―効果がある割に知られていない勉強法を動画で紹介していきます。
ワンポイント勉強法その②は、「分散学習」
(その①は、「メニュー」→「ワンポイント勉強法」へ)
下の2本の動画は、授業例です。
授業例2(記述指導)
「LINE」を用いて、送った答案をリアルタイムで即座に添削、返却、質疑応答。今までの添削の欠点(返却が遅い・質疑応答ができない)がありません。
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以下では、科学に裏打ちされた勉強法をホームやブログでつぶやきます。
例えば、イライラしていると、指で何かをたたいたり貧乏揺すりをしたりします。これは脳内の感情が体の動きに影響を与える例です。
逆もあります。体の動きが脳に影響を与えるのです。例えば、スマホのフリック入力によって感情が左右されるという研究があります(青山,2020)。
フリック入力というのは、例えばスマホのキーパッドで「お」という文字を打ちたい場合、「あ」を少し長押しします。すると、左に「い」、上に「う」、右に「え」、下に「お」が出るので、指を下にずらして(flickして)「お」を入力することです。
実は、指や手、腕は、手前にひくと「承諾」(例えば、「おいでおいで」の動作)、手前から外に押すと「拒否」(「シッシ、あっち行けの動作)の感情を呼び起こすことが以前から知られています。
したがって、上記のフリック入力例では、「お」をフリック(外フリック)すると「承諾」、「う」をフリック(内フリック)すると「拒否」の感情を呼び起こします。
様々な単語を被験者にフリックしてもらい、その時の感情価を調べると、外フリックが多い単語を入力するほど「拒否」などのマイナス感情が生まれることが示されました。
一例を上げると、今までの私たちは、「幸福(こうふく)」という文字を見たり書いたりする時には、プラスの感情が生まれていました。ところが、フリック入力では、「う」「ふ」「く」はすべて外フリックなので、マイナス感情を生み出すのです。
文字を書くよりも、スマホでフリック入力をすることの方が多くなる将来、言葉から受ける感情が今までとはちがうものになり、言葉の意味も少しずつ変わっていくのではないか? というのがこの研究です。
以上が、体の動きが脳に影響を与える例です。
このように、姿勢・体の動きと脳の働きは密接に関係しています(続く)。
勉強方法をそのまま教えるだけでは、必ずしも効果があるとはかぎりません。生徒二人以上で教える役と教えさせる役とを交互に行い、それを教師がアドバイスする方法が最も効果がありました(※)。保護者が子供を教える時には、役割を交代をしてやればいいのです。最初から教えた方が時間の節約という気がしますが、それで本当に子供ができるようになればともかく、必ずしも効果があるわけではないのです。
どの科目でも効果がありますが、特に国語の具体的な教え方については「国語はこうやって教える」のつぶやきシリーズをご参照ください(最新記事は5/21)。
※ Palinscar & Brown,1984;Tan et al.,2006;大林他,200;三宮,2008aなど
今までは、思いついたことをつぶやいていたので、整理されていませんでした。
また、2年に渡り、つぶやき続けたので、最初の方を読んでいない方もいらっしゃると思います。
そこで、過去のつぶやきを系統的にまとめ、加筆修正してブログにすることにしました。今日の分はブログに書きましたので、下のボタンからお願いします。
これからは、ここに書いたり、ブログに書いたりになります。ブログに書いたときは、ここで通知致します。
ややこしいですが、今後ともご愛読よろしくお願いいたします。
前回(5/4)の生徒の7日目です。1回の授業は30分。
文章:
大きな岩がどうしてできるのか、不思議に思ったことはありませんか? 実は、地球の真ん中に、熱くてドロドロに溶けた岩のもとがあるのです。これをマグマと言います。マグマのあるところは熱いため、ガスがどんどんたまっていきます。ガスがいっぱいになると、ドロドロの岩のもとといっしょに、すきまから地面に飛び出すのです。それが空中に散らばると雲になります。地面に残ったものは風で冷やされて岩になるのです。
生徒:ガスがいっぱいになると、ドロドロの岩のもとといっしょに、どうなりますか? これでいい?
先生:いいけど、もっとよくできる。「ドロドロの岩のもとは」から始めてみて。
生徒:ドロドロの岩のもとは、ガスがいっぱいになると、どうなりますか?
先生:すばらしい。よくできました。
自分から進んで作るようになり、文中のことばを使って質問することができるようになりました。
※ なぜ問題を作ることが読解力を高めることになるのか、については、何度かつぶやきました(4/19のつぶやきなどをご参照ください)が、この後でも触れるつもりです。
ワーキングメモリは知能の50%を占める働きです(くわしくはは、2020/01/21のつぶやきをご参照ください)。
ワーキングメモリの働きは、モチベーションによっても左右されます。
mastery goal(自分を成長させたいと思うこと。2020/03/09のつぶやき参照)を持つ人はワーキングメモリの機能が促進され、performance goal(自分をよく見せたいと思うこと。同上つぶやき参照)を持つ人はワーキングメモリをあまり使わないことが知られています(Linnenbrink et.all,1999;Avery et. al,2013)。
人によくみられることをモチベーションにするよりも、自分の能力を高めることをモチベーションにするように導いていくことの大切さがここでもわかります。
また、mastery goalとワーキングメモリ、そして数学の成績に関連があることも示されています(Lee et.al,2014)。
問題を見てすぐに選択肢を見る時点で、「自分で考えずに、作成者に考えさせられる」という罠にはまっています。
まず自分で答えを作ってみて、それに近いものを選ぶようにするのが王道ですね。
その上で、選択肢を読むときに、部分に分けて○×△をつけていくとか、極端な言葉がある選択肢は間違いが多いというテクニックを使ってもよいでしょう。テクニックに頼る前に、まずはその1~その3が重要です。
ちなみに、「極端な言葉がある選択肢は間違い」、というのは、次のようなことです。
① 「まったく~ない」「決して~ない」「いつでも~ない」などと、「ゼロ」を表すもの。英語のno-(nothing,never)にあたるもの。
② 「~だけ」「~のみ」「~ばかり」など、「1」を表すもの。英語のonlyにあたるもの。
③ 「すべて」「どれも」「いつでも」「必ず」など、「全」を表すもの。英語のall-,every-にあたるもの。
このような言葉を加えるだけで間違った選択肢を作ることができます。例えば、文中に「日本人はおじぎをする」という表現があっても、「日本人はだれでもおじぎをする」と、③のことばを加えるだけで、間違った選択肢になります。安易な作り方ですが、今でも入試問題に見られるので、知っておいてよいことではあります。
問題を作る立場から言えば、選択肢を作るのが一番難しいのです。試しに作ってみてください。
以下、( )内は読み飛ばしても結構です。
(まず、正解を作ります。そのためには、本文を正しく読めていなければなりません。本文に対して別の解釈が可能ではないか? 正解の選択肢そのものも、別に解釈される可能性がありはしないか? などとチェックする必要もあります。次に、紛らわしい選択肢を作ります。これに対しても、上記と同様なチェックをした上で、最初の選択肢と比べて、本当にこれが間違いと言えるか? ということも考えなければなりません。選択肢は4、5個必要ですから、以下、同様の作業を2、3回繰り返し、最後にすべてを比較して、本当に一つの正解が選べるかを検討しなければなりません。)
これに対して記述問題は作るのが簡単です。どこかを引用して、「理由を答えなさい」とか「この時の気持ちを答えなさい」とすればできあがり。後は生徒が悩んでくれます。穴埋め問題はさらに簡単ですね。
したがって、選択肢問題は作るのに時間がかかるのです。入試問題は一年かけて作るので、それなりに「充実した」選択肢ができあがります。それを解けば練習になります。ただ、あまり早い時期にやらない方がいいですね。前回述べたように語彙力もついていない、精神的にも成長していない段階でやると手に負えません。
注意点としては、塾のテキスト、特にテストの選択肢は時間をかけて作られていません(テストは年に何十も作られている)から、あまり練られていません。簡単すぎる選択肢、どちらでも正解になる選択肢など、穴だらけといっていいでしょう。練習には不向きです。
繰り返しになりますが、まずは語彙力をつけることが重要です。6年生になってから、入試問題を解き始めても十分間に合います。
「二つに分けて○×をつけていく」、「『必ず』など書かれているものはまちがい」などという細かいテクニックはあります。しかし、それだけで難しい選択肢を解くことはできません。
例(洛星中学)
『歯をかみしめ大声を出して』は惇(主人公)のどのような様子を表していますか。
ア 歯をくいしばって、逃げだそうとしている様子
イ 心をはりつめ、勇気をふるいおこしている様子
ウ 走りぬけるために身体に力を入れようとしている様子
エ おそろしさをがまんし、自分をはげまそうとしている様子
答えはエですが、イを選ぶ生徒も多いですね。似ています。「歯をかみしめ」るというのが、「がまんする」という意味だとわかる語彙力が必要になります。
これ以外にも、文中に出てくる表現を、違う言い方にして、正解の選択肢にしている場合があります。文中の表現と選択肢の表現が同じ意味だと判断できる語彙力がやはり必要です。
選択肢は答えやすいと思いがちですが、よく練られた選択肢ほど間違いやすい面があります。「語彙力」という王道は無視できません。
ひたすら教えるだけでも、ひたすら問題を解かせるだけでもありません。わかっていることを教わってもしかたないし、わからないのに問題をあたえられてもどうしようもないからです。
まずその生徒がどこまでわかっているかを把握できる教師がいい教師です。「発達の最近接領域」という考え方があります(Vigotsky,1934)。生徒がまったくわかっていない状態でもなく、すでにわかっている状態でもない、ちょうどその間の、あと少しでわかりそうな状態のことです。この状態を見抜き、ほんの少し背中をおしてやる教師がいい教師です。
前回(4/25)の生徒の4日目です。1日の授業は30分。
文章:
健太の隣の席の女の子は、健太よりずっと背が低い。肌の色は透き通るように白い。空き時間はいつも本を読んでいる。
先生:問題は作れそう?
生徒:…。
先生:何の話だった?
生徒:健太の隣の席の女の子。えーと、健太の隣の席の女の子は……(沈黙)。
先生:いいんじゃないかな。健太の隣の席の女の子について問題を作りたいんだね。じゃあ、その後に「何を」をくっつけてみよう。
生徒:健太の隣の席の女の子は何を空き時間に読んでいますか?
先生:いい感じになってきた。最後の方は「空き時間に何をしていますか」の方がいいかな。言ってごらん。
生徒:健太の隣の女の子は空き時間に何をしていますか。
「いいんじゃない」「いい感じ」などと、常にはげましているところがポイントです。でも、まだまだ先生のリードが必要な段階ですね。
一つの漢字を覚えると、似たような漢字が書けなくなるということはありませんか? 例えば、「検」という字を覚えたら、「険」を使わなければならないときも「検」で書くとか。
あるいは、誤字訂正問題が苦手だということはありませんか? 例えば「構堂で校長の話を聞く」のどこが間違いか、わからないとか(正解は後述)。
これはだれにでもあることで、「検索誘導性忘却」(Anderson et al.,1994)という現象です。一つのことを思いだそうとする時に、(同じカテゴリーに属する))似たようなことを忘れる(※)ことで、一つのことを確実に思い出すために、似たような情報は抑制されてしまうからだと考えられています。
日常生活でも検索誘導性忘却は多いのです。例えば今、コロナウィルス感染症が蔓延していますが、コロナばかりを警戒するあまりインフルエンザの危険性や症状をうっかり見逃してしまう、ということが医師でもよくあることです。
ある病気に対するリスクが高いと知覚すると、検索誘導性忘却(その病気について学習した情報と同じカテゴリーの情報を忘れてしまう)ので、メディアが危険性ばかりを強調することは、かえって悪影響を及ぼす可能性があると、Coman, A., & Berry, J. N. (2015)が警告しています。
それはともかく、漢字に関して、検索誘導性忘却をおこさないためにはどうしたらいいのでしょうか?
一つは、部首の意味を考えた上で覚えることです。例えば、「講堂で校長の話を聞く」の「講」は、校長が「話」をする場所だから、「ごんべん(言)」が付くと覚えればいいでしょう。
しかし、一つ目の例では、「検」と「険」の部首の意味が、今ではわからなくなっています。どうすればいいのでしょうか?
検索誘導性忘却を起こさないためには、深い理解が大切だとされています。
(小林、池田、服部,2014は、あることを覚えるときには、「なぜ」ということを考えることがよいと言っています。彼らは、「貯金」ということばを覚える時に、「どのように」ということを覚える、つまり貯金とはどうすることかとを説明するより、「なぜ」貯金をするのかを説明した方が覚えやすいことを示しています。これは、学習一般について、「なぜ」ということを考える「深い理解」が有効であることを示唆するものです。
したがって、「検」と「険」の違いも、「深い理解」を伴う勉強の仕方が必要になります。例えば、例文と一緒に覚えるとか、二つの漢字を比較しながら同時に覚えるなどという勉強の仕方が有効です。
また、Ikeda et al.,2015)の研究では、mastery goal(自分を成長させたいと思うこと。2020/03/09のつぶやき参照)を持つ人は、performance goal(自分をよく見せたいと思うこと。同上つぶやき参照)を持つ人よりも、「検索誘導性忘却」が起こりにくいことが確かめられています。
これは、mastery goalは能力を発達させることなので、広い意味での学習が促進され、performance goalは競合する情報の処理をしなかったり抑制したりすることで、学習を行う(つまり、余分なことを考えないで一つのことだけを学習する。例えば、何回も書くなど)傾向があるからだと考えられます。
漢字を何回もひたすら書くという学習法がよくないことはここからもわかります。
※ 正確には、「ある項目を思い出そうとすると、(同じカテゴリーの)それに関係した別の項目が思い出しにくくなる」。
なぜ日本人が英語をはなせるようにならないのか。そのことについて説得的な動画がありましたのでご紹介します。東大教授の安富歩さんです。
その5(日本を知ることが大切)やその3(結果的に無駄になる)で述べたことなどが、別の視点からわかりやすく解説されています。
※ 前回までについては2020/04/08のつぶやきをご参照ください。
今日は思わぬところで昔の生徒を見つけたので紹介します。
小学校3、4年生のころ、ある一斉授業の塾で教えていた子です。勉強もできたのですが、やさしい子でしたね。
黒板にテキストの文章を写す時もあります。テキストを見、黒板を見ながら字を書き、さらに生徒達の様子や反応を見るという三つの作業は案外大変なんです。
一番前にすわっていたその子は、それを察したか、私に聞こえる程度の小さな声でテキストを読んでくれました。
困っている人を見たら、自然に手をさしのべる子でしたね。
名前は中山まりあさんと言います。
女優をやっていることにさっき気づきました。Facebookを見ると、今でもそのやさしさをもっていらっしゃることがわかります。よろしければ応援してあげてください。
※ 生徒列伝3…勉強法ー今日のつぶやき―backnumber4(2019/4/10)
生徒列伝2…勉強法ー今日のつぶやき―backnumber3(2018/10/23)
生徒列伝1…勉強法ー今日のつぶやき―backnumber2(2018/9/23)
今日は、「問題を作ってもらう」実例を挙げてみましょう。Palinscar & Brown(1982)から取りました。生徒と文章は3年生レベル(のやや下位)で、自分で質問を考えることができない生徒をとりあげています。
文章:
マムシより少し大きいヘビで、サンゴヘビというのが、アメリカの南東あたりのぬまに住んでいます。サンゴヘビは、マムシやガラガラヘビと同じように毒(どく)を持っていて、このような毒ヘビをまとめてクサリヘビとよんでいます。なぜクサリヘビというかというと、どのヘビも目や鼻に一本のクサリのようなたての線が入っているからです。このようなヘビは、動物が近くにいると、その体の温度を鼻で感じ取ることができます。サンゴヘビは「綿口(わたくち)」とも言います。口に綿のような白い線があるからです。
生徒:「南東のヘビやマムシやガラガラヘビは、毒……持ってる…。クサリヘビ? 。」
先生:「じゃあ、クサリヘビについて知りたい?」
生徒:「うん。」
先生:「じゃあ、クサリヘビのことを何か、聞いてみて(質問を作ってみて)。」
生徒:「…。」
先生:「じゃあね、『なぜこのようなヘビはクサリヘビとよばれるのか』でどう? 言ってごらん。」
生徒:「なぜこのヘビはクサリヘビと…」
生徒:「その調子。なぜこのようなヘビはクサリヘビとよばれるのか」
生徒:「なぜこのようなヘビはクサリヘビとよばれるのか」
先生:「そう。そんな感じでやってみよう」
生徒がわからないところについて、生徒が先生が「知りたい?」などと興味をひくような言い方をしている点。最初は先生が見本を示している点。すぐにできなくても、少しずつ進歩すればほめている点は、参考になります。これが、2回目の授業。この生徒が後にはかなり進歩します。その例はまた別の日に。
その12(2020/04/11)では読んで質問がなくなったら「続きを想像してもらう」、その13(2020/04/18)では読んで質問がなくなったら「要約」してもらうでした。もう一つのやり方があります。それは、読んで質問がなくなったら「問題を作ってもらう」ことです。
この3つは、どれから先にやってもかまいません。いずれも目的は「文章をきちんと読んでもらう」ことにあります。前にも述べましたが、きちんと読んでいなければ、上の3つは出来ないのです。
単に「きちんと読みなさい」と言うだけではどのようにしてよいかは本人にわかりません。後でこのような作業をすることによって、「きちんと」読むことが学べます。
文章に問題を付けない理由の一つもここにあります。問題をつけると、答えを出すことが優先されて、文章は問題の答えをさがすための場所という扱いになってしまいます。これでは本末転倒です。
何のために文章を読むのかということを考えるべきです。それは、文章を読んで何かを考えたり何かを得たり楽しんだりするためです。けっして答えを出すために読むという近視眼的な目的で読むのではありません。入試問題をだす学校も、文章をきちんと読める生徒を求めているはずです。
また、こうして文章を「きちんと」読むことによって、結果的にも入試問題などの答えも出やすくなるのです。問題をやるのはきちんと文章を読めるようになってからで十分間に合います。むしろその方が早道です。
読んだ内容で質問が無かったら、その内容「要約」してもらいます。その12では、読んだ内容で質問が無かったら「続きを想像」してもらうのでした。これはどちらが先でもかまいませんが、「要約」が先の方がいいかもしれませんね。
「要約」の目的は、やはり「ちゃんと読んで」もらうことです。読めていなかったら要約できません。
「要約」の内容は、あまり堅苦しく考えないようにしてください。大体こういうことが書いてあったということが言えれば、よしとします。具体的な例は、次のつぶやきで示したいと思います。
また、口頭で行ってください。「書く」ことは負担が増えるので、やらない方が無難です。入試を受ける人でも、「書く」練習は直前の1年を切ってからでも、正しいやり方で十分間に合います。むしろその方が効果的です(※2)。早く始めると、子どもはコスト感を感じるので、むしろ逆効果の場合があります。
※1 その12は2020/04/11のつぶやきをご参照ください。
※2 正しい、効果的なやり方については、別のつぶやきにあらためます。
教わった直後のテストで出来る(直後再生)のと、時間が経ってからのテストで出来る(遅延再生)のとの、どちらかを選べと言われたら、時間が経ってから出来る方を選びますよね。直後にできても、時間の経過とともに忘れてしまっては意味がありません。
Murayama & Elliot(2011)の研究では、performance goal(自分をよく見せたいという気持ち。3/9,4/5など参照)が強い人(生徒)は「直後再生」、mastery goal(自分の能力を高めたいという気持ち)が強い人は「遅延再生」に関係します。
つまり、「自分の能力を高めよう」という気持ちを持つほど、時間がたってからのテスト成績がよいということです。自分をよく見せたい」という気持ちが強い人は、その場ではよくても、後でいいとは限らないのです。
教師の間では、その場の反応がいい生徒は信用できない(時間が建ってからのテストがよくない)という暗黙の了解もあります。
直感的にもわかりますね。その場の反応や「直後再生」がいいと、教師や周りの生徒に対して「自分をよくみせる」ことがしやすいでしょう。一方、「自分の能力を高めよう」という生徒は、教わった後、脳内で内容をじっくり消化しようとすることが考えられます。
mastery goal(3/9参照)を持つ大切さがわかります。
入試に使われる文章は使い回しされているのが現状です。ある学校で使われた文章が別の学校で使われるということが頻繁にありますし、よく使われる、はやりの文章というのもあります。例えば東大寺で使われた文章が翌年洛星で使われた、ということもありました。
好意的に見れば、入試にふさわしいと考えた文章がたまたま一致したとも言えますが。
特に、入試の前に受ける「前受け校」ではこの傾向が強いようです。図式として、一流校で出された文章を二流校が使う、という傾向があります。
したがって、その年の入試問題を広くよめば、次に出されやすい文章はある程度予想できます。家庭で入試問題を集めるのは大変ですが、その年に出版される「電話帳」と呼ばれる全国の入試問題集を買えばいいでしょう。
問題をやる必要はありません。それは塾でさんざんやっていることです。
国語の力をつける最も確実な方法の一つはいろいろなやり方を組み合わせることです(※NRP4-39)。入試問題集については、文章を読むだけでいいでしょう(できればここで推奨している方法で)。翌年の入試で、あ、これやったという問題に当たるはずです。
その年の入試問題集を買うことには、新しい題材と話題に触れられるという利点もあります。塾のテキストは、毎年改訂するわけではありませんから、どうしても入試問題よりも話題が古くなります。その年の入試問題集で新しい題材に触れておけば、それだけでも有利になります。
※National Reading Panel(国語力を科学的に研究したレポート。ネット上で無料公開されている。)
その11の続きです。読んだ内容で質問がなかったら、その続きを想像してもらいます。
これは逆に考えてもいいですね。続きが想像できなかったら、そこまでが読めていないということです。
よく、子どもに「ちゃんと読みなさい」と言いますが、「ちゃんと」とは、どうしたらいいのか、子どもは困ってしまいます。読んだ後で続きの想像を促すことをくり返すことによって、「続きが想像できるように読む」ことが「ちゃんと」読むことだとわかります。
また、続きを想像することは、アクティブな行為でもあります。単に問題をやるという受動的な行為よりも楽しいし、子どもの精神な成長を促します。
※ その11は、2020/04/04をご参照ください。
読書の習慣をつけ方はただ一つ、物語の「さわり」を、正しい方法で一緒に読むことです。
(以下の①、②、④では、「読んでいるときにわからないことばがないかを聞いて」あげましょう。)
① 題を読んで、どんなお話かを、保護者と子どもで想像する。
② 「さわり」の「最後の文」を読んで、どんなお話かを、保護者と子どもで想像する。
③ 「キーワード(3回以上でてくることば)」があれば、そのことばについて保護者と子どもで話し、想像をする。
④ 読む。読み聞かせもいいですね。
⑤ 続きを、保護者と子どもで想像する。
(『くちぶえ番長』のように三つに分けられている場合は、①~⑤を三回くり返す。もちろん、一度に全部読んでもかまいません。)
⑥ 興味がありそうなら、その本を借りたり買ったりしてあげる。
メモ帳(ルビあり版)
1
「学校が終(お)わったら、サッカーやろうぜ」
タッチにさそわれたけど、「ごめん・・・・・・」とことわった。
「帰りに熊(くま)野(の)神(じん)社(じや)によって、ドングリひろわない?」
ジャンボのさそいも、「悪(わる)い、オレ、ダメだから」とことわった。
学校が終(お)わったらまっすぐ家に帰るよう、ママに言われていた。遊(あそ)びに出かけるのも禁(きん)止(し)。でも、たとえママになにも言われなかったとしても、より道をしたり遊(あそ)んだりする気にはなれなかった。
だって・・・・・・ワンが死(し)んじゃうかもしれない。
わが家の愛(あい)犬(けん)、というより家(か)族(ぞく)の一(いち)員(いん)のワンは、先週からずっと台(だい)所(どころ)のすみで毛(もう)布(ふ)にくるまっている。もう起(お)き上(あ)がることはできない。昨日(きのう)、往(おう)診(しん)に来た獣(じゆう)医(い)さんは、「あと一日か二日でしょう・・・・・・」とぼーっと言っていた。
ワンは九月に十四歳(さい)のたんじょう日をむかえた。人間で言うなら、すごいおじいちゃんだ。六月ごろから散(さん)歩(ぽ)に出かけられなくなり、十月になるとほとんどほえなくなった。パパとママが相(そう)談(だん)して、庭(にわ)にある小(こ)屋(や)から家の中に移(うつ)したのは、先週――十一月になって間もなくのことで、「ツヨシ、ワンはもうすぐ天国に行っちゃうよ」とパパが言ったのも、そのころだった。
これは寿(じゆ)命(みよう)なんだから。ワンは長生きしたんだから。生(い)き物(もの)はみんな、いつかは死(し)んじゃうんだから、しょうがないんだよ……。
アタマではなっとくしていても、ココロがおさまらない。
ぼくが生まれる前から、ワンはわが家にいた。ってことは、ぼくはずーっとワンといっしょに毎日を過(す)ごしてきたってわけで、そんなワンがいなくなるなんて……。
泣(な)くしかないじゃないか。
熊(くま)野(の)神(じん)社(じや)により道をするジャンボたちと校門の前で別(わか)れて、一人でとぼとぼと帰っていたら、後ろから背(せ)中(なか)をたたかれた。
2
「前向(む)いて歩かないと、車にはねられちゃうよ」
ふり向(む)くと、マコトが笑(わら)っていた。いつものように、ちょっとスネたような、どーでもいいけどさ、という笑(え)顔(がお)だったけど……今日は不(ふ)思(し)議(ぎ)と胸(むね)にジンとしみる。
「ツヨシ、どうしたの?今日、朝から元気なかったけど」
「……そんなことないよ」
「ウソだね。ずっと、悲(かな)しそうにしてたでしょ。窓(まど)の外ばっかり見てて、給(きゆう)食(しよく)ものこしたし」
びっくりするぐらい、よく見ている。これも番長の仕(し)事(ごと)だから、なのかな。
「なにかあったの?」
「べつに……」
「もしかして、いじめられてるとか?」
「そんなのじゃないよ」
「じゃあ、なに?」
こっちの沈(しず)んだ気(き)持(も)ちなんておかまいなしだ。でも、それで逆(ぎやく)に少し気が楽になって、学校の友だちにはナイショにしていたワンのことを話した。
すると、マコトは急(きゆう)におっかない顔になって、ぼくの背(せ)中(なか)に回った。
「ランドセル、貸(か)して」
「え?」
「いいから、早く貸(か)して! あとで家に持(も)って行(い)ってあげるから、ダッシュで帰んなきゃ!」
無(む)理(り)やり、ランドセルを降(お)ろされた。
「ちょっとでも長くワンと一(いつ)緒(しよ)にいてあげなきゃ! ほら、早く帰って!
ダッシュ!」
あわててかけだしてから、思った。
マコトは、いま、亡(な)くなったお父さんのことを思いだしたんだろうか。あんなにあせって、怒(おこ)ったように「早く帰って!」って言ったのは、マコト自(じ)身(しん)の悲(かな)しみや、ひょっとしたら後(こう)悔(かい)から―――なんだろうか……。
3
台(だい)所(どころ)にはパパとママがいた。ママはワンの背(せ)中(なか)を優(やさ)しくさすって、パパは、そんなママの肩(かた)にそっと手をおいていた。
「ねえ、パパ。会社休んだの?」
「ああ……ワンが天国に旅(たび)立(だ)つところ、ちゃんと見(み)送(おく)ってやらないと……ワンってほら、さびしがり屋(や)の甘(あま)えん坊(ぼう)だったからな」
メガネの奥(おく)のパパの目は、もう真(ま)っ赤(か)になっている。
「ツヨシも背(せ)中(なか)をさすってあげて。ワン、がんばってるんだから」
ママの声も、涙(なみだ)交(ま)じりだった。
ぼくはだまってしゃがみこみ、ワンの背(せ)中(なか)をなでた。昔(むかし)はフサフサしていた白い毛も、いまはだいぶ抜(ぬ)け落(お)ちてしまった。散(さん)歩(ぽ)をするとくさりをぐいぐい引(ひ)っ張(ぱ)っていたたくましい体も、もうすっかりやせ細って、ひとまわりもふたまわりも縮(ちぢ)んでしまったみたいだ。
ワン――。
ぼくのアルバムには、ワンと一(いつ)緒(しよ)に写(うつ)った写(しや)真(しん)がたくさんある。赤ちゃんのぼくがワンの顔を見て泣(な)いている写(しや)真(しん)が、いちばん古い。いちばん新しい写(しや)真(しん)は四年生に進(しん)級(きゆう)したときの一(いち)枚(まい)で、それが最(さい)後(ご)になってしまうんだろう。
ワン――。
犬なのに寒(さむ)がりで、雪が降(ふ)ると小(こ)屋(や)の中からちっとも出てこなかった。おみそ汁(しる)をかけたごはんが好(す)きだった。『当(あ)たり屋(や)』でぼくがお菓(か)子(し)を買ったりクジを引いたりしている間、ガードレールにつながれたまま、おとなしく待(ま)ってくれていた。
死(し)なないでよ、ワン。
もっと……もっと、もっと、もっと……一(いつ)緒(しよ)にいたいよ……。
(重(しげ)松(まつ) 清(きよし)「くちぶえ番長」より)
メモ帳(ルビなし版)
1
「学校が終わったら、サッカーやろうぜ」
タッチにさそわれたけど、「ごめん・・・・・・」とことわった。
「帰りに熊野神社によって、ドングリひろわない?」
ジャンボのさそいも、「悪い、オレ、ダメだから」とことわった。
学校が終わったらまっすぐ家に帰るよう、ママに言われていた。遊びに出かけるのも禁止。でも、たとえママになにも言われなかったとしても、より道をしたり遊んだりする気にはなれなかった。
だって・・・・・・ワンが死んじゃうかもしれない。
わが家の愛犬、というより家族の一員のワンは、先週からずっと台所のすみで毛布にくるまっている。もう起き上がることはできない。昨日、往診に来た獣医さんは、「あと一日か二日でしょう・・・・・・」とぼーっと言っていた。
ワンは九月に十四歳のたんじょう日をむかえた。人間で言うなら、すごいおじいちゃんだ。六月ごろから散歩に出かけられなくなり、十月になるとほとんどほえなくなった。パパとママが相談して、庭にある小屋から家の中に移したのは、先週――十一月になって間もなくのことで、「ツヨシ、ワンはもうすぐ天国に行っちゃうよ」とパパが言ったのも、そのころだった。
これは寿命なんだから。ワンは長生きしたんだから。生き物はみんな、いつかは死んじゃうんだから、しょうがないんだよ……。
アタマではなっとくしていても、ココロがおさまらない。
ぼくが生まれる前から、ワンはわが家にいた。ってことは、ぼくはずーっとワンといっしょに毎日を過ごしてきたってわけで、そんなワンがいなくなるなんて……。
泣くしかないじゃないか。
熊野神社により道をするジャンボたちと校門の前で別れて、一人でとぼとぼと帰っていたら、後ろから背中をたたかれた。
2
「前向いて歩かないと、車にはねられちゃうよ」
ふり向くと、マコトが笑っていた。いつものように、ちょっとスネたような、どーでもいいけどさ、という笑顔だったけど……今日は不思議と胸にジンとしみる。
「ツヨシ、どうしたの?今日、朝から元気なかったけど」
「……そんなことないよ」
「ウソだね。ずっと、悲しそうにしてたでしょ。窓の外ばっかり見てて、給食ものこしたし」
びっくりするぐらい、よく見ている。これも番長の仕事だから、なのかな。
「なにかあったの?」
「べつに……」
「もしかして、いじめられてるとか?」
「そんなのじゃないよ」
「じゃあ、なに?」
こっちの沈んだ気持ちなんておかまいなしだ。でも、それで逆に少し気が楽になって、学校の友だちにはナイショにしていたワンのことを話した。
すると、マコトは急におっかない顔になって、ぼくの背中に回った。
「ランドセル、貸して」
「え?」
「いいから、早く貸して! あとで家に持って行ってあげるから、ダッシュで帰んなきゃ!」
無理やり、ランドセルを降ろされた。
「ちょっとでも長くワンと一緒にいてあげなきゃ! ほら、早く帰って!
ダッシュ!」
あわててかけだしてから、思った。
マコトは、いま、亡くなったお父さんのことを思いだしたんだろうか。あんなにあせって、怒ったように「早く帰って!」って言ったのは、マコト自身の悲しみや、ひょっとしたら後悔から―――なんだろうか……。
3
台所にはパパとママがいた。ママはワンの背中を優しくさすって、パパは、そんなママの肩にそっと手をおいていた。
「ねえ、パパ。会社休んだの?」
「ああ……ワンが天国に旅立つところ、ちゃんと見送ってやらないと……ワンってほら、さびしがり屋の甘えん坊だったからな」
メガネの奥のパパの目は、もう真っ赤になっている。
「ツヨシも背中をさすってあげて。ワン、がんばってるんだから」
ママの声も、涙交じりだった。
ぼくはだまってしゃがみこみ、ワンの背中をなでた。昔はフサフサしていた白い毛も、いまはだいぶ抜け落ちてしまった。散歩をするとくさりをぐいぐい引っ張っていたたくましい体も、もうすっかりやせ細って、ひとまわりもふたまわりも縮んでしまったみたいだ。
ワン――。
ぼくのアルバムには、ワンと一緒に写った写真がたくさんある。赤ちゃんのぼくがワンの顔を見て泣いている写真が、いちばん古い。いちばん新しい写真は四年生に進級したときの一枚で、それが最後になってしまうんだろう。
ワン――。
犬なのに寒がりで、雪が降ると小屋の中からちっとも出てこなかった。おみそ汁をかけたごはんが好きだった。『当たり屋』でぼくがお菓子を買ったりクジを引いたりしている間、ガードレールにつながれたまま、おとなしく待ってくれていた。
死なないでよ、ワン。
もっと……もっと、もっと、もっと……一緒にいたいよ……。
(重松 清「くちぶえ番長」より)
(① 題を読んで)
「『番長だって。知ってる?」
「知らない。」
「『長』は、『班長』とかの『長』だよ。」
「じゃあ、何か、偉いの?」
「そうかもね。それで、『番』は「当番」の『番』だよ。」
「じゃあ、何か当番したり、集めたりする感じかな。」
「うん。クラス委員みたいに、みんなをまとめたりする人のこと。」
(② 最後の文を読んで)
「『もっと……一緒にいたいよ……。』だって。だれかと一緒にいたいのかな?」
「『ワン』」
(その前も読んだのだな…)「そうだね。『ワン』って、何だろうね。」
「イヌじゃないかな。」
「そうだねえ。じゃあ、イヌと一緒にいたいのかな? イヌはどうなっちゃうんだろう?」
「死ぬのかも。」
「そうかもしれないね。じゃあ、最初から読んでみようか…。」
こんな感じでやってみるのがいいかもしれません。
「英語が話せるほど馬鹿」と言ったのは中野好夫です。
① 白人に対する劣等意識の裏返し。英語が話せるという優越感。
② 日本語、日本文化をよく知らなかったり、軽視したりしている。
以上のような主旨だったと思います。
②について。英語を勉強するということは、英語圏の文化を知るということです。その前に自国の文化を知っていることが前提になります。自国の文化を知っているからこそ、対比的に英語圏の文化がわかるということもあります。
エリートクラスの外交官やCEOの会話では、日本文学(源氏物語や村上春樹等々)について質問が飛び交うそうです。日本人としての教養が身についていなければ、恥ずかしいだけでなく、仕事に差し支えるかもしれませんね。
小中高は思い切り読書できる時期、基礎的な教養を身につけ読書の習慣を身につける時期です。かたことの英語をもてあそぶよりも読書の時間に充てる方がよいかもしれません。
※ その4は2020/03/24をご参照ください。
要領がいい子(人)というのがいます。うまく人(やもの)を使い、自分は最小限の努力で済まそうとする。この子は「幸せ」になれるでしょうか?
もちろん、いちがいに言うことはできません。ただ、興味深い研究(Wormington & Linnenbrink-Garcia,2017)があります。
要領がいい、というのは「自分の能力を高めようとせず、最小限の努力で済まそうとする」ことで、work avoidance goal(work avoidance 目標)と言います(※)。
研究では、
① 自分の能力を高めようとせず、最小限の努力で済まそうとする気持ち(work avoidance goal)
② 自分の能力を高めたいという気持ち(mastery goal)(3/9のつぶやき参照)
③ 自分をよく見せたいという気持ち(performance goal)(3/9のつぶやき参照)
個人についてこの三つを測定、メタ分析すると、
①と③の「低い」人が「適応的(社会にうまく適応していけること)」でした。「要領はよくないが、努力をいとわず、人にどう見られるかを気にしない」、コツコツ職人タイプと言えます。この結果はこれまでの日本人の道徳観にも一致しています。
つまり、要領がいい子(人)というのは、案外「幸せ」になりにくいのです。
ちなみに、①~③すべてが平均的な人は「不適応的」でした。これは、逆に、「なんでも人並みに」というこれまでの日本人の道徳観に一致しません。保護者としては、子育ての時に考えるべきポイントと言えます。
また、最も適応的だったのが、②と③が高いタイプ。「自分を高め、そのことを人に見せたい」自信家と言えます。
外国の研究なので、文化の違いを考えると、うのみにすることはありませんが、考えさせられる研究と言えます。
※ Nicolas et al(1985)の用語。
ずいぶん遠回りしました。「子どもに文章を読ませてわからないところがあるかどうか聞く」(その7 2020/03/16)の続きです。
読ませる文章は2,000字程度。中学年のテスト問題の長さです。
書かせるのは負担が大きすぎて、嫌気がさすので避けましょう。もっとレベルが上がってからの話しです。
質問の仕方は、「だいたいどんなことが書いてあったか、教えて?」あたりがいいでしょう。
答えが要約として短すぎたり足りなかったりするときは、「もう少しくわしく」。逆に、要約として長すぎるときは、「もう少し簡単に」と指示します。
まったく答えられないときは、無言の時は、ヒントを与えてもいいでしょう。「だれが出てきた?」「何の話しだった?」など。
苦手そうな子は、最初は物語の方がいいでしょうね。
まとめてもらう目的は、「きちんと読んでもらうこと」にあります。読めてなかったら、まとめられませんからね。
国語が苦手な子は、ほぼ確実に「きちんと読んで」いません。きちんと読めれば問題も解けるのです。まずは内容を読み取ること、ここからスタートするのが早道です。
問題のない素の文章を読む理由の一つもここにあります。問題があると、どうしても解くことに気が行って、文章を「きちんと」読んでいないことが、ほとんどの場合、テストで点が取れないことの大きな原因です。
※ その10は、2020/04/03をご参照ください。
その2(2020/03/02)、その8(2010/03/23)の補足を少し。
「なかなか読書しない」という声を聞きます。実は上のつぶやきで述べた、「表題、最後の文、キーワード探し」は、子どもが読書をするようになる唯一の方法でもあるのです。
ただし、楽しみのために、「最後の文」だけは読まないようにしましょう。
まず、その8のように「表題を読んでお話しをする」ことが最も大切です。そのことによって子どもの興味を引き、文章についての脳内の予備知識を引き出し、理解しやすくなります。
そうして、「キーワード探し」をしながら、さわりのところを読ませれば、「この続きはどうなるの?」と子どもは聞いてきます。そこで、続きを読んでもらえばいいのです。
読んでもらう部分は、本の最初でなくてもかまいません。興味をひく部分をうまく選べば、自然と読書するようになります。
逆に、いくらいい本を与えても、子どもが興味を持たなければ決して読むようにはなりません。
読書の習慣がつけば、自然と国語ができるようになります。
※ その9は2020/03/27のつぶやきをご参照ください。
入試に出る言葉1000などという題の本がたくさん出ています。 二冊を手にとって索引を比べると、片方にあって片方にないことばがいくらでも出てきます。これでは、どちらかが間違っていることになります。(索引のない本もありますが、これは問題外ですね。)
前にも触れましたが、データベースが示されていないので、どのようにして選んだかがわかりません。「全国の入試問題から選んだ」とのみ書かれている本が一冊ありましたが、15年前に出版されたもので、いまでも内容がかわっていませんでした。また、販売はされていませんが、今でも使われているある塾の難語集は、20年前の入試問題集の解答からピックアップしたものです。
また、「対照」のような熟語と、「いたわる」のような和語をいっしょくたにして載せている本がほとんどです。熟語を載せると、その分載せなければならない和語が減ります。結果的に載っていない和語が増えます。熟語の意味は類推しやすい(※2)から、和語を中心に載せるべきですね。
買ってもいいかなと思われる本は、漫画・イラスト・絵が豊富な本ですね。「イメージ効果」が期待できるので、覚えやすくなります。一つの言葉に一つの絵が載っているのが理想ですが、できるだけそれに近いものがいいです。
もちろん、始めに述べたように、これで完璧というわけではありません。
※1 その1は、2019/07/20(勉強法―今日のつぶやき―back number4)をご参照ください。
※2 2020/03/10のつぶやきなどをご参照ください。
○上記の本を差し上げます。レビューと写真は2020/03/26をご参照ください。
○アマゾンの中古品ですが、2020/03/17に届いたときはほぼ新品で、カバー・帯もついています。
○角に折り目跡が10カ所あります。
○書き込み後(20字程度。消してある)が一カ所あります。
○4月10日締め切りで、先着一名様です。
○問い合わせフォームからご連絡ください。
○着払いでお願いいたします。
読売新聞三月二十八日朝刊に興味深い記事がありました。
『東大読書』の著者である、東大四年生の西岡氏(24)は、高校2年の時、全国模試の偏差値が35だったそうです。「日本語を知らないと英単語が覚えられない。」例えば、suggestの意味を調べると、「示唆する」とでてきます。ところが、「『示唆』の意味がわからず『suggest』が頭に入ってこない」と言っていました。
その後西岡氏は、「多くの本を読んで語彙を増やすなどし、2浪の末に東大合格を果たした」そうです。
この記事を読んで、大学でフランス語を学んだ時のことを思い出します。
仏仏辞典(フランス語の意味がフランス語で説明されている辞典)で調べるのですが、あるフランス単語を引いても、説明の中に出てくる別のフランス単語がわからず、それを引く。すると、またその単語の説明に使われているフランス単語がわからず…といつまでも続くようなことが時にありました。
私の場合、フランス語の語彙力が乏しい(あるいは頭が悪い)ので仕方がありません。しかし、東大に入れるほど頭のいい日本人が、日本語の説明を読むときに、このようなことがおこるとは、国語力の崩壊もここまできたかの感があります。
「示唆」を例にとると、「示」は「示す」の意味で、小学校で習います。「唆」は小学校では習いませんが、「くちへん」であることはわかります。したがって「示唆」とは、「口で何かを示す」ことだと考えることができれば、もう少し覚えやすいのではないでしょうか。これについては、2020/03/10のつぶやきなどでも触れています。
漢字の正しい勉強法は、何回も書くことではありません。それは、100年以上前の行動主義心理学の考え方です。現代の認知心理学では、意味を考え、それを使った言葉を思い出し、自分を主語にした文を作成し、場面をイメージすることとされています(※)。
(なぜ100年以上前の考え方で今でも教えられているのか。それについては項を改めたいと思います。)
もしかしたら氏も、小学校の時から、考えるよりも何回も書いて覚える式の勉強を教えられてきたのかもしれません。
正しい漢字の勉強をする必要性を改めて感じさせられる記事でした。
※ 2018/11/01(勉強法?今日のつぶやき―back number2)などをご参照ください。
以下の点が優れています。
① 3章の、「論説文の読み方」で、「二元論(※2)」を使うことを進めています。別の本(※3)でも取り上げられていますが、この本の「プラス」と「マイナス」という視点は、子どもにとってわかりやすいものです。学習塾でこの教え方をしている教師もいます。
② 4章で、物語のパターン(※4)のいくつかを、こどもにとってわかりやすく説明しています。
③ 3章のcokumn「~熟語の意味も推測」は重要な視点です(※5)。
子どもにわかりやすく教えることに興味をお持ちの方は、買ってみてもいいでしょう。
もろろん、この本ですべてが教えられるというわけではありません。
※1 その1は2020/03/03をご参照ください。
※2 「二項対立」。「対比」。詳しくは、2019/01/27,2019/03/19(勉強法-今日のつぶやき-back number3)をご参照ください。
※3 『和田吉弘『国語授業の実況中継―中学入試(上)(下)』など。
※4 物語のパターンについては、2019/12/14「物語文法」をご参照ください。「物語文法」については、現在つぶやき中の「国語はこうやって教える」シリーズでくわしく触れていく予定です。
※5 熟語の意味の推測については、2020/03/10をご参照ください。
教える側にとっての問題もあります。現在でも同じ先生が複数の教科を教えています。英語を増やしてもその分だけ教師がふえるわけではありません。結局教師の負担が増えるでしょう。あるいは、一つ一つの教科を準備する時間が減ることになり、学習内容が薄くなるでしょう。
これまでにも触れましたが、英語で会話ができるようになるには、集中して学習する時間と専門のトレーニングが必要です。忙しい小学校の先生にそのような専門性を求めるのは無理だという点も挙げなければなりません。
また、英語の学習を増やせば、国語や算数の時間が減ることになるでしょう。その分、漢字が書けない、計算ができない子が増えることになります。今ですら、分数計算のできない大学生が増えているのです。この傾向に拍車をかけることになります。
この点については、次回でも触れます。※ その3については、2020/02/08のつぶやきをご参照ください。
少し、戻ります。
国語はこうやって教える その2(2020/03/02)で、表題、最後の文、キーワード探しを最初に行うと書きました。その理由として、「文章についての予備知識を脳内から引き出し、文章を理解しやすくするため」ということを挙げました。もう一つの重要な理由も挙げておきます。
それは、「読むことを楽しむため」です。
なかなか本を読まないと嘆かれる保護者の声を聞くことがあります。やはり楽しくないからですね。同様に、問題文を読めと言われるだけでは、子どもは楽しくありません。
最初に表題を一緒に読みます。
「『口ぶえ番長』(※2)って何だと思う?」
「番長って?」
「リーダーみたいなものかな。クラスをまとめるっていうか。」
「クラス委員?」
「ちょっと似てるけど、選挙で選ばれたり、先生に言われたりしてするのでなく、なんとなく自然にみんながその子をたよりにしてるっていうか。クラスにそんな人いない?」
「うーん…。いるかな。その人はくちぶえを吹くの?」
「どうだろう。じゃあ、読んでみようか?」
こんな風に会話をしてみるのが最初のうちはおすすめですね。そうすることによって、「文章についての予備知識を脳内から引き出し、文章を理解しやすくする」ことと、「読むことを楽しむ」ことができます。楽しく読めば、集中力が上がり、自然と読解力、語彙力が上がります。
※1 その7は2020/03/16をご参照ください。
※2 重松清の作品
問題を再掲します。
文章 「…Aが廊下を通った。そのとき、BがAを呼び止めた。それは…」
問題 「『それ』はどんなことを指していますか。『こと。』をふくめて20字以内で答えなさい」
① Aが廊下を通ったとき、BがAを呼び止めたこと。(23字)
子どもは、とりあえず①のようにはできるのですが、その後どうするか、ということでした。
前回(②~⑥)はずいぶん苦労しましたが、
⑦ 廊下を通ったAをBが呼び止めたこと。(18字)
とすると簡単です。「Aが廊下を通った」を「廊下を通ったA」と、ひっくり返すことによって、
5字分短くなります。
自力でできる子は、ごくまれです。だからこそ、教えておくと、字数制限のある記述問題では大きな武器になるのです。
字数制限のある記述問題問題がよくあります。
例えば、
「…Aが廊下を通った。そのとき、BがAを呼び止めた。それは…」という文に対して、
「それ」はどんなことを指していますか。「こと。」をふくめて20字以内で答えなさい、という問題があったとします。
子どもは、次のように考えることが多いですね。
① Aが廊下を通ったとき、BがAを呼び止めたこと。(23字) 「多いな…。「、」を省こう。」
② Aが廊下を通ったときBがAを呼び止めたこと。(22字) 「うーん。『とき』を漢字に変えると…。」
③ Aが廊下を通った時BがAを呼び止めたこと。(21字) 「あー、もう無理。『こと』を漢字にしてしまえ!」
④ Aが廊下を通った時BがAを呼び止めた事。(20字) 「これでいいか…。さて、次次!」
と、みごとに指示(『こと。』をふくめて)に背き、減点されたりします。
少し気の利いた子どもなら、③から、
⑤ Aが廊下を通る時BがAを呼び止めたこと。(20字)
あるいは、
⑥ Aが廊下を通った時Bが呼び止めたこと。(19字)
という答案を作ります。
これはこれで立派です(※)。
しかし、もっと楽に書く方法もあるのです(続)。
※ ⑤は、「述語の進行形が、連体修飾語に書き換えられる時は、現在形を用いてよい」という文法を使っています。
⑥は、「同じことばを、近くに二度くり返さない」というテクニックを使っています。
作者が話しているのか、主人公が話しているのかの区別がついていない場合がまれにあります。6年生でもこのケースが一度ありました。そのため、場面を正確に把握できず、読み取りが間違ってしまいます。これは、「心の理論」(※)と呼ばれる認識の仕方が、まだ十分に発達していないことと関係があると考えられます。
登場人物がでてきた時、
① 「わたし(ぼく)は」と書かれている場合→「わたし(ぼく)」が話している。
② 「一郎は」などと、名前で書かれている場合→「作者」が話している。
①と②のように区別することを教えてあげれば、理解が深まります。
たいていの子どもは無意識のうちにこの区別をしていますが、物語が苦手な子どもにまれに見られるケースです。
※ 心の理論(thoey of mind,TOM) …自分の考えと他人の考えが区別できること。幼児から少年時代にかけて徐々に発達する。
Co.慶応(コーケイオー)というユーチューバーが、音楽とラップ、語呂合わせと映像で、暗記物の覚え方を配信しています。そもそもラップは脚韻のことで、、ホメロス、ダンテ、シェークスピア等々伝統的な詩人、作家達につながるものでもあります。認知心理学的にも、イメージと音声の効果をうまく使っていると言えます。アドレスは以下の通りです。https://www.youtube.com/channel/UCnT42GUUPYTKvBMCZ22a8lw
社会と理科の覚えにくいところは、使ってみるのもいいでしょう。例えば、日本史の初期は、人物があまり出てこないため、覚えにくいものです。https://www.youtube.com/watch?v=fY7dicV6VRgでは、そこの所を覚えやすい動画にしています。これは、下にサンプルとして挙げておきました。
理科で言えば、岩石の種類が覚えにくいですね。これも動画にされています。https://www.youtube.com/watch?v=UnhFOO1YSVc
国語は残念ながら品詞分類程度です。https://www.youtube.com/watch?v=Q38EnSHAfqQ&t=84s
覚えれば勝ちと考えるなら、利用してみてもいいと思います(※)。
※ 個人的には、覚えれば勝ちと考えているわけではありません。
子どもに質問してもらうときの最後の注意点です。言葉の意味は質問できても、「この段落(部分)がわからない」という質問はなかなかできないものです。言葉の意味がわかれば、文章がわかったものと、特に子どもは思いがちだからです。しかし、そうでないことは明らかです。ここでは、以前の文章を再びあげてみましょう
「やり方は実に簡単である。まず、いくつかのかたまりに分ける。もちろん、量によってはひとまとめにしてもかまわない。…(途中略)…大事なことはまとめ過ぎないことである。すなわち、一度にやる量は多すぎるより少なすぎるほうがまだよい。」
意味の分からない言葉は一つもありませんが、内容はわかりません(※2)。大人であれば、「これは何のことですか」と質問できますが、子どもは質問できないものです。例をもう一つ。
「こんなふうに考えてくると、コレクションには、教(きょう)育(いく)的(てき)なはたらきがあることがわかってくるはずである。人間が自(し)然(ぜん)についての知(ち)識(しき)をたくわえ、学問をつくりあげたのも、もとはといえば、自然のさまざまな生物や無(む)生(せい)物(ぶつ)を拾い集め、それに名前をつけたところに出発点があった。子供はそういう人(じん)類(るい)の知(ち)的(てき)活動の初(しょ)期(き)の段(だん)階(かい)を無(む)意(い)識(しき)のうちに反(はん)復(ぷく)しているのかもしれない。」
このような文章も、六年生ぐらいであれば知らない言葉はないかもしれません。しかし、内容そのものは、生物学の系統発生や個体発生の知識がないと理解できないでしょう。こういう、言葉の意味はわかるが、何を言っているかわからないときに、子どもは質問しないものです。自分がわかっていないということを知る、メタ認知が十分に発達していないからです。
したがって、できるだけ、「内容でわからないところはないの?」と、メタ認知を促すように聞いてあげるようにするのがいいのです。
さて、次の段階に進みます。内容で分からないところがあったかどうかは、次の段階でもチェックできます。
※1 その6は2020/03/13をご参照ください。
他塾のテストを買って子どもさんに解かせることもあるようです。
私も子どものテキストやテストを見せてもらう機会がありますが、原則的に、塾のテストはテキストに比べて、精度が低いのです。
テキストなら、毎年使うものであり、塾の顔としての意味もあるので、それなりに準備期間と人数をかけて作ります。テストは一回切り。しかも、年間に何本も作らなければならないので、準備期間と人数をかけていられません。作り役が一人、校正が一人で一ヶ月以内でできあがりという場合が多いですね。
テキストは塾の本部や外部の業者に頼むが、テキストは現場の講師が作るというケースも多いです。講師はサラリーマンなので、テストを作るのも業務の一環です。特別に給料が上がるわけでなく、いきおいやっつけ仕事になりやすいという事情もあります。
結果的に不出来なものになりやすいですね。
テストで実力を知りたいという気持ちはわかります。しかし、家でテストをやるのと、実際に受けるのとでは様々な状況が違うので、力は計りにくいのです。そもそも、最後に合格すればいいのだから、途中の力がそれほど意味を持つわけではありません。保護者としては、「試したい」という欲をぐっとこらえて、実質的な勉強の手助けをする方がいいと思います。買って勉強するのなら、テストよりテキストを(オークションなどで)買った方がいいでしょう。その前に今使っているテキストを最大限利用するのはもちろんのことですが。
別のケースとして、塾のテストのための勉強として、同じ塾の前の年のテストを買って勉強させるという方もいらっしゃいます。クラスを上げたいからという理由があってのことでしょう。出題範囲や出題形式が似ていることが多いので、それなりに意味があることもあります。個人的には賛成しませんが。目標は合格であって、途中のテスト成績やクラスにこだわりすぎると弊害も生まれます。授業と宿題をこなすこと自体で、塾のテストのための勉強になっていることが望ましいでしょうね。
外来語のカタカナは難しいですが、和語のひらがなは声に出してみると案外意味がわかります。「うやむや」とか「ちゃち」なんかはなんとなく想像できますね。理由は、言葉の出現は、音声でその状態を真似たところにあるからです。
したがって、和語の意味がわからないと言ったときも、まずは声に出して読ませてみましょう。はっきり想像できなくてもプラス(いい意味)かマイナス(悪い意味)か程度がわかるだけでずいぶん助けになります。前後関係の推理がしやすくなるからです。まずは声に出して読ませ、前後関係から推理させ、その後で教えるなり調べさせるなりするのが手順です。このようにして、ことばを覚えるだけでなく、自分で考える力を同時につけていきます。
※ その5は2020/03/11のつぶやきをご参照ください。
文章を読んでもらって子どもに質問させる時、「漢字から言葉の意味を推理する習慣をつける」のでした。
ただし、習っていない漢字ばかりの時(※2)や、ひらがなやカタカナのときもあります。そんな時もすぐに教えるのでなく、「前後関係から推理する習慣」をつけるように工夫するのがいいと思います。
例えば「コンピューターが面倒な計算を『瞬時』にやってくれ、人間はもっと楽になる」という文なら、「瞬時」が短い間だということはなんとなくわかります。
「前後関係から推理する習慣」をつけるようにすると、読解力は外国語学習も含めて飛躍的に上がります。
① 習っていない漢字の時は、まず部首の意味を参考にする。(「瞬」は「目へん」、「まばたき」の意味です)
② 習っていない漢字やひらがなカタカナの時は、前後関係から推理する。
このように、知らない言葉を子どもが質問したときには、まず子ども自身が考えるように導いていきます。それ自体が子どものメタ認知を高め、読解力を上げるでしょう。
また、保護者や指導者が居ないときには、辞書を引いて調べるように教えるのがいいですが、この時も、何も考えずに調べるのでなく、まずは「漢字の意味から推理」し、さらに「前後関係から推理」してから、それが当たっているかどうかを確かめるように教える方が、子どもの成長を促します。
※1 その1は2020/03/10をご参照ください。
※2 前回④のように、部首の意味からある程度想像することはできます。
「成長mastery goal」と「みせかけperformance goal」は、モチベーションに関する最も有力な視点として研究され続けています。
マスタリー(mastery)は、自分が成長したいという気持ち、パフォーマンス(performance)とは、クジャクが羽を広げるように、自分の能力を見せつけたい、自分が能力を持っているとみせかけたいという気持ちです。だれでもmastery goalとperformance goalを持っていますが、後者が強いと勉強に悪影響を及ぼしやすいのです(※1)。様々な研究がありますが、いくつか紹介すると、
① mastery goalは学校でのテスト成績がよく、performance goalは、学校でのテスト成績が悪い(Payne et al,2007)(※2)。
② mastery goalは、自信がなくても難しいことに挑戦する(失敗しても、フィードバックにより成長につながるから)。performance goal)は、自信がない場合、難しいことに挑戦しようとしない(失敗すると、自分をよくみせかけられないから)(Dweck & Leggett,1988)。
③ mastery goalは、暗記学習の時に工夫をする(Escrib & Huet,2005)。などです。
mastery goalとperformance goalは意識的に操作できます。子どもが勉強に向かうとき、どちらを強く持っているか、master goalを持たせるためにどのように声がけしていくべきかということは、指導者や保護者が常に意識して考えるべきことです。
※1 (lDweck & Elliott,1984)
※2 正確にはperformance回避goalです。能力に自信がない場合、自分に能力がないことを周囲に知られないように、難しいことに取り組まないことが、テスト成績にマイナスの影響を及ぼします。
さて、いよいよ、生徒に読んでもらいます。読んでもらうのは、傍線やカッコ、設問などがない、元の文章です(理由はは別の項で説明予定)。文章は易しめで。
読んでもらいながら、わからない言葉やわからない文章があるときは質問してもらいます。時間があるときは調べてもらった方がいいですが、最初は質問してもらう方がいいです。
国語が苦手な子の多くは、文章中に自分のわからないところがあっても、一通り目を通したら読んだことになると思っています。自分にわかっていないところがあると気づくことはメタ認知(※1)という高度な作業で、小学校中学年から徐々に発達していくものなのです。このメタ認知を高めることが読解力向上のポイントです。
子どもが、わかっていないのに「質問がない」と言っているようなときは、保護者から確かめてみてもいいでしょう。ただし、あまり責める口調にならないようにしてください。くり返しますが文章は易しめで。わからないだろうと思える所や言葉がほんの少しありそうなものがいいです。文章選定については、説明的文章なら2020/03/01,物語なら2020/02/27のつぶやきをご参照ください。
質問の仕方や教え方にもコツがあります(続)。
※1 その1は、2020/02/28, その2はを2020/03/02をご参照ください。
※2 メタ認知については、2020/02/22などをご参照ください。
「よく考え抜かれた練習」の第一歩(①)は、「マスターしなければならない目標を具体的に設定する」ことです。
目標が「国語ができるようになる」だと、あまり具体的ではありません。せめて「説明的文章ができるようになる」ぐらいがいいでしょう。「○○テストで△△以上の偏差値をとる」は具体的でいいですが、テスト内容などにばらつきがあるので、努力がむくわれるとはかぎりません。偏差値の設定を少し低めにして、「~連続してとる」のほうがいいかもしれません。目標設定は、コーチ、保護者、教師が行う場合が多いですが、生徒を交えてもかまいません。
さて、②は、「目標のための課題を設計する」です。ここが一番重要です。たとえば、説明的文章ができるようになるためには、説明的文章がどういうものかということを知っておく必要があります。テスト偏差値を目標にする場合でも同じで、テストそのもの(さらに偏差値も)をよく知らなければなりません。
説明的文章を例にとると、「題」と「説明部分」に分かれます。そこで最初の課題は、文章を読ませて「題(何について書かれているか)」と「説明部分」を見分けさせることになります。もちろん、そのための文章を用意します。以上は教師、保護者、コーチの重要な役割です。
③「練習中にコツをつかむために集中する」というのは、生徒の問題です。指導者は常に生徒がそれを行っているかを見守り、励ましやアドバイスを送ります。
④「練習後、成功や失敗についてフィードバックする」は、上の例でいえば、「題」と「説明部分」がどの程度見分けられたかを指導者が判断し、生徒に伝えることです。
⑤「原因を反省し、次の目標を設定する」は、生徒が自分のできばえを反省し、それを次の課題に活かすことです。一度でできなかった場合は、指導者が再び課題(この場合は文章)を用意することになります。何度かやってできるようになったら、「次の具体的な目標」に移ります。説明的文章であれば、「説明部分」の構造を見分けることが課題になるでしょう。ここではくわしく述べませんが、「並列関係」、「言いかえ関係」、「対立関係」「因果関係」がその構造の内容になります。こうして①~⑤の段階をくり返しながら少しずつステップアップしていきます。
※ その1は、2020/02/16をご参照ください。
近くの本屋さんが閉店と聞いてついたくさん買いました。希少性の原理(※)に動かされたわけです。読んだものはレビューしておきます。
内容は2点。
① 「気持ち」に関する言葉を一つずつ説明している。
② 「できごと→気持ち→行動」という考え方を説明している。
①と②に興味があるなら買ってもいいでしょう。全体として、丁寧な説明を意図するあまり長く退屈になっています。
①のような参考書や辞書はあまり見当たらないですね。ただし、言葉の数は100程度ですべて網羅されているわけではありません。
②の「できごと→気持ち→行動」というのは、「イヌが吠えかかった→こわい→逃げた」のように、「気持ち」には、それは引き起こす「できごと」があり、結果としての反応(行動など)があるという考え方です。この3つの要素で解答を作りなさいと、塾などで教わることが多いですね。知っておいて得する知識と言えます。
※ たくさんのクッキーから一つ選ぶときと、二つのクッキーから一つ選ぶときとでは、人は同じクッキーでも後者を評価する(Worchel,1991)。同じものでも、希少だと思えると評価が高くなること。
文末の表題を読み、最後の文を読み(最後の文に指示語などがあってわかりにくいときは、その前もふくめて読んでもかまいません)、やっと文頭にもどります。ここまでに時間はかかりません。数秒から20秒程度でしょうか。
次に、視野に収まる範囲(だいたい3分の1ページ~2分の1ページ)で、3回以上出てくることばを探します。それが文章のキーワードです。2回出てくる言葉は偶然のこともありますが、3回は偶然ではありません。これも10秒前後でできます。
表題、最後の文、キーワードを読むという、ここまでの3つの行為は読むことの本質に関わります。読むということは、文章を脳にインプットするだけのように思えますが、それだけではありません。脳の中にある記憶をアウトプットする行為でもあるのです(※2)。これは二十世紀認知心理学の大きな発見です。
たとえば、次の文を読んでください。
「やり方は実に簡単である。まず、いくつかのかたまりに分ける。もちろん、量によってはひとまとめにしてもかまわない。…(途中略)…大事なことはまとめ過ぎないことである。すなわち、一度にやる量は多すぎるより少なすぎるほうがまだよい。」
よくわからないですね。しかし、文章を読む前に「衣類の洗濯」という題を読むと、理解できます。洗濯についての脳内の知識が呼び起こされるからです。
同様に、ここまでの3つの行為は、文章についての予備知識を脳内から引き出し、文章を理解しやすくするために行うのです。
※1 その1は02/28をご参照ください。
※2 もう少し正確に言うと、読むときには、文章を脳内のワーキングメモリ(短期記憶)に入れるだけでなく、長期記憶の中にある知識をワーキングメモリに呼び出して参照している。
よい説明的文章の見つけ方は、理科のコーナーへ行くことです。「科学のお話」とか、「身近なぎもん」などの題で、学年別のシリーズが出ています(学研など)。
文章のつくりが比較的簡単でとっつきやすいので、低学年から中学年あたりに向いています。中学入試を考えるなら、学年を背伸びしてもいいでしょう。その中でも、初めは「事実を並べ上げてあるような文章」を選びましょう。因果関係が分かり始めるのは小学校高学年からなので、年齢が上がるにしたがって「因果関係がていねいに(複雑に)説明してある文章」を選ぶようにするといいですね。
逆人、子どもによくない文章の典型は新聞です。短いスペースに情報を詰め込まなければなりませんから、難易度の高い用語、体験止めや比喩などの技法がたくさん使われることになり、子どもには読みにくいものです。6年生ぐらいで、本人に抵抗がなければ読んでもいいでしょう(子ども新聞は例外)。
今回は文章の読み方を何回かに渡って紹介します。
問題の解き方には様々なテクニックがありますが、文章が読めていなければ使いようがありません。例えば、選択肢に○×△をつけていくというテクニックにしても、どうしてその選択肢が○なのか、あるい△なのかという判断さえ、文章がよめていなければ間違ってしまいます。「読解」と一言に言いますが、「読」は文章の読み方、「解」は解き方のテクニックと考えることができます。解き方のテクニックは無数にある一方、文章の読み方は一つです。テクニックに埋もれることなく、読み方さえきちんとしていれば、国語はできる、というのが私の考えです。
まず、文末の表題を読みます。表題は本の題名である場合もありますが、文章の内容を表している場合もあります。
次に最後の文を読みます。
このように、最初に表題と最後の文を読むのは、二つの理由があります。一つは、多くは最後の文に結論や主張が書いてあること。もう一つは読むという行為の本質に関わることです(続)。
2020/02/27
国語が好きになるには
「よい文章を読ませる」
教師をしていて幸せに感じる時の一つは、よい文章を読ませて子どもが楽しそうに読むときです。そういうときは自然と集中し読解も深くなるようです。
物語で言えば、子どもにとってよい文章である条件の一つはは評価が固まっていること。もう一つは自然と頭に入ってくること。年齢にあっていることも重要です。中~高学年なら重松清あたりが筆頭でしょうか。
説明的文章は選ぶのが難しいですが、やはり大人が読んでみてすっきりと頭に入ってくることは重要な条件です。
入試に出るのは難しい文章だから、難しい文章を読まなければ…とあせる必要はありません。どの世界でも同じで、まずはよいものに触れることによって目が養われるのです。例えば、骨董の目利きでも、よいものを見続けることによって、悪いものを見分けることができるようになり、だまされることがなくなります。読む力をつけるときも、まずはよい文章に触れることによって、読む楽しさ、話が展開していく快さを味わうことが大切になります。そうすることによってやがて難しい文章も読むことができるようになります。
2020/02/25
子どもが勉強できるようになるためには
「『仮説』を立てる」
「どうしてこの子は…?」というところでストップしている保護者が多いように思います。もう一歩進んで「仮説」を立ててみてはどうでしょうか?
「テストが悪いのは語彙力が足りないからかもしれない」、いや、「集中して読んでいないからかもしれない」、それとも「問題がたまたまあっていないからかもしれない」などと、「仮説」はいろいろ考えられます。教師よりも、むしろ子どもをよく見ている保護者が「仮説」を立てやすいところさえあります。
「仮説」を考えたら次はそれをたしかめる「実験」(というと聞こえは悪いですが)をしてみればいいのです。上の例で言えば、集中して読んでいるかどうかや、問題があっていないかどうかは比較的確かめやすいですね(目の前で黙読させてみる・保護者が問題を解いてみる、などと確かめることができます。)。語彙力があるかどうかを確かめるのは難しそうです。確かめやすい「仮説」から、確かめてみるのもいいでしょう。
その「仮説」が正しいようだと確かめられたら、、次には対策をかんがえていくことができます。少しずつ進んでいくのが近道です。
2020/02/23
SPT効果(※)
「実際にその動作をした方が覚えられる」
「歩く」、「のぞく」、「たしなめる」など、簡単な動詞から難しい動詞まで、その動作を実際にしてみた方が覚えられるという効果です。言葉をおぼえる初期から、受験のために難語を覚える時、外国語の学習(動詞や分詞など)にも使えます(近山,2016など) 。
※ subject performed task(被験者実演課題)(Mulligan,2001)
2020/02/22
保護者が読解を教える時 その26
「自信度を聞いてメタ認知を高める」
最近は、メタ認知が知能の一部と考えられています。「こうした方がよく覚えられる」とか、「前回は失敗したから今度はこういう計画でやってみよう」などと、自分自身の認知(この場合は勉強)を客観的に見る力は、メタ認知の一部です。このようなメタ認知の発達は学力の向上に欠かせません(※)。
家で一つの問題をやった後、採点する前に、正解しているかどうか、自信はどれくらいあるかを子どもに聞いてみましょう。
もし自信があると言っているのにまちがっていたときは、むしろチャンス。どのように考えたかを聞いてあげましょう。
「こうだと思ったけど、ここで勘違いしてた。次からはこうしよう」と本人が言うことも大事です。そうでなくても保護者が「次からはどうしようか?」などと促すこともよいことです。このように、「自信度を聞いて、採点の後振り返る」ことによってメタ認知の発達を支援することができます。算数の文章題、理科の計算問題でも同様にできます。
※ 「メタ認知」(Flavell,1987):自分の気持ち、考えなどを客観的に見直し、コントロールすること。9~11歳ぐらいから発達し始めると言われている。
具体的には、「自分で改善していく」、「勉強の仕方を考える」、「自分の理解状態を把握する」、「どうしたらよく覚えられるかを考える」「自分の行動に自分で優先順位をつける」などの様々な精神活動。
例えば、自分で○つけをするというのは、初期的なメタ認知活動。また、言われた通り漢字を10回機械的に書くよりも、10回書くうちに覚えてしまおうと考えながら書く方が、メタ認知活動をしている。メタ認知の発達は学習の成果に大きな影響を及ぼす。
佐藤優さんは外務省時代に速読をせざるを得なかったそうです。世界中の国から次々にFaxが入ってくるので、その中から読まなければならないところをピックアップするためです。こういう場合に速読は必要です。
読解問題に速読は必要ありません。正確に読まなければならないからです。速さと正確さは両立しないんですね。
このことは、促進焦点と防止焦点(※)からも説明できます。促進焦点とは、得をしようとするモチベーションで、速さのパフォーマンスに優れています。防止焦点とは、損をしないでおこうというモチベーションで、正確さのパフォーマンスに優れています。学力テストなどは防止焦点を持つ方が向いていることがわかっています(Friedman & Forster,2001,2005他)。
※ 促進焦点と防止焦点は、最新のモチベーション研究です。2018/01/29のつぶやきもご参照ください。
行動の前に初めから終わりまでを映像のようにイメージします。時間をかけなくてもいいです。メモを取るときでもその前にイメージしてから書くと書き忘れが少なくなります。ここまでは前置きです。
物を考えたり本を読んだりして脳を使うときに、視覚的イメージを使っていることが知られています(※1)。古くからある読解法で、主人公の見ているものを想像する、主人公の顔や姿勢をまねる、あるいはイメージする(※2)というのは、この点で理にかなっています。また、大好きな人が読み聞かせてくれていたり、説明していてくれたりしているとイメージして文章を読むことも効果があります。
※1 Zwaan,2002など。
※2 2018/07/25,07/21,2019/11/08などのつぶやきをご参照ください。
① 道にねこがいた。ねこはこちらを見て、にげた。
② 道にねこがいた。それはこちらを見て、にげた。
②の、指示語(「それ」)を使った文の方が読みやすいことが知られています(※1)。指示語は、読み手がスムーズに理解できるように使われているのです。
にもかかわらず、「『それ』は何を指していますか?」という問題を出して、読み手をストップさせるのは、本末転倒ではないでしょうか?(※1)
国語を教える目的は、スムーズに理解できるようになってもらうことです。指示語によって子どもがスムーズに理解できているところを、わざわざ難しくしているのは、教育目的から外れた、「問題のための問題」になってしまっています。また、これで読解力を計れるかどうかも疑問です。
学校関係者は、全部を読んでから要約する、などの本来的な読解力を計る問題を工夫してもらいたいですね。
採点の手間が嫌なら、例えばワーキングメモリを計れば手間を掛けずに読解力がわかります(※2)。工夫の仕方はいくらでもあると思います。
※1 しかも、「それは何を指していますか」ということば自体が、子どもにとって難しいものです。これについては2020/01/07のつぶやきをご参照ください。
※2 Gordon et al,1993;井関,2006など。
※3 リーディング・スパン・テスト(2018/10/18のつぶやき参照)。 ワーキングメモリについては、2020/01/21,2018/08/08のつぶやき参照。
そろばんなどの比較的シンプルなものは、何百回、何千回とくり返すうちに上手になります。まさに「手」が覚えるのです(※1)。これに対して、将棋やスポーツ、学問や芸術は、単なる繰り返しだけでは上手になりません。このような分野は、「頭」の中で知識が整理された上で、状況が変化したときも柔軟に対応し、適切な解を導く必要があります(※2)。
国語の勉強は、どちらかといえば後者に当たります。このような分野で成果を収めるためには、「よく考え抜かれた練習deliberate practice」が必要です。「よく考え抜かれた練習」とは、以下のようなものです。
① マスターしなければならない目標を「具体的に」設定する。
② そのための課題を設計する。
③ 練習中にコツをつかむために集中する。
④ 練習後、成功や失敗についてフィードバックする。
⑤ 原因を反省し、次の目標を設定する。
①~⑤の支援は、コーチ、教師、保護者の役割であるとされています(以上、Ericson,2006)。
次は、①~⑤を国語の勉強にあてはめて考えてみます。
※1 「手際のよい熟達者routine expert」(波多野・稲垣,1983)
※2 「適応的熟達者adaptive expert」(同上)
人間は、自分が「できる」と思いたい、つまり「有能感(competence)」を持とうとする存在です。
「有能感」を持つ方法は2種類あります。
① 自分の能力を高める。
② 周囲からよい評価を得る。(ほめられる、認められる、など)
②の行動パターンを持つ人は、能力に自信があればいいですが、自信が低いときには挑戦をさけようとします。周囲からよ評価を得られなさそうだからです。また、失敗したときに無力感におちいりやすくなります。失敗は「できない」ことの証拠だと思えるからです。
一方①の行動パターンを持つ人は、能力に自信があってもなくても、自分の能力を高めることが目的なので、難しいことにも挑戦し、失敗しても、成功の糧と考えます。
②の人は学校での成績が悪く、①の人は学校での成績や仕事の成績がよいと分析されています(Payne et al,2007)
※ 関連したつぶやき(2018/05/29,2018/06/14,2018/09/24)
「なぜですか」という問いは、「原因・理由」を聞いている場合と、「目的」を聞いている場合があります。しかし、問いにそのことは明示されていない場合がほとんどです。
① 「休んだのはなぜですか」―「カゼを引いたから。(原因・理由)」
② 「この法律ができたのはなぜですか」―「困っている人をすくうため(目的)」
②の場合、「困っている人が多いから(原因・理由)」と書くと減点される場合があります。子どもは何でも「~から。」と書いてしまうので、前もって教えておいてあげましょう(※)。
※ 個人的には、②の場合は問題に「何のためですか」と明示するべきだと思いますし、また明示されていない場合は、「~から。」と答えてもよいと思います。一種の問題不備ですから。しかし、現実には減点されることが多いですね。
やる気を出す方法はいくつかに分類されます。やっていない方法があれば、試してみるのもいいでしょう。
① 「協同」…他の生徒と一緒に勉強することでやる気を出すことです。これには『競争』と『教え合い』があります。学習塾などで学力別クラス編成にしたり、競争をあおったりするのは、『競争』です。中高校生が友達と一緒に勉強することは『教え合い』です。余談ですが、私が最も可能性を感じている方法は、「協同」の一種で、教師1対生徒2で、生徒が教え合うのを教師が導くという方法(レシプロカルテーチィング)です。教えるということ自体が、その生徒の能力を高めるのです。
② 「興味付け」…勉強の内容に興味を持たせる方法です。同じ内容でも、よりおもしろく感じられるように、勉強の前に話をします。また勉強中でもよりおもしろく感じられるような授業方法をとります。「先生が好きだから」勉強するというのも、この中に入ります。
③ 「価値付け」…勉強内容の価値を強調する方法です。今勉強することは、いろいろに役立つとか将来役立つというように、勉強の価値を教えます。
④ 「達成感を想像する」…授業後や問題を終えた後の「やりきった感」を想像させることです。達成感を想像する生徒の方が、やる気が高いという研究があります(※)。有名なジムのトレーナーは、ハードなトレーニングの前に「やりきった感」を想像させています。
⑤ 「成績意識」…勉強をしたら成績が上がると教えることです。算数・理科・社会では有効です。国語では、勉強内容や評価手段(テスト)を練っておけば、有効です。
⑥ 「環境を整える」…机の上や部屋を片付けることによって、やる気を高めることです。家庭学習において特に有効です。
⑦ 「認知を変える」…例えば、漢字を何回も書くよりも、熟語と関連づけたり、自分に関係する例文をつくったりする方が覚えられる、というように、自分自身の学習方法に対する考え方を変えることです。指導者や保護者による導きが望ましいですね。
※ 梅本,2019
先生方が集まって、模擬授業をしているところも多いですね。順繰りになるので、一人に当たるのが一年に1、2回ぐらいでしょうか。
模擬授業のうまい先生は尊敬されます。ただ、実際の授業がうまいとはかぎりません。教師の前ではよそいきの授業をしてしまいますが、教師の目と生徒の目はちがいます。
模擬授業のうまい下手とはかかわりなく、生徒を伸ばす先生もいます。そういう先生はモチベーションの持たせ方がうまいですね。
授業そのものの中身も大切ですが、そこにとりかかる気持ちが大切な例でしょう。
その1で、AI、翻訳機、スマホの普及によって、英語が話せなくてもさしつかえなくなっているとつぶやきました。そもそも、話せるようになりたいなら、やり方が間違っています。
第二言語を話すためには集中した学習が必要です。週に何回かやっている程度で、まして専門外の先生が教えるのでは、無理です。結果的に、壮大な無駄をすることになります。
さらに、無駄よりもマイナスまであります(続)(不定期投稿)。
※ その2は、2020/01/19のつぶやきをご参照ください。
国語ができるようにしてくださいと言われますが、子供は機械ではないので、簡単に調整するというわけにはいきません。人間には感情・気持ちがあります。学習を援助、指導するときには、気持ちと学力の両面にわたって気を配る必要があります。
いくらやっても成績が上がらない、という時には、気持ちの面に問題があるときもあります。
たとえば、読むことをおもしろいと思っていなければ、宿題をこなしているようでも、文章をいいかげんに読んでいるものです。結果的に、いくらこなしても表面的な勉強にとどまり、成績が上がらない。そういう子は案外多いのです。まずは、やっていることをおもしろい、興味深いと思ってもらうこと、そこから始める方が効果的です。
そのための方法について、詳しくは校をあらためて述べていくつもりですが、原則としては、子どもはみな好奇心を持っているので、その子の好奇心をくすぐるような方法を考えていくのがよいでしょう。
初めて中学入試につきそった保護者は驚かれるかもしれません。会場周辺には塾の旗が乱立し、各塾が陣を作っています。子どもを集めて最後の授業をしている塾もあります。生徒が試験会場の教室に向かうときには各塾の先生と旗が生徒の周りに「花道」をつくり、「ベストをつくせ!」「落ち着いて!」と激励の言葉がとびかいます。
先生たちは、生徒集合時間の2時間前に現地に集まり、受け入れ体制や激励の言葉に関するミーティングや旗や手渡しカイロなどの準備をはじめています。けれど、これらはすべて手弁当なのです(最近は、交通費だけ出るようです)。遠方の先生は近くに泊まる場合もあります。
よく言えば、情熱のたまもの。別の見方をすれば(塾から指示が出ているので)案外ブラックなのです。
一つめの理由は文章にありました。もう一つの理由は、問題と採点にあります。採点の手間をはぶくために、記号問題、書き抜き問題が採用され、さらに、記述問題もキーワードによる採点がされているからです。
上記のような問題、採点方法では、学力がはかれません。偶然性が高すぎるからです。一回のテストごとに生徒の順位が大きく変わります(私自身、学習塾で入試問題演習をしていたときに経験しています)。
また、だからこそ、大学入試共通テストでも記述式を導入することによって、偶然性を廃し実力を把握しようとしたのですね(※1)。
読解力を計るだけならワーキングメモリ(※2)をテストするだけで十分で、そのような研究も積み重ねられている(※3)のですが、今のテスト形式は古い時代から続いているので、なかなか変えることもむすかしいようです。ただ、今のテスト形式で実力がそのまま計られるわけではないということは、保護者として知っておくべきことです。
※1 最初の試みが失敗した理由の一つは、記述問題の採点官が足りなかったからです。実力を見ようとすれば記述問題がよいのですが、それを採点するには採点官の実力や、採点の手間がかかります。実力の判定と採点の手間は、トレードオフ(一方がかなえば一方がかなわない関係)なのです。
※2 ワーキングメモリについては、2020/01/21のつぶやきなどをご参照ください。
※3 「勉強法―今日のつぶやき―back number3」の2018/10/18をご参照ください。
私の知っている算数の先生はまず覚えなさいと言っています。けれど数学者などの偉い人は、考える力をつけること、と言います。
研究によると、複雑な問題の場合は、覚えるやり方の方が有効だが、覚えたものを思い出す練習をしないと効果がないとあります(※)。
この意味では、まず算数の先生の言うとおりでしょう。もちろん「覚えたものを思い出す」ための練習方法については工夫する必要があります。
また、考える力が必要なことも言うまでもありません。上記の研究でも、単純な構造の問題に対しては考えるやり方の方が有効であるとされています。
結局、「生徒の学び」と「指導法」について、指導者がどこまで熟知しているか、どのタイミングで適切な戦略を与えるかにかかっているようです。
※ 松林,三輪,寺井;2019
当然です。読むという行為を、情報を頭の中に吸い込んでいるだけ(ボトムアップ)と思い込みがちですが、実は頭の中の知識によって情報を判断している行為(トップダウン)でもあるのです。この頭の中の知識をスキーマ(schema ; Bartlett,1932)(※)と言います。スキーマが多ければ多いほど読みがスムーズになります。
スキーマは経験によって蓄えられます。経験は個人によって違うので、スキーマには個人差があります。そのときの文章に関係するスキーマが多ければ文章は読みやすく(成績が上がり)、少なければ成績が下がります。これが成績が上下する理由の一つです。
常に国語の成績がいい小学生というのはほとんどいません。経験が少なく、したがってスキーマが少ないからです。読書量によって日常経験の少なさをカバーしている生徒がいて、そういう生徒が常に成績がいいことは稀にあります。
※ スキーマに関しては、「勉強法―今日のつぶやき―back number1」の2018/07/30をご参照ください。(2018/06/27,07/16,08/03にも関連事項あり)
ふだん、人間は相手のことを、声・身振り・表情・ことばなどを総合して判断しています。ただ、そのためにかえって判断を誤るときもあります。たとえば、ことばにあまり意味がないのに身振りにつられて信じてしまう、というようなこともおこります。
おそらく我々は、マイナスの要素をプラスの要素で打ち消してしまい、時には好意的に判断する方に傾いてしまうのでしょう。
むしろシンプルな要素だけで判断したらどうなるか、と考えた研究が行われています。たとえば、「相手の声が聞こえないようにして、表情だけで相手の不安が読み取れるか」という実験があります。
これに関しては、大人であれば表情だけで相手の不安が読み取れるという結果がでています。また、逆に、相手を見ないで声だけを聞いても不安が読み取れることもわかっています(河野,1999)。
大手学習塾のホームページなどで、音声付き映像で授業紹介や教師紹介をしている場合も多いようです。そこで、音声を消して表情だけを見るか、音声だけを聞くかしてみてください。案外その教師の不安(=実力)がわかります(※)。
参観日の時などでも応用できそうですね。
※ 個人的に知っている教師で試しました。
二つ以上の課題があるときは、重要でない課題に手を抜く方(防止焦点)が、重要な課題のできがよいということでした(外山 湯 長峯 三和 相川,2019)。
したがって、優先度に差があることを二つ以上こなすとき(ゲームと宿題、得意な国語と苦手な算数)などのように、防止焦点を活性化させたいときが出てくるはずです。
そういうときには、こうあるべきという自分の姿(宿題をきちんとこなしている、算数で点がとれている、など)を考えさせたり、失敗を防いでいる状況(ゲーム時間を決めたので宿題ができてしかられなかった、見直しをして間違いに気がついた)を想像させたりすると、防止焦点を活性化させられます。
また、一科目の目標を立てる場合でも、「下位50%に入らないようにしなさい」と言う方が、「上位50%に入りなさい」と言うより(二つは論理的に同じことです)、防止焦点を活性化させられ、ミスが少なくなることも知っておいてよいでしょう。
最近は促進焦点と防止焦点という見方がされます。促進焦点(promotion focus)は、得をしようとすること、防止焦点(prevention focus)は、損をしないようにすることです。どちらも誰にも備わっており、場合によって使い分けます。ただ、個人によってどちらが強いかの傾向もあります(尾崎,2011)。
ダイエットで言えば、今よりやせようとするのは促進焦点に当たります。そういう人は、ジムに通うかもしれません。これ以上太らないようにしようと考えるのが防止焦点。その人は、甘い物を控えめにするでしょう。このように、どちらの焦点を強く持つかで、行動が変わってきます。
促進焦点の強い人、活性化している人は、何でも全力でやろうとします。したがって、何をやらせてもできがよいのが長所です。ただ、重要でないことまで全力でやろうとするので、重要な課題のときにエネルギーが十分残っていない時もあるのが短所です。
防止焦点の強い人、防止焦点が活性化しているは、エネルギーを無駄遣いしないように、重要なことにエネルギーを割き、重要でないことは手を抜こうとします。したがって、促進焦点の人に比べると、重要なことの出来が相対的によくなるという長所があります(外山 湯 長峯 三和 相川,2019)。
中学生の時、卓球部の顧問が知恵者でした。全員に試合をさせて、勝った者は上の台に行き、負ければ下の台に行く。そうして10の卓球台に振り分け、後はそれをくり返していく。そうすると、自然とレベルのあった者同士の組み合わせになり、だれもが試合ができるので、熱心にやる。その後、顧問は3年間ほとんど練習に出ず、さぼっていました。
ただ、弱かった。試合しかしていないので基礎的な体と技術ができていないからです。
国語も同じです。問題演習ばかりするのは、試合ばかりしているようなもの。「強く」なるためには読むための練習が必要です。
大手塾が合格者数をHPで発表する時期です。早く発表した塾は良い結果が出たと考えていいでしょう。大手塾は合格者数が塾の顔だと考えているので、よい結果(前年度より増えた、他塾にひけをとらない、など)が出れば早く発表します。
一方それほどの結果が出なかった(前年度より減った、他塾と比べられると困る、など)塾は、他塾の発表をまず見ます。その後で発表の仕方(数ではなく、率で発表する、前年度比較でなく5年単位などで発表する、など)を考えたり、数字を調整したりします。
今年は、二つの塾が成功、三つの塾がうまくいかなかったようです。とはいえ、年度によってのぶれはあるので、合格者数で判断するのでなく、内容で判断する必要があるのはもちろんです。
ワーキングメモリで使う分の知識や手続きを記憶しておけば、相対的にワーキングメモリの容量が増え、知能が増すことになります。
記憶しておくべき知識や手続きとは、一つは、暗記事項や問題の解き方です。
例えば、「理由を聞かれたら、文末を『から。』で終わる」、「『それ』の指しているものは、直前に書かれている」というようなことは、覚えておくべきことです。
もう一つは、文章の読み方で、こちらの方が大切です。問題の解き方は多岐にわたり煩雑になりますが、文章の読み方は原則として一つ確立すればよいからです。千差万別の文章に出会うたびに翻弄されるのでなく、手順を踏んだ読み方を覚えておくことが大切です。読み方については、2019/10/17,10/07、練習方法については、9/03,8/06,8/05などをご参照ください。
ワーキングメモリは長期記憶と連動して働く(※1,2)ことがわかっていますから、問題を解くときにワーキングメモリを使用する手続きや知識を、長期記憶に移しておけば、結果的にワーキングメモリの容量が増やせます。このことは脳振動の測定によって証明されています(Schurgin,Cunningham,Egeth & Brady,2018)。
問題は、どの知識や手続きを長期記憶に移せばよいかと、どのようにしてそれ長期記憶に定着させるかということです。
長期記憶に定着させる方法はすでに確立していますが、一般的には知られていません(Mcabe,2011)。つぶやきで何度も触れてきましたが、たとえば、生徒に説明させ、問題を考えさせる、何度か読む、定期的にテストをする、などです(Mcdaniel,Howard & Einstein,2009など)。
では、長期記憶に移すべき知識・手続きとは何でしょうか?(続)
知能個人差の50%はワーキングメモリの大きさで説明できます(Kane,Hambrick & Conway,2005)。ワーキングメモリとは、一度に覚えたり考えたりできる量で(※1)、コンピューターのメモリになぞらえられた表現です。
ワーキングメモリは測定することができ、容量が大きいほど知能が高いのですが、そこまでしなくても次の2つを見れば、だいたいのワーキングメモリの働きがわかり、知能もわかります。
① 集中力(目的に集中し不必要な情報が無視できるほど、知能が高い)
② 覚えたことを思い出す力(ワーキングメモリ内に保持しきれない情報を記憶から上手にとりだせるほど、知能が高い※2)
(Stclair,Tompson,Stevens,Hunt & Bolder,2010)
では、ワーキングメモリの容量を増やすことはできるのでしょうか? 研究はされてきましたが、成功していません。市販の脳トレなどは、研究の一部を根拠なしに取り上げているだけです。
ただ、ワーキングメモリを上手に使うことはできるのです(続)。
※1 今日のつぶやき2018/08/07をご参照ください。覚えたり考えたりできる項目数で言えば、4±1項目。
※2 この場合の「記憶(長期記憶)」は、コンピューターで言えばハードディスクに当たります。
前回(2020/01/11)は相互教授法と普通の教え方の差を見ましたが、今回は相互教授法で各生徒がどう伸びたかを具体的に見ます。
図のS1~S6が生徒です。縦軸が問題の正答率、横軸が勉強期間です。Baselineが勉強前の成績、Reciprocal Teachingが相互教授法で教えている期間の成績(20日間。毎日教えた後にテストを実施。)、Maint.が授業終了5日後のテスト結果、Followupが、2ヶ月後のテスト結果です。
個人差はありますが、6人中5人の生徒は最初は正答率25%以下だったのに、2週間後で正答率75%になっています。また、2ヶ月後でもその水準を保っています。S2(の生徒)だけは失敗例として報告されています。それでも正答率が50%に上昇しています。
(Palinscar & Brown,1982)
正答率の上昇と、2ヶ月後でも同じ水準を保っているところは強調されてよいでしょう。
どうしてもあいづちを打ってしまいます。もちろん幼児から低学年の間は相づちが必要です。「あなたの話を聞いているよ」「あなたのことを愛情を持って見ているよ」ということを子どもに示すことは大切です。
ただ、高学年に国語を教えるときは少し注意する必要があります。
保護者:「『どうしておばあちゃんは笑い出したのですか』とあるよ。この問題に答えてごらん」
子ども:「健太がー」
保護者:「うんうん」
子ども:「ぬいぐるみをー」
保護者:「うんうん」
(以上は、答えがあっていそうなときのやりとりです)
子ども:「美咲がー」
保護者:「は? 美咲?」
子ども:「いや、健太がー」
保護者:「うんうん」
(以上は、子どもが最初に間違いを言い出したときのやりとりです)
答えがあっていそうなときと、間違っていそうなときの保護者の反応が違っていると、子どもはことばを小出しにして保護者の反応を見るようになります。
一文が頭の中で浮かぶことが理想的な解き方です(もちろん難しいことですが)。ただ、保護者が上記のような反応をしていると、子どもの記述力はいつまでたっても上がりません。記号問題でも同じです。
子ども:「アかな?」
保護者:(渋い顔)
子ども:「いや、アじゃなくてー」
このようなやりとりにしたくないものです。
それでなくても子どもは「答えだし方略」に長けています(2018/11/18のつぶやきをご参照ください)。できるだけ子どもに考えさせるような反応をしてあげてください。例えば、あっていても間違っていても「うんうん」とうなずいて、一通り言わせるのも一方法です。
国語では、採点の問題があります。大学入試共通テストで記述式を取り入れることが直前に取りやめになったことは記憶にあたらしいところです。生徒の思考力・表現力を判定するのは記述式が一番ですが、その分採点者に実力が求められるので、採点者が足りないのが理由の一つでした。
キーワードで採点すればいいではないか、というのは間違いで、キーワード採点では思考力や表現力は採点できないのです(くわしくは2019/12/08のつぶやきをご参照ください)。
ところで、業者や塾の模試は、まさにそのキーワードで採点しています。仕事の効率上、アルバイト(あるいは教師)の採点のしやすさを優先するので、キーワード採点や記号問題に頼らざるを得ないのです。これは、生徒の力を正確に計っているとは言えません。
模試の成績を信用しすぎるのよくない理由の一つです。
2019/07/30(勉強法―今日のつぶやき―backnumber4)に、段違いに読解力がつく「相互教授法」(Palinscar & Brown1982)について触れましたが、データを紹介します。図の●〈RT〉(黄色で囲んだ部分)が「相互教授法(Reciprocal Teaching)」です。
○〈LI〉が塾の授業(Locating Information,問題の解き方を教師が教える)、★〈T〉が問題を解くだけ(Test only)です。グラフの縦は正答率、横は訓練期間です。Baselineが訓練を始める前の成績、1st halfが10日後、2nd halfが20日後の終了時、maintenancceが訓練が終了してから5日後です。
「相互教授法」の伸びが際立っているのがわかります。また、別のグラフになりますが、2ヶ月後でも同じレベルの成績を維持し、さらに社会・理科の成績も伸びていました。いずれご紹介したいと思います。
「相互教授法」は学会でも注目されています。文化の違いなど、さまざまな要素を考慮する必要があるので、そのまま取り入れるわけにはいかないかもしれませんが、有力な方法と言えます。おいおい紹介していくつもりです。
塾の先生の応援を受けながら、中学入試の会場に入っていく6年生たちを、遠巻きに眺める5年生がいます。臨場感を味わって、その後一年間のやる気を高めるため、と聞きました。
これは「状況的興味」(Renninger & Hidi,2016)と呼ばれるもので、確かにそのときは興味をもつかもしれませんがあくまでも一時的なもので、その後は関心を持たないかもしれません。主体的な「個人的興味」にいたるまでは、その後の長い過程が必要です。
読書をしてもらいたいので、本を題材にしたアニメや漫画をみせる、というのも同じです。すぐに読書に興味がわくわけではありません。それまでには、読み聞かせ、本探し、背景調べ、などを保護者や教育者が協力していく必要があるのと同じです。
「状況的興味」には危険性もあります。
まず、否定的な気持ちを持つ可能性があります。5年生のうちに入試会場に行って寒いだけだったという感情を持つと、受験勉強自体にネガティブな印象を持つかもしれません。
また、そのときに困難に直面すると、耐えられない可能性もあります。難しい本を読ませすぎると拒否反応をおこすこともあり得ますね。
さらに、「状況的興味」を周囲が用意しると、何をするべきかを指示されることを望む、「指示待ち族」になる可能性もあります。
興味・関心を持って物事に取り組む「個人的興味」を持つためには、周囲からの計画的で継続的、かつ慎重な支援が必要です(以上Renninger & Hidi,2016)
以下はある塾のテキストです。
…身体を使って働くこと、働いて汗を流すことは、おもしろいものなのです。自分の力でひとつの新しい物が生まれていく、それが楽しみや喜びを生むのです。「それ」は生命を育てるような仕事をしたときに強く感じられるでしょう。…
問い 「それ」は何を指していますか? 文章中から書き抜きなさい。
4年生の何割かの児童は、答えられないか、「生命を育てるような仕事」のような誤答をします。このような生徒に対して、指示語がわかっていないというのは簡単です。しかし、『強く感じられるのは何かな?』とか、『何が強く感じられるのかな?』と聞き方を変えると、どの生徒も正答がわかります(正答は、「楽しみや喜び」)。彼らは分かっています。聞き方が難しすぎるのです。
このように、問いをわかりやすく言いかえることを、認知心理学では精緻化(elaboration)といいます。算数の文章題が苦手な子の多くは、精緻化によって解けるようになります。
以下は、「なぜ聞き方が子どもにとって難しすぎるのか」についての説明の一例です。読み飛ばしても結構です。
日常生活で「それは何を指していますか」という言い方はしません。子どもは日常生活から言語を学ぶので、そのような言い方(人工言語)には不慣れなのです。
では、なぜわざわざ難しい言い方をするのか? いくつか理由がありそうです。一つは、習慣。橋本進吉という人が今の文法体系を考えたのですが、その中で、こそあどことばのことを「指示語」と呼んだため、「何を指していますか」という人工言語的な問いができたのです。以降の教師は深く考えずにそれを踏襲していると考えられます。
また、「難しい聞き方してやろう」という、教える側のおごりや権威付けも無意識にあるかもしれません。簡単な聞き方をすると、みんながわかって差がつかないからという、「選別」の考え方もあるでしょう。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
単語探し問題や乱文整序問題(※1)を利用して、「成功」や「達成」という言葉に触れます。この後に難しい問題をやると、「成功」や「達成」という言葉に触れた人は、触れなかった人に比べて成績がよいという研究があります(北村,2013のレビュー※2)
また、「遊び」に関する語(テレビ、ゲーム)などに触れた人は、「成功」や「達成」に触れた人に比べて、成績が落ちるという報告もあります(及川・及川,2010)。
課題の前に触れる言葉によって、課題のできが違うというのは直感的にも納得できます。普段の学習にも応用できそうです。
※1 乱文整序問題の例:①「ダンスの発表会は成功した」②「ダンスの発表会をやることになった」③「毎日発表会のために練習した」―以上の文を順番に並べ替える(答えは②③①)。
※2 山田,中條,2011;及川,2005;Bargh et al,2001など。
文章を要約させたり問題を作らせたりしたときに、力がつくにしたがって、文章中の言葉を多く使う段階(セレクション、選択段階)から、自分の言葉で表現する段階(インベンション、発明段階)に移行していきます(Brown & Day,1983)。
セレクションとインベンションの割合によって国語力を計ることができます。
こんな風にしたらできるようになった、だからあなたも…。という勧め方は、参考書、ビジネス書、有識者会議の発言などで非常に多く見られます。けれど、たまたま条件がそろったから結果が出ただけのことを、一般化しようとしているかもしれないのです。このような一般化の罠は科学的思考とはむしろ対極的にあるものです。
よく語られる国語の勉強法にしても、同様な罠があります。そこで語られている勉強法は、「一般化の罠」ではないのか? 科学的に検証できているのか? 一度立ち止まって考えてみる必要があります。
※ 苫野 一徳のことば
2019/10/02では、塾の「教授システムの設計が算数(理科・社会)と同じ」だと、国語の力がつかないと述べました。他教科のように問題を解くのでなく、国語は文章の読み方を教えるべきです(読み方については、主に2019/08/05,06をご参照ください)。
むしろ、読み方を教えると、他教科もできるようになります。小学校の算数は「問題文が読めれば、できたのと同じ」といわれています。中学受験でも同様です。
ある生徒は、算数の文章題が苦手でしたが、《文章題を自分のことばで書き直す》ように教えると、一度で算数の文章題全般が解けるようになりました。算数の文章題から、《いらない言葉を横線で消す》ことを実行するだけで、解けるようになった例もあります(この方法については、2019/09/21のつぶやき参照)。
まずは、読み方を教えること、です。
大手塾のやっている個別指導なら、安心。そんな気もします。
しかし、個別指導は別組織になっています。一人の教師の売り上げる金額が少ないため、優秀な教師は一斉授業で教えるのです。入ってみるとアルバイトに教えられた、ということのないように、よく確かめておきましょう。
平日と休日の睡眠時間の差が2時間以上あると、学業成績が落ちるという研究があります(田中,田中,駒田,成澤,井上;2019)。この調査では38.4%の生徒がこのタイプにあてはまっていました。
体内時計が狂うことが原因で、他にも、睡眠の質の悪さ・日中の眠気・疲労感・いらいら、などの症状がでます。
体調管理も勉強のうちですね。
「国際的に活躍できる人材育成を目指す」という理由で英語が導入されていますが、「英語が話せる」=「国際的に活躍できる」と短絡的に考えられているようです。
今でも外国語会話はスマホで十分できますし、実際に使われています。これからの開発によりもっと使いやすくなるので、会話はスマホで十分です。小学校で負担を増やしてまで単語と会話をやる意味がありません。
自分自身が誇らしく思えるからです。例えば、自分はサッカー部だけれど、将棋部の親友が全国レベルの大会で優勝した場合、親友のことを(そして自分のことを少し)誇らしく思います。同様に、「かしこい」子と近しいと、自分自身が誇らしく思えるのです。
同郷や同じ出身大学から有名人が出ると誇らしく思えるのも同じです。
一般的に、他者との関係は、自分自身の評価やプライドに大きな影響があり、また、人間は自分自身の評価やプライドを高くするように行動します※。したがって、他者のパフォーマンスを自分と同一視して「ひいき」したりすることが生まれます(鹿毛2013 ; Tesser,1988)。
※ 同じ理由から、「しっと」も生まれます。例えば、同じサッカー部の親友がレギュラーに選ばれ、自分が補欠だった場合、どこか素直に喜べなかったり、親友に対して素っ気なくなったりします。これも、自分自身の評価やプライドを守ろうとするからです。
この辺りの心理は、物語の主題になりやすいですね。
「次はがんばろう」とよく言います。これでは、「次はいい点をとってね」と言っているのと同じです。では、「いい点をとってね」という言い方がなぜよくないのか?
よい点数をとりたい、というモチベーションを「促進焦点」といい、「速さ」のパフォーマンスが上がります。「悪い点数をとりたくない」というモチベーションを「防止焦点」といい、「正確さ」のパフォーマンスが上がります。モチベーションには
この2種類があるのです(Forster , Higgins & Bianco;2003)。
テストは、「速さ」と「正確さ」がトレードオフ(一方を追求すると、一方がおろそかになること)の課題です。「次はいい点を―」というモチベーション(促進焦点)を持ちすぎると、「速い」けれど「不正確」なテスト結果になりやすい、つまりミスが多い答案になりやすいのです。
「○○点以下をとらないように―」というと(防止焦点を持たせると)、逆に「正確さ」が増し、ミスが減ります。
物語の構造は「物語文法※」として研究されています。中学受験向けに簡略化すると、次のようになります。
主人公はある「目標」を持っています。こうありたい、こうなりたい、こうしたい、ということです。それに対して「困難」があらわれ、それを「乗りこえ」、何かを「得る」。この4点が共通します。
『桃太郎』…鬼退治(目標)、仲間集め(困難)、きびだんご(乗りこえ)、鬼ヶ島の財宝(得たもの)。
どの物語もこのようにパターン化することができます。パターンを教えておくと、全体がつかみやすくなります。
※ Thorndike,1874など。
自分から質問してくれるならまだよいのですが、「自分がわかっていないところあるということ」がわかっていないケースも、かなり多くあります。
上から教え込むのでなくて、わかっていないだろうと思うところを質問するようにするのがいいと思います。
問いの意味がわかっていないことが多いし、問いの意味がわかっていないと解けないので、まずは問いに書かれている単語の意味を質問してみるところからはじめるのもいいですね。
時間がかかるようですが、その方が近道です。子どもが自分で、「自分がわかっていないところあるということ」に気づくことがメタ認知を促すことになります。
今までは、あくまでも外部から与えられるモチベーション(外発的動機付け)でした。今回(青枠)は勉強そのものに「興味」「楽しさ」「本質的な満足感」を覚えている状態です。例として、「勉強している内容にとても興味を持っている」「勉強をすることに楽しさを感じている」などが挙げられます。
この状態が望ましいですが、今までのモチベーション(その2~5)が悪いというわけではありません。今の状態を把握して、どのようにすればあと一歩モチベーションを高められるかを考えるために下の表を利用するのがよいかと思います。
「自分にとって必要だから」「将来役に立つから」という理由で勉強するのが、図の赤枠部分でした(12/06参照)。
黄枠部分は、(一歩進んで)勉強することに「調和」を感じている状態です。勉強していることが自然で矛盾を感じない、「やりたいと思うから」やる状態です。
「価値への承認」というのは、「医者になりたいから」勉強する、というのが一例で、これが保護者からの期待であっても、自分の価値と一致している状態です。
「自己への統合」というのも同様に、保護者などからの期待であっても、「勉強することが自分の価値観と一致している」と感じる状態です。
かなり学習が進む状態と言えます。
※ その1(11/27), その2(11/29),その3(12/01),その4(12/06)参照
見送りの理由は、生徒が自己採点できず(したがって志望校が絞れない)、規模が大きい(全国レベル)ので、優秀な採点者の確保が難しく、採点がぶれて不公平になる心配があることです。
結局、「採点」が問題でした。記述式のような「思考力や表現力を見る問題」と、「採点のしやすさ」は矛盾します。この矛盾を解消できまなかったということです。
大学入試に限らず、生徒の人数が多い、中学入試向けの学習塾や模試では、キーワードがあるかないかで記述問題の答案を採点しています。しかし、これはアルバイト採点者(や教師)の作業のしやすさを優先した方法で、「思考力や表現力」を始めとした生徒の「学力」を見ているとは言えないのです。(今回も、共通テストの採点をアルバイトにさせることが問題になっていました。)
一方、大学が単独で記述式問題を採点する場合は、キーワードよりも、「思考力や表現力」、内容を重視して専門の教官が採点するのです。単独の模範解答はなく、仮の解答と生徒たちの答案を参照しながら時間をかけて採点していきます。いわば「生徒と共同で」する作業なのです。
この間のギャップを埋めることが難しかったということでしょう。
大学入試を控えている生徒だけでなく、小学生もふくめた、採点というものをされる生徒、採点者、教師、保護者にとって、採点がどのようにされているのか、採点が何のためにされるのかということを見直す機会でもあったと言えます。
国際学力調査PISA(※1)の結果で、日本は数学6位、科学5位(※2)に対して、読解力が8位から15位に落ちたことが新聞などを賑わせています。
PISAは「誤差の範囲でなく、理由のある低下」と分析しており、国内では、読書離れや、スマホへの依存、いやコンピューターの操作に慣れていなかった(PISAの設問が紙からコンピュータ上で操作するようになった)せい、などと原因を探る声が上がっています。おそらくそれらを含め、「複合的な原因(文科省)」があるのでしょう。
しかし、それよりも根本的な問題は、教育機関で読解力を教えていないことです。学校でも塾でも文章に対する教師の解釈を生徒が書き写します。学校ではそれが定期テストに出され、塾では、それとは関係のない文章がテストに出ます(※3)。読解力がつく要素があるようには見えません。
最近、最も驚いたのは、誰でも知っている超難関校の授業です。そこは定期テストがあり、テストはリード文空欄補充形式(※4)です。授業では、テスト問題を黒板に書き写し、その答えを教えていました。生徒は問題と答えを書き写せば、後は答えを覚えるだけで定期テストに合格します。読解力がつくとは思えません。ここから日本のエリートが育つとしたら空恐ろしくもなります。
読解力をつけるために、どのような授業が望ましいのか、文科省、教育機関が熟慮するべき問題です。
※1 https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html
※2 数学は5位から6位、科学は2位から5位。いずれも2015年から2018年。
※3 同じ文章がテストに出る塾もありますが、それは教師の解釈をなぞることになるので、学校と同じです。
※4 文章を短くまとめたリード文の一部を空白にして、そこを埋めさせる問題。
「遊びたいけれど、先に勉強を終わらせてからにしよう」「○○くんに負けたくない」「勉強ができないと恥ずかしい」「××さんよりも自分の方ができる」などというモチベーションが、取り入れ的調整(図の赤枠部分)です。
そこからさらに自律的になったモチベーションが、同一視的調整(identified regulasion・図の黄枠部分)です。
「個人的重要性」は、「勉強は自分にとって大切なことだから」「勉強することは自分のためになるから」と考えることです。
「価値の承認」は、「勉強は自分の将来を左右するから」というように、勉強の実用性を自覚していることです。
この段階は、勉強そのものに充実感を感じている(図の青枠部分)わけではありませんが、かなり自律的になっているといえます。
※ どうしたらやる気がでるか その1(11/27), どうしたらやる気がでるか その2(11/29),どうしたらやる気がでるか その3(12/01)参照
生徒が持っている、勉強とはこんなものだというイメージや考えを「信念(belief)」と言います。その中でも、「単純性・確実性」という「信念」があります。
例えば、「たった一つの正しい答えが存在する」「ある分野の専門家は、その分野にについては同じ考えを持っている」というイメージです。
このような「信念」を持っている生徒は、次のことを、あまり「しない」という研究があります(Muis & Franco,2000)。
① 問題を整理してわかりやすくする。
② 自分のやり方を見直す。
③ 反復練習をする。
また、自分の能力を高めようとするよりも、今の能力を他人によく見せようとする傾向があります(同上)。
ある生徒が、「国語では、たった一つの正しい答えが存在する」「国語の先生たちは、国語については同じ考えを持っている」という「単純性・確実性」の信念を持っているとしましょう。その生徒は、例えば、なぜ間違ったかをあまり考えなかったり、記述問題の解答例を書き写したりするでしょう。上記の問題点(特に②の問題点)が現れてくるのです
信念は強固で変化しにくいものです。国語の力をつけるためには、指導者の方が、生徒が「単純性・確実性」の信念を持ちすぎていないかに敏感になる必要があります。
2019/12/01 どうしたらやる気がでるか その3(※)
「ほうび(ほめことば、お金、品物など)」や「罰(お小遣い減額、何かを買ってあげない、しかる、など)」、あるいは「皆がやっているから自分もする、なんとなくしなければならないもの」という理由で勉強をするのが、図の赤枠部分(外的調整)です。
それより一歩進んだ自律的なモチベーションが図の黄枠部分(取り入れ的調整,introjected regulation)です。
「セルフコントロール」は、例えば「遊びたいけど、先に勉強を終わらせてからにしよう」と考えて行動できるということです。そのようにできることは大切だということを子どもに話してあげるといいでしょう。もちろん範を示すことも大切です。
「自我関与」は、「○○くんに負けたくない」のように、だれかとくらべて自分のよさを示すために勉強することや、「勉強ができないと恥ずかしい」という、恥の感覚を避けようして勉強することです。
「随伴的自尊心」も、「××よりも自分の方ができる」というように、外からの基準によって自己自身の価値を認めることです。
この段階のモチベーションは、前の段階(外的調整)と比べて、外的な基準に依存しているものの、自分自身の価値を自覚し始めるのがいいところなので、前の段階から一歩進んだと言えるでしょう。もちろん勉強のおもしろさを感じてもらう(赤枠)のが一番ではありますが、途中の経過としてはあり得ていいと思います。
※ どうしたらやる気がでるか その1(11/27), どうしたらやる気がでるか その2(11/29)参照
図のように年表を作ります。一時代に一枚、縦に項目(政治、文化など)。一枚で一つの時代がすべてわかり、項目ごとに横に見ると、歴史の流れがわかります。6年生なら、入試問題をやって、知らなかったことだけを書き込んでもいいですね。私の場合は、模造紙に書いてもらって家に張ってもらいます。
縦と横のつながりがわかりやすくなり(体制化)、入試の応用問題にも対応できます。買うのでなく、自分で作ることが大切です(自己生成効果)。
理想的には勉強そのものにおもしろさを感じてくれるといいのですが、そこに至るまでにはいくつかの段階があります。
まったくやる気のない子が、勉強の楽しさに目覚めてくれることもありますし、そのようなことを促進する環境を作るべきです。しかし、学校などですでに勉強が進み始めていると、やる気が理想的に出るのをなかなか待っていられないのも事実です。
そこで、少しずつ段階をへてモチベーションを上げていくことが考えられます。そのためには今、どのようなモチベーションを持っているかを知ることです。そうすれば、次にどうすればいいかが考えやすくなります。
図(※)は、モチベーションの各段階を示したものです(Ryan & Deci,2017)。左がまったくやる気のない場合、右が勉強そのものにおもしろさを感じている場合です。その間に4段階があります。子どもが今、どの段階にいるのかを知ることが大切です。
例えば、「やらないとしかられるから勉強している」のであれば、『罰の回避』に当たりますから、左から2番目の外的調整のレベルであることがわかります。
以後、各段階についてもう少し解説します。
※ 『新・動機付けの最前線』上淵寿・大芦治 p54。
おもしろくない知識を覚えることに対しては、お金が効果的であるという研究があります(Murayama & Kubandner,2011)。例えば漢字を覚えるのがおもしろくないケースは多いですね。こういうときに効果がある可能性があります。
気を付ける点は、お金がもらえると思うと、もらえないときはしなくなることです(※)。
本人にとって課題がおもしろく感じられるように、周囲が工夫することが先決ですね。
※ アンダーマイニング効果(Deci,1971)
「最近がんばってるね」「この問題は難しいのに、よくここまでやったね」「とても成長しているよ」などと、努力を認める言葉がけがよいとされています。自分はやればできるという「有能感(competence」を高めるからです。
「自律性(autonomy)」が傷つけられたと感じてしまい、かえってやる気をなくします。自律性とは、自分の行動を自分で行動している感覚のことで、人間にとって大切な要素と考えられています(※)。誰でも、人に言われてやっていると感じるのは面白くないですね。
※ 自己決定理論(Deci)より。
上図のは、ある学習塾の3年生用問題と灘中の問題です。黄色(と赤)の部分はそれぞれくりかえされる表現ですが、問題になっています※。くりかえされる表現は、作成者はつい問題にしたくなるのです。
保護者が指摘しておいてあげるといいでしょう。
※ 3年用問題…黄色いの部分は「おちゃめ」、赤は「きょうのあたしのようす、どう?」。 灘中問題…黄色いの部分は「いつものとおり」
「あなたは才能型ですか。それとも努力型ですか」とインタビューされていました(※)。藤井7段は「環境を与えてもらえた」と答え、「周りの方応援していただいたりして、その部分が非常に恵まれていたのが大きかったのかな」と言っています。これには驚きました。
この質問は「能力」についての質問です。ところで、「能力」を個人のものと考える今までの研究に対して、環境との相互関係の上で成立すると考えるのは、最近の心理学の流れなのです。藤井7段の発言は、まさにこの流れに合致しています。このようなことを自覚されているのは、改めてすごい人だなと思いました。
子どもの能力は、環境との相互関係で育ちます。このことはあまり注目されてきませんでした。環境にあたる学校や塾、保護者のはたらきかけによってこどもは成長します。環境の改善を忘れたまま「この子は能力がない(ある)」と決めつけてしまうのでなく、いかに環境をよくしていくかと自問自答することは、教育機関や家庭にとって、これからの大きな課題なのです。
※ トッププレイヤー6人へのインタビューhttps://news.livedoor.com/article/detail/17128730/
対句と言っても詩にでてくるだけではありません。人はペアの言葉が好きです。「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」のようなフレーズはいたるところに見られます。また、文章中にそういうフレーズを見ると、作成者はつい問題にしたくなるのですね。
下図が一つの例です。「昨日までできなかったことが今日にはできるようになる」と、「昨日までできたことが今日にはできなくなる」というペアの表現になっています(答えはア)。このような表現はいたるところに見られるのではないでしょうか。
したがって、保護者の方は、文章中に対句的な表現があるとき、指摘してあげたり、ペアの表現を見つけたりするように言ってあげたりするといいでしょう。
問題としてよく出るので実戦的にも役立ちますし、「二項対立(※)」という文章構造の読み取りにもつながり、読解力のアップにも役立ちます。この文章も「若」と「老」というテーマの読み取りにつながっていますね。
※ 勉強法―今日のつぶやき―back number3,2019/01/27をご参照ください。
勉強する気になるように、自分自身を変えていく方略のリストです。
勉強の内容がおもしろくなるように工夫する。
勉強内容で面白そうな部分をさがしてみる。
身近な話題におきかえて考えてみる。
自分の興味があることと関連させる。
絵や図などを入れて、ノートの書き方を工夫する。
興味がある分野の勉強を間にはさむ。
がんばって勉強している人を見る。
勉強の内容が将来の役に立つと考える。
成績をよくするためだと考える。
早く勉強をおわらせてしまったほうが楽だと考える。
勉強が終わった後のことを考える。
勉強をやりとげた時の達成感を考える。
勉強をやりとげた自分を想像する。
自分の好きな場所で勉強する。
部屋を勉強に集中できる場所にする。
勉強の合間に気分転換する。
わからない部分を先生や友達などに聞いて勉強内容を理解する。
今やっている勉強は簡単だと考える。
今の勉強よりも将来はもっと大変なことがあると自分に言い聞かせる。
この勉強は自分に必要なことだと言い聞かせる。
(橋本・田中,2012)
確かにしつけなどの最低限のことを教える必要はあります。ところが、子どもはかわいいもの。もっともっと何とかしてあげたいと思うあまり、この最低限のラインを知らない間に引き上げてしまい、型にはめこんでしまいそうになるという落とし穴があります。そのためにかえって成長を阻害する危険性が常にあることをアリス・ミラーは「警告しています(FOR YOUR OWN GOOD,Allice Miller,1980)
このタイトルでは、そうした落とし穴の具体例を分析していきます。
「晴」・「清」は、ともにセイと読みます。部首以外の「青」を読んでいるのです(「晴」の部首は「日(ひへん)」、「清」の部首は「?(さんずいへん)」)。
漢字の7割以上はこうして読めます。
「魅(力)」は小学生が習わない字ですが、部首は「鬼」。残った「未」を「み」と読みます。
「険」「験」「検」はすべて「ケン」。部首以外(右側)の読みが「ケン」です。
例はいっぱい挙げられます。
読みに困ったときには部首以外を読んでみましょう。
塾などで、記述問題は指定字数の8割は書きなさいと指導されることがあります。模範解答に近い解答を書かせるためです。
この指導にはいろいろと問題点があります。
一つ目の問題点。子どもがよい解答をつくろうと努力するかというと、そうではない。むしろ、どうでもいいことばを付け足したり(※1)、漢字で書くところをひらがなで書いたりします。悪文を身につけますね。
二つ目の問題点。8割なくても入試では採点する。塾でもたいていのところは8割なくても採点します(※2)。
三つ目の問題点。模範解答が間違っていることが多々で、子どもを混乱させる。「間違い模範回答集」という本が作れます。を作ることが可能です。新聞に載せられる入試問題の解答が、新聞によって(解答制作を任された塾によって)バラバラというのは日常的な光景です。いったいどれが正しいんだ? という疑問がわきますが、このことからも、一つの模範解答に集約することの難しさがわかります。
そもそもきちんと採点する学校は、「模範解答」を作りません。「仮の解答」を作ります。生徒の解答を見ながら「仮の解答」を修正し、最終的に統一的な採点基準をつくるのです。なぜなら、問題と解答の制作者が思いつかなかった正答を出してくる、ある意味で「制作者以上の」生徒が必ずいるからです。
長くなりましたので、後は次回に回します。
※1 「こと」ですむところを「ということ」と書いたり、書かなくてもいい主語を書いたり、「とても」を付け足したり、と様々な子どもたちの「必殺技」があります。
※2 8割無いと採点しない塾も、一部にはあります。
問題制作者としては、どうしても出したくなる問題です。
下の左は西京中学の問題。黄色マーカー部分の「防空壕の相手をする」とはどういう意味かを尋ねています。
答えは「クライミングウォールをてっぺんまで登る」
(戦後、防空壕の後にクライミング施設ができていると文中に書かれています)。
これが最もオーソドックスな問題です。
下の右が少しひねって灘中学の問題。Xの部分に入る語を選ばせます(「人間・物・死体・私・姿」から選ぶ)。
答えは「物」
人間を物のようにあつかっていることが、文章を読めばわかります。
比ゆは日常生活にあふれています(ちなみに、「慣用句」もすべて比ゆですね。
普段から比ゆを見かけたら、どういうことなのかをお話ししてあげるようにしておくと、この種の問題に強くなります。
いちごという言葉は、「い」と「ち」と「ご」の三つの音からできていて、一番初めの音は「い」で、最後の音が「ご」です。
当たり前のようですが、大人にとって当たり前なだけで、幼児には当たり前ではありません。4歳半だと、これがわかるのは50%ぐらいだという報告もあります。
幼児が言葉を音(音節)に分け、その一番初めの音を取り出すことができるようになるまでは、どんなに教えようとしても文字の読みを学べないことがわかっています(天野,1970)。
したがって、ひらがなを教える時期は、「いちごのはじめ(の音)は何?」という質問に答えられるようになったとき、と言えるでしょう。
塾業界では、「五者」と言う言葉があります。塾教師は、「学者、医者、役者、易者、芸者」の要素を持つ必要があるということです。「学者」は知識を持っていることでしょう。「易者」は未来の展望を描いてあげること、「役者」や「芸者」は、生徒を惹きつけ、楽しませる要素。うまくいったものですね。
「医者」とはどういうことでしょう? 「精神面や肉体面のフォロー」、「一人一人の状況に合った指導」「問題点を見つけて処方箋を引くこと」などとも言われます。
前回(2019/11/09)、「医者は、① 「診断」 → ② 「治療」 → ③ 「経過観察」の順で患者に接するが、学習も同じ(Kail,1990)」とつぶやきましたが、これは指導者にも言えることだと思います。
①の「診断」に当たるのは、`estimation(前もって課題や難易度を評価すること)`でしょう。生徒の状況と、課題・単元の難易度・重要度を把握し、どのような方略を用いるかを決めます。
②の「治療に当たるのは」、「授業」です。①の方略に基づいて授業を行います。
③の「経過観察」にあたるのが「振り返り」。②で用いた方略がどの程度効果的だったかをチェック、それに基づいて方略の修正・調整を行います。
授業準備と授業は、教師が普通に行いますから、①と②は(程度の差はあるとしても)できているとして、③を行っている教師はまれです。③を行っている教師ほど、授業内容がとぎすまされてきます。
したがって、よい教師とは、「授業の後に③の振り返りをしている教師」です。「その日の授業日記なんか付けられるんですか?」
などとさりげなく聞いてみるのもいいかもしれません。
お医者さんは、
① 「診断」 → ② 「治療」 → ③ 「経過観察」 という順で患者に接します。学習も同じです。
①の「診断」に当たるのは、学習では「見積もり」になります。学習内容の難易度、重要度を判断し、どのような方略を用いるかを決めることです。たとえば、「先に難しい宿題を終わらせて、ご飯をたべた後で、簡単な計算の宿題をやろう」とか、「テストでは、先に簡単な漢字の問題から手をつけよう」「簡単な問題だから、筆算でなく暗算でやろう」などというのが、この「見積もり」にあたります。
②の「治療」に当たるのは、「実行」です。①で見積もった方略によって、実際に学習を行います。
③の「経過観察」に当たるのは「モニタリング」です。②で行っている方略によって、どの程度学習が進んでいるかをチェックして、場合によっては方略を修正、微調整、変更します。
①~③がそろって初めて学習が効果的になります。子どもはメタ認知がまだ十分に発達していないので、①と③、特に③が苦手です。場合によっては、方略なしにひたすら②を行っている場合もあります(ひたすら問題を解く、など)。この当たりは指導者、保護者が、子どもが①~③をできるように援助してあげられるところです。
オカルトじみて聞こえます。が、覚えたときの物理的環境(この場合は、見ていたもの)を想像することで、思い出しやすくなるのです(※)。日常生活でも、忘れ物をしたときに、その場面を想像することで思い出す場合がありますね。その効果を利用しています。
よく「登場人物の気持ちになってごらん」と言って教えている大人を見かけますが、子どもにとっては抽象的で難しいことです。具体的に「登場人物が見ているものを想像」してもらうという方が、こどもにはやりやすいという面もあります。
「何が見える?」
「友達のエミちゃん」
「エミちゃんは、どんな顔してる?」
「泣きそう」
??
などと、少しずつ見えているものを想像させ、お話ししながらやってみるのも、苦手な子にとってはよい方法です。
※ 文脈依存効果(Smith,1979,1984)