていません。

 

ただ、バイリンガル(二カ国語を使える人)の知的能力が、モノリンガル(一カ国語しか使えない人)よりも「低くなりやすい」という研究があることは知っておいた方がよいでしょう。

 

言語の獲得には多くの時間とコストがかかり、二つの言語について優れた能力を発揮できるような学習を行うには相当大きな努力が必要になります。従って、二つ以上の複雑な情報処理を並行して行う場合、片方あるいは両方の成績が低下する可能性が高いのです。

 

Tkakano & Noda,1993は、人が不慣れな外国語を使っている最中は、その外国語を使うのが難しいだけでなく、思考力の低下が発生することを発見しました(「外国語効果」)。彼らはこれをバイリンガルの知的能力の低さの原因であると考えています。

 

ただし、これらの研究もまだ十分であるとは言えません。今後の研究の進展を待つ必要あることも事実です。

 

以上の状況からすると、保護者としてはあせらずに子どもを見まもることが必要になるでしょう。具体的には、あせって英語をつめこもうとするとマイナスの効果が生まれる可能性があると知っておくことです。それだけでも気持ちに余裕が持てますね。

2018/09/18

 

問いに線を引く その2(リード文がある場合)

 

問いに線を引くことは、点数アップに最も早く効果が現れる方法の一つです(9/13)。

 

次の問いのどこに線を引きますか?

 

問い 主人公はどうして先生の言うことに素直に返事をしなかったのですか。次の(   )にあてはまる言葉を十字で本文中から抜き出しなさい。

◎ せっかく一生懸命考えた(   )を少し見ただけで評価されたから。

 

「十字」に線を引きますか? それも悪くないですね。けれど、必ず引くべきところは、リード文(◎の文)の中にあります。

 

この場合は、

「せっかく一生懸命考えた」と、「少し見ただけで評価された」とに引きます。

 

この言葉(のどちらかを)文章中に見つければ、その前後に答えが見つかると思います。

 

というのは、「別解を出したくない」という心理が問題作成者にはあります。したがって、リード文を作るときには必ず文章中の言葉を利用して答えを限定しようとするのです。この心理を逆用すればいいのですね。

 

「十字」に線を引くことは間違いではないですが、生徒によっては「十字」というだけで、全然違う答えを見つけてきたりするので注意しましょう。 

2018/09/17

 

ほめ育ては有効か?

 

「頭がいいねとほめるのでなく、よくがんばったねとほめましょう。」

 

 

ほめるのは子どもに「真正な誇りauthentic pride」を持たせるためです。「真正な誇り」を経験すると、自分自身を力強く感じ、積極的な行動や発言を行うようになります。さらに、社会に役立つような適応的行動をするようにもなります。

 

ただし「思い上がり hubrisitic pride」を持たせないように注意しましょう。「思い上がり」は、自分は何でもできるという自己愛が高まった状態で、自己愛が高くなると、自分が傷つくのを恐れて他者への攻撃をしたりするなど、社会に不適応な行動をとる可能性があります。

 

どちらもprideという単語を含みますが、大違いですね。

 

「真正な誇り」は、努力などの「行動」をしたから結果が得られたと感じるときに生まれます。「思い上がり」は、「行動」ではなく、自分の「能力や性格」で結果が得られたと感じるときに生まれます。

(以上Tracy & Robins,2007 : Lewis,2000)

 

したがって、「能力や性格」をほめるのでなく、「行動」をほめるようにしましょう。

2018/09/16

 

生徒列伝 その1

 

納得することが大切

 

「納得するとは階段を一段上ることだ。一段ずつ登るとゴールに近づいていることになる。納得しないで分かった気になっていると、階段は一段も上れていない。

 

だから、先生(私)の説明に対して、納得するまででわかったと言ってはいけない。納得すれば必ず伸びる。」

 

そう言って教えていたのですが、それを誰よりも実行したのが、今では立派な社会人になっている当時中学生のI君。

 

一斉授業中に納得するまで私に食い下がります。その時間が長いときは「Iタイム」と呼ばれたぐらいでした。2,3年生時、国語の偏差値は50~55ぐらいでしたが、本命の入試では、関西でご本の指には入る高校に、国語の最高点を取って合格しました。

 

 Bandura (1977)は、人間の生きる力の一つとして「自己効力感self-efficacy」を提唱しています。そして、「自分が出来るようになると信じられること」によって成長していくことが人間の特徴だとしました。

 

まさにI君は一つ納得するたびに「自分は一つ伸びた」「自分はこれからも伸びる」と自己効力感を深め、成長していったのでしょう。

 

2018/09/15

 

やる気、意欲をもってもらうためのアプローチ その1

 

Deci & Ryan,2002によれば、人間は何かができるようになりたいという欲求を持っています。

 

幼児期から児童期にかけて「勉強ができるようになりたいか」と聞けば、まず「なりたい」と答えます。「では、どうしたら勉強ができるようになれるかな」と聞いて、自分で考えさせヒントをあたえたりすることがやる気を持つ第一歩です。

 

ところが現実には、「勉強しなさい」という命令や「勉強しないと~(罰や否定的な言葉が入る)だよ」という脅しから入っている場合が非常に多いのです。

 

 

まずは、子どもの基本欲求に訴えかけることから始めましょう。

2018/09/14

 

「やればできる」子

 

 

「やればできるんだけど、やらないからなあ」

こんな生徒がクラスに一人はいます。それで終わってしまうのでなく、なぜやらないかを考えましょう。やらない理由の一つに「努力差し控え方略」があります。これは、「一生懸命努力しても成績が悪かったときに、自己の能力の低さを示すことになるために、あえて努力をせずに、成績が悪くてもプライドや他者からの評価を保とうとする無意識的なメカニズム」(市川2011)です。指導者はそうした可能性を含めて、適切な判断と指導をする必要があります。 

2018/09/13

 

問いに線を引く。

 

 

すぐにも点数アップ。

 

文章の大切な線を引けとはよく言いますが、問いの大切な所に引けとはあまり聞きません。

問いに引く方がはるかに簡単で効果もあります。

 

問い 「なぜ○○くんは泣いたのですか。二十字以内で答えなさい。」

 

この問いに一カ所だけ線を引くなら、どこに引きますか?

 

「二十字以内」でも悪くはありませんが、テストの時は解答らんを見れば二十字と言うことはわかり、間違えるはずがないので引かなくても間に合います。この問いの大切な所とは、「なぜ」です。「なぜ」に線を引くことよって、答えの最後が「から。」としなければならないことが意識できます。この文末を間違うと減点されます。

 

問い線を引くべきの大切な所の一つは、このように「答え方」が分かるところなのです。 

2018/09/12

 

やる気を出してもらうには。

 

まずその子のモチベーションを知ってから指導を!

 

 

・勉強が楽しい。

・頭がよくなる。

・仕事や生活に活かす。

 

・他の人がやっているから。

・競争心、プライドから。

・報酬(ほうび)を得る手段として。

 

きちんとモチベーションを知るには様々な質問をする必要がありますが、とりあえず上のようなモチベーションが考えられます(市川,1996)。上の三つは「学習内容に関わるモチベーション」、下の三つは「学習内容とは関係のないモチベーション」です。教育関係者は上のモチベーションを重視する傾向がありますが、低年齢児や意欲を失った生徒にこういうモチベーションを期待しても難しいでしょう。むしろ下のモチベーションから入り、次第に上のモチベーションが芽生えてくるような柔軟な指導が必要です。 

2018/09/11

 

ひらがな(読み)の教え方

 

単語で教える。

 

習い始めの子が、「け」は読めなくても「とけい」は読めることがあります(単語優位効果 Reicher, 1969)。

 

この効果を知っていると教える工夫の余地が広がります(例えば、ひらがなカードで教えたりテストしたりするとき、「け」というカードが読めないときは、「と」「け」「い」と三枚のカードを並べて示し、それが読めたら「と」と「い」を引いて「け」を読ませる、など)。

 

単語優位効果を使うと他にも色々工夫ができるので試してみてはいかがでしょうか。漢字や英語にも応用できますね。 

2018/09/10

 

 

「例えば漢字練習、の注意点」

 

 

小学3、4年生ぐらいが勝負。

 

この年齢になると、メタ記憶(記憶に関しての記憶)※が発達し始めます。「今覚えなければいけないという意識を持つ」ことや、「今覚えていることを後で思い出さなければならないという意識を持つこと」(、さらには「どのような覚え方が効果があるか考えること」、「覚えているかどうかを自分で確認すること」「覚えなければならないことと、自分がすでに知っていることとを関連づけること」など)を、少しずつ実行し始める年齢なのです。どれも勉強法としては王道と言えることですね。

 

1、2年生あたりだと、機械的に何回書くというような練習でも間違いとは言えません。そもそもメタ記憶が発達していないから、上記のような目的意識(や方法の工夫、自己チェック、既知との関連づけ)などは難しいのです。無理にやると勉強が嫌いになったり手をぬいたりする場合もあるので、基本的には「楽しく勉強させる」という考えでよいでしょう。

 

しかし3、4年生でも1、2年生と同じようにしていると(例えば、漢字の練習をただ機械的に何回も書いているようだと)、メタ記憶を発達させられず、5、6年はおろか、中高生(そのような生徒に沢山出会いました)、場合によっては大人になってもメタ記憶が弱いままで、合理的な勉強ができなくなってしまうおそれがあります。

 

メタ記憶は指導によって伸ばすことができるので、3、4年生が勉強法を教える時期と考えて、子どもに接することが肝要です。

 

※メタ記憶…メタ認知(8/6)の一部

 

2018/09/09

 

「ヒントの出し方」

 

 

場所を教える。

 

 

「シーソー」(公園)

「シマウマ」(動物園)

 

低学年(1~3年)は高学年(6年)に比べて覚えたことを思い出す力が劣るとされていますが、(   )内のような場所カテゴリーのヒントをあたえると、高学年と同じぐらい「   」の言葉を思い出すことができます(Kobashigawa,1974)。

 

子どもに何かを覚えさせるとき、どの科目でも使えますので、お家で試してみては如何でしょうか。

 

なお、Kobashigawa,1974では示されていませんが、場所カテゴリーでなく、単なるカテゴリー《「シマウマ」に対して(どうぶつ)》でも同様の効果があると考えられています(堀田『認知心理学ハンドブック』)。

2018/09/08

 

自己関連づけ効果 その1

 

「自分に当てはめて。」

 

二倍の効果があります。

 

 

性格を表す形容詞(「社交的な」など)を、「自分に当てはまるかどうか」を確認した場合、しない場合と比べて二倍(30:13)の記憶成績が示されました(自己関連づけ効果Rogers et al.,1977)。

 

例えば、「分別がある」という言葉を覚える場合、「常識がある」という意味だけを学習するだけでなく、ついでに「それは自分にあてはまるか」と考えるだけで(あてはまってもあてはまらなくてもよい)、覚えやすくなることを示唆しています。難しいことではないので、習慣づけたいですね。